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位置情報に基づき、ユーザーの現在地と周辺を走る空車のタクシー(ドライバー向けのタクシル「タクシルドライバー」を入れている)が画面に表示される。ユーザーは、付近のタクシーの料金やドライバーの評価・評判をスマホで比較し、自分の好みのタクシーを選んで呼ぶことが出来る。タクシルを使っているタクシーがいない場合も、配車可能な近隣のタクシー会社が表示され、この場合は配車センターに電話が繋がる。
タクシーに直接連絡する場合は、タクシルのアプリ内でやり取りが可能となる。ユーザーがドライバーへの乗車依頼ボタンを押すと、ドライバーのアプリに「依頼がきました!」と表示され、依頼を受けるボタンをドライバーが押すことで取引が成立。ユーザーアプリ側では「今から迎えにいきます」となる。その際にドライバーは空車ではなくOFF(一覧表示から消える)の状態になる。
ドライバーは客を降ろしたあと、完了ボタンを押すと再びON(空車として一覧表示に出てくる)になる。「タクシル」はこの完了ボタンを押された回数×90円でドライバーに課金される。一方、ユーザーは乗車後にはドライバーの評価や、お気に入りドライバーへの登録が出来るようになる。
「タクシル」WEB サイト http://taxil.jp
タクシルが面白い、あるいはチャレンジングだと思った理由を書くと、
◎タクシードライバーは、会社員であっても、個人性の高い職業
タクシードライバーにとって乗客は常に一見の客であり、評価システムによって乗客に愛されるドライバーになれば、リピーター客を獲得することが可能になる。タクシーなんてどこにいるか分からないと思いがちだが、実は会社ごとに、客の乗降可能エリアが決まっているそうで、基本的に一定のエリアを流していたり、タクシースタンドに並んでいる。
何人かお気に入りのドライバーを作っておけば、タクシーが安心して道を委ねられるハイヤーになる。一方、タクシードライバーにとって、流しの時間ほど勿体ないものはない。ご指名を受けることで、空き時間の節約が図れる。
タクシーを利用した後に乗客の印象に残るのは、タクシー会社名よりも、少しの時間を共にした名も知れぬドライバーさんのこと(接客や運転技術など)だ。他の業種よりも、そもそも「個人」の評価が問われる世界であり、ソーシャルメディアを使った評価システムと親和性が高い。また、タクシードライバーの雇用・勤務形態は、会社員であっても歩合給部分も大きく、その点でもインセンティブを促せる。
◎二段階方式でサービスの過疎化を防ぐ
「タクシル」に限らずソーシャル系と言われるサービスに共通の課題は、導入へのハードルだ。タクシードライバーは、必ずしもスマホを積極的に利用している層とは思えない。利用者がいない、サービスの真価が発揮できない、、、の負のスパイラルに陥る恐れがある。だが当面は、タクシードライバーと直接繋がる機能より、タクシー会社の価格比較として使えることで、それを回避している。
◎タクシー無線のデジタル化移行の間隙を突ける
タクシー無線は、2016年5月31日までに現行のアナログ通信方式からデジタル方式へ完全移行する。アナログ通信方式は周波数帯を大きく割いているため、とかくIT業界からは「既得権益」として批判されてきた。(デジタル化されることで、より狭い周波数帯で無線通信を行うことが可能になり、他のサービスに開放できるようになる。)
タクシー会社にとってデジタル方式への移行コストは、決して安くない。しかし、配車さえ出来れば、アナログ・デジタル問わずタクシー無線は必須ではない。中小のタクシー会社・ドライバーにとって代替手段になりうるかもしれない。
湯川さんの記事(http://techwave.jp/archives/51761253.html)で有望な領域の一つとしてBtoBが上げられているけど、位置情報の使い方にしても、ロケーション&インタレスト&ソーシャルで繋がっちゃおう!ではなく(それはインタラクティブアートとしては面白いが、ビジネス足り得ないのでは?)、タクシルは、ベタなところで、他人のビジネスの課題解決の手助けになる設計をしている。有限会社クリーム代表の小林さんによると、何社ものタクシー会社にしっかりヒアリングした上でのリリースだそう。こういうサービスがもっと増えてもいいと思う。
写真家、広義の編集者。TechWave副編集長
その髪型から「オカッパ」と呼ばれています。
技術やビジネスよりも人に興味があります。サービスやプロダクトを作った人は、その動機や思いを聞かせて下さい。取材時は結構しっかりと写真を撮ります。
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