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西村真里子
世界最大級のカンファレンス【CES 2013 @ラスベガス 2013年1月8日~1月11日】はSONYやパナソニックなどの大手ハードウェアメーカーが最新テクノロジーを活用した製品を発表する場として有名ですが、今年はセカンドスクリーン、ダブルスクリーン、ソーシャルテレビをキーワードにテレビとスマートフォン、タブレットなど家庭内で消費者が利用するデバイスの多様化による生活スタイルの変化に伴うコンテンツ、広告ビジネスの変化についてもCES会場内で併設されたカンファレンスで複数セッションが展開されました。
2nd Screen Summit については前回の記事で紹介しましたので、今回はCES会期中に行われたセッションで新しい広告のあり方、コンテンツのあり方を学ぶ5セッションに参加してまいりました。そのハイライトをお伝えします。
ビッグチャンスはオンラインビデオにあり
スマートフォン、タブレットなどテレビ以外のデバイスでコンテンツを消費する事が増えている中、コンテンツプロバイダーとデバイスメーカーはどのようなプラットフォームを提供すれば消費者がコンテンツにリーチしやすくなるのか考えなくてはならなくなってきております。「コンテンツをいつでも・どこでも楽しむ時代に備えて(原題:Anytime, Anywhere Content)」というセッションでは、デバイスメーカーとしてROKU、コンテンツプロバイダーとしてHALOをリリースしたMachinimaのCEO、それに役者でありプロデューサーでもあるBrian Robbins氏(ナイトライダーやグラディエーターに出演、Fred: The Movieなどをプロデュース) をパネラーに迎え、ロサンゼルスタイムズの編集長をモデレーターに進められました。
このセッションではコンテンツプロバイダー側の映画/テレビプロデューサーのRobbins氏がオンラインビデオが熱い事について徹底して紹介していたのがとても印象に残りました。特にティーンエイジャーのYouTube、xBox、スマートフォンでのビデオの消費が増えているので、その領域にフォーカスしていくと今後数十年のビジネスにも繋がるのではないかと興奮気味に述べていました。オンラインビデオ視聴の拡大、すなわち人が集まるようになると広告ビジネスとしても魅力的な場になります。そのような将来を見据えてRobbins氏はある広告実験を試みたそうです。
Robinは、本編映像と同じタレントを広告にも起用し、広告も本編の一部と思わせる手法を企画しました。オンラインビデオならではの少人数制作チームで迅速に動く「リーンスタートアップ」的アプローチで本編、広告ともに制作するのです。
オンラインビデオでは視聴者データも取得できます。そこでコンテンツ、広告ともに作ってはデータを検証し、さらに微調整する。このトライ&エラーで製作、検証をくり返し、ターゲット視聴者に向けたコンテンツ、広告に仕上げていくというやり方です。この方法ならコンテンツを作ってオンラインにアップしてから初動のデータを検証したのちに、コンテンツにあったクライアントを見つけ、さらにコンテンツ、広告に磨きをかけるということも可能です。既存の「パッケージング ブランディング広告」よりも、視聴者、広告クライアントの双方に喜ばれるコンテンツ、広告が出来上がります。これなら例えばYouTubeである映像を見ようとしてワクワクしてクリックしても、本編と関係ない広告が本編前に流れるとなんだか興ざめしてしまう、といったようなことがなくなるでしょう。
もちろんテレビ局や映画など、体力とバジェットが大きい領域で、こうしたトライ&エラーの「リーンスタートアップ」手法が採用されることはしばらくはないと思います。当面は小回りの効くオンラインビデオ領域のみでしょう。でも今後こうした手法がいろいろな領域に適用されれていけど、ちょっとおもしろいことになるんだろうな、とワクワクします。
オンラインビデオは、ビデオそのものがコンテンツでもありながら、かつ広告にもなりえます。オンラインターゲティング広告と呼ばれるタイプのコンテンツです。わたしの所属するバスキュールでも、スマートフォンに風船をつけ宇宙にまで飛ばすというコンテンツを作り好評を得ました(http://archive.bascule.co.jp/archive/2011/space_balloon_project/01/index.html)。同様の成功事例として、今回のCESでは人気飲料Red Bullが行ったRed Bull Stratos チャレンジ (http://www.redbullstratos.com) 「世界記録ジャンプ」が紹介されていました。
Red Bull Stratosは、科学者、エンジニア、医師などで構成されるチームで、人間の限界に挑戦するプロジェクトを次々と行なっています。紹介されたビデオは、チームメンバーがパラシュートをつけて世界一の高度からスカイダイビングに挑戦するという試みでした。成層圏からのジャンプの模様は、ビデオに記録され、FacebookやTwitterなどで大きな話題になったようです。Red Bull 自らコンテンツを作ってターゲティングし、それが広告になっているわけです。
企業自らターゲットユーザーが好むコンテンツを企画し、コンテンツでもあり広告でもあるような映像・コンテンツを作り上げる。よりコンテンツと広告がシームレスにつながるような企画が、今後ますますユーザーに受入れられていくのだろうなと感じました。
そこまで言う?「お茶の間でテレビを見るのは、20世紀型視聴」
「テレビ エコシステム:テレビプログラム、課金サービス、広告、マルチプラットフォーム配信、収益と戦略(The Television Ecosystem: Programming, Pay-Services, Advertising & Multi platform distribution – revenue & strategies)」というセッションは、テレビ局ブロードキャスター、メディアエージェンシー、ニールセンの幹部が参加するパネルディスカッションで、「テレビ 3.0の時代の到来」、「TV Everywhere(TVE) 」などといった刺激的なキーワードが頻繁に飛び出すセッションになりました。
視聴者の行動パターン、視聴スタイルが変わって来ています。視聴するプラットフォームに関しても、スマートフォン、タブレット、TVと多様化してきています。またその結果、視聴タイミングもタイムシフティング、VOD(ビデオ・オンデマンド)などといわれるように好きなときに好きな番組を見るというようになってきています。そんな中、ニールセンの幹部が今後の指標として紹介したのが「C3」という指標。リアルタイムに視聴している(ライブオーディエンス)瞬間だけではなく、番組放送後のプラス3日間までの視聴を考慮して視聴者動向データを取るべきという考え方のようです。
( C3に関してはテレビ朝日アメリカの方が書いた記事がわかりやすいので詳細はこちらを確認ください。 タイムシフト視聴が主流の時代に )
テレビは今でも大きな存在ですが、「ライブ」の価値は前よりも下がって来ていると、パネルは続きます。タイムシフティング/VODなどの視聴者動向を無視してはいけない。また家庭内で「テレビ」を視聴するデバイスも多く増えて来ているので「お茶の間視聴」というスタイルに縛られていてはいけない。カウチポテト的なお茶の間視聴スタイルは20世紀型である・・・。そんな刺激的な発言まで出てきて、かなりビックリしました。
日本でも同様のカンファレンスに参加する事が多いのですが、ここまで割り切って21世紀のデバイスおよびライフスタイルの多様化に関する発言が、テレビ局の方も参加するパネルディスカッションで飛び出すことがはなかなかお目にかかれないからです。(わたしの経験値が浅かったら申し訳ありません、でもびっくりしちゃったのです)
ただアメリカでも日本と同様、視聴者のデバイスの多様化によりどのような指標が今後のスタンダードになるのかはまだ議論の途中であり、「悪戦苦闘の最中」ということでした。
まだ業界が一致するような標準指標が固まっていないので、いまは視聴者の視聴スタイルにあわせたコンテンツ作りにフォーカスすることが大切だ、という意見もテレビ局側から出ていました。
今日の視聴者の視聴スタイルに合わせた成功事例としては彼らがあげていたのは、HBO GOです。HBO GOはアメリカのテレビ番組制作会社HBO(Home Box Office)が2010年にスタートさせた多様なデバイス向けコンテンツ配信サービス。同局のテレビ番組を、iOS機器、Android機器、xBox、GoogleTVなどで視聴可能にしたもので、HBO GOこそ21世紀型のTV視聴である、とパネラー達が言うのです。なぜならHBO GOはスタジオも自分たちで持ち、ネットワークやマルチプラットフォームを意識してコンテンツを作っているからだ、ということです。デバイスを意識してコンテンツを作るー。それが21世紀型の番組制作だと言うことのようです。
また、IDタグやウォーターマーク(コンテンツに埋め込まれた著作権などの情報)などのメタデータを入れたアプリやサービスなどで視聴データをトラッキングできれば、クライアントを巻込む際に役立つとテレビ局の幹部が述べていました。テレビCMとオンラインキャンペーンの効果を串刺しで確認できるオンライン指標のOCR(Online Campaign Ratings)も活用してより効果測定可能な広告、コンテンツがアメリカでは制作されていくのかな、と考えます。
かなりドラスティックに変革を遂げている現場に対し、テレビ局側のTurner Broadcasting SystemのJeremy Legg 氏は最後にこのように述べていました。
テレビ局は、新しいゲームのフィールドに投げ込まれたと認識している。テレビ局が投げ込まれたのは、いまでも24時間テレビを楽しみに見ている既存の視聴者を裏切らず、ブランドを守りながら、その中でマルチプラットフォームやGPS連動などのエマージングテクノロジーを活用していくというゲームだ。
ディストリビューターも単なるディストリビューターではなく、新しいビジネスに取り組んでいる。なのでわれわれも、今後は今までと違う座組で動かなくてはならない。新しい座組の中で、テレビ局としては頑張っていかなければならないのだと思う。
payTVの台頭の中で、payTVでどれだけ売上をあげられるかを確認する局も増えている。連続した番組の1回放送分だけに課金する、昔の番組に課金するなど、可能性はいろいろあるだろう。そして課金に応じる視聴者によりロイヤリティを感じてもらうために、視聴者の視聴傾向を測定するという考え方も必要になるだろう。
このような積極的なテレビ局が、今後どのような娯楽の価値を提供し、それにそったビジネスモデルを構築してくるのか。大いに期待したいと思います。
テレビ番組の長さは7分が最適 広告手法編み出せるかがカギ
「ボーダー無きブロードキャスターの世界へ(原題:Broadcasting without Borders: Players in the New Guard of Broadcasting, Branding and Content Networks)」というセッションでは、オンラインで提供するコンテンツはどのようなモノが効果的かいう、コンテンツ寄りのディスカッションが多く取り交わされました。かなりオンライン放映、二次放映を意識した制作側の意見が出て来たのがとても新鮮でした。
制作プロダクションのBunim/Murray ProductionsのDaniel E. Tibbets氏によると、同社はオンラインでエピソードをリリースする際にはただ放映するだけではなく、クライアントの希望PV、アクセス数 KPIに達成するか否かも常にチェックをするんだそうです。それにストーリー内容も都度チューニングをしているそうです。なかなか先進的な取組みですよね。
ZazoomのSteve Bradbury氏によると、視聴データを解析するとテレビ放映エピソードをオンラインで流す際には7分間が最適なのだそうです。それ以上長いとユーザーが飽きて再生を止めてしまうのでしょう。なので、テレビ番組を作るときには7分間毎にオチを作るように気をつけているのだとか。
この7分間のエピソード中にブランドの広告をうまく挿入することができれば、とても儲かるビジネスになる、と同氏は言います。ただまだ誰もそれに成功していないので、「だれかアイディアない?」と会場に呼びかけていました。
ただ映画の世界にはスタートレックのように、多くのスポンサーを集め、プロモーションに巨額な資金を投入するようなコンテンツがありますが、オンラインビデオの世界にはまだそのようなコンテンツは出てきていません。オグリビーのBrandon Berger氏は、こうした前例のない状況では広告クライアントを動かしがたい、と指摘していました。卵と鶏の議論です。多くの視聴者を動員できないから、スポンサーがあまりつかない。スポンサーがあまりつかないので、プロモーションに力を入れることができず、視聴者を動員できない・・・。そこでセッションでは、プロモーションに関して議論が白熱しました。いかにオンラインビデオ、オンラインコンテンツに視聴者を動員するか。効果的なコンテンツへの導線をどう作るか。こうした問いへの答えが、オンラインビデオの今後の発展に不可欠なのでしょう。
一方で、視聴回数だけが重要指標なのかという議論もあります。米国の超人気司会者オペラ・ウィンスキー氏の番組は大成功していると言われています。ですが彼女の大ファンであっても週に2.1回しか彼女のサイトにアクセスしていません。一方でYouTubeなどで何回も繰り返し視聴されているコンテンツだからといって、視聴者がその中の登場人物のファンであるとは限りません。熱烈なファンを数多く持つことのほうがいいのか。単純に視聴回数が多いほうがいいのか。どのセッションでも語られている事ですが、どのような指標でオンラインビデオの市場を図るのか、この指標のスタンダード化も今後安定したビジネス供給のためには必要になるのだと思います。
ファンは有名人、ブランドとつながりたがっている それをどう支援するかがカギ
「ハリウッドとデジタル消費者:次世代エンターテイメント体験をテクノロジー、コンテンツ、サービスがどのように作るのか?(原題:Hollywood and the Digital Consumer: How Technology, Content and Services Establish the Next Level of Consumer Entertainment Experience)」というセッションでは、インタラクティブ性(双方向性)の重要性と、課金モデルについて議論が集中しました。SONY PICTURESなどの制作会社や、オンラインビデオポータル運営のBLIP社、有名人を利用したインフルエンサープログラム運営のEQAL社などの幹部がパネラーとして登壇しました。
スマートフォンが急速に普及したため、テレビを見ながらスマートフォンを操作する視聴者が急速に増えています。ですので業界側では、この新しい視聴行為にどう対処すべきかと頭をひねっています。「セカンドスクリーン」というバズワードがここにきて流行り始めたのはそのためです。しかしデジタルコンテンツを購入することが多い18歳~25歳迄の若年層の視聴行為はもっと多様だという指摘から、このセッションは始まりました。
若者は、お茶の間のテレビを見ながら「セカンドスクリーン」で購入するだけではありません。会社でも、映画館でも、空港でも、ありとあらゆる場所、状況でデジタルコンテンツを購入するのです。また彼らは、自分の好きなアーチストや、タレント、ブランド、番組に対しては、ソーシャルメディアを通じてパーソナルに繋がろうとします。パーソナルにインタラクティブにつながりたいと考えているのです。ですので、お茶の間でのスマートフォンからのデジタルコンテンツの購入という「セカンドスクリーン」視聴にこだわらず、視聴者がアーチスト、タレント、番組、ブランドとインタラクティブにつながることのできる仕組みを作ることが大事だという意見が出ました。そうした仕組みこそが、視聴者の満足度を向上させ、購買意欲を促進させるというのです。
わたしたちバスキュールでも、「デバイスじゃないよね」、「お茶の間だけじゃないよね」と常にそのような会話をしているので、「わが意を得たり」という感じでした。大事なのは、デバイスやフレームワークというより、コンテンツと視聴者/ターゲットをインタラクティブにどうつなげるか、なんですよね!
このセッションを聞いて、未来は明るいぞーと思いました。
そのインタラクティブにつなげる仕組みの例としてSONY PICTURESの幹部がMen in BlackやTotal Recallのアプリを紹介していました。まさに「触れる映画コンテンツ」。そのスケールの大きさに圧倒されてしまいました。映画Total RecallのiPadアプリを試してみてください。
https://itunes.apple.com/us/app/total-recall-movie-touch/id586636071?mt=8
そしてこうしたファンがパーソナルに、インタラクティブに仕組みを突き詰めていって、よりよいコンテンツ、プレミアムコンテンツになれば課金で十分な収益を上げることが可能なのではないか、という指摘もありました。
今まではテレビ番組は無料が当たり前として受け取っていた日本育ちの私ですが、確かにApple TVではコンテンツを購入して視聴してしまいます。今後は、地上波の番組でも自分が好きな番組があったら購入してでも視聴したいと思うようになる気がします。
このセッションの最後に、来年CES 2014 のコンテンツビジネスはどうなっている?という設問には
インタラクティブでストーリーテリングなオンラインコンテンツが多く出てくるだろう
ブロードキャスター(ニュース、スポーツ)がセカンドスクリーン・エコシステムの中に入ってくるだろう
ソーシャルエンゲージメントなコンテンツがどんどん出てくるだろう
など未来予測的なコメントが出ていました。
最後のソーシャルエンゲージメントなコンテンツがどのようなものか具体的には紹介されたなかったのですが、よりユーザーが参加して楽しくなるインタラクティブTVのようなものかと、とらえています。ここでプチ宣伝ですが、私の所属するバスキュールでも2013年はインタラクティブTV番組を提供予定なので、是非お楽しみに!
そして2014年にこの記事を読み直してどこまで実現できているか確認するのも楽しみです。
有名人も実はオンラインでファンとつながりたがっている!?
最後のセッションは、「有名人もブランドもバンドもエンターテイナーも巻込んでクロスプラットフォームコンテンツの成功を!(原題:Leveraging Content and Celebrity for Cross Platform Success: Brands, Bands and Entertainers Collaborate) 」というタイトルでした。会場に入るなり、ステージや会場内に華やかな女性達が現れて明らかに今迄と中味が違うぞ!という感じ満載。パネラーは、International Creative Management(iCM)のグローバル戦略ブランドマーケティング担当者や、音楽配信サービスのPandraの幹部、サンフランシスコ近郊で有名人相手にワインバーを経営している人たちでした。
モデレーターは開口一番、「テクノロジーはいままではサービスに使われていたけど、これからはエンターテイメントをより楽しくするために使って行こう!」。一気に当セッションへの期待が高まりました。そうです!せっかくテクノロジーが進化し、人々がデバイスを持ちみんなにリーチできる手段があるのであれば、より楽しい方向で使って行きたいですよね!
「インターネットで人々が繋がっているのであれば、より自分の好きなミュージシャンを応援できるような仕組みを作ろう!」。音楽配信のPandraでは若手ミュージシャンと視聴者を繋げる「By musicians for musicians」というプラットフォームを提供しているのだそうです。ミュージシャンは自分のファンがどこに住み、何をやっている人なのかなどのデータを確認できるほか、ファンと対話ができるようになっています。自分のターゲットオーディエンスを把握することにより、よりターゲットを意識した楽曲が作れるわけです。ミュージシャンのプロフェッショナリズムを育てるのに良い仕組みだな、と思いました。
Pandraプラットフォームにはスポンサーも参加できる仕組みになっています。セッション内で紹介された例では、自動車メーカーのJEEPがスポンサーになり、アーティストとファンを集めて200-300人規模のオフラインのライブを開催したそうです。パンドラは、自分の音楽の趣味趣向を追求するという「パーソナルな体験」を提供するツールです。そのパーソナルな体験の中で、アーティストとのパーソナルな結びつきが可能になるのです。ファンはうれしいですよね。そして、当然その行き着く先にはアーティストの楽曲購入などに結びつきますよね。
さてわたしのように実際にオンラインコンテンツビジネスに携わっていると、テレビや映画の有名人にYouTube向けの動画などに出演してもらうことは到底無理なんだろうなと思ってしまいがち。でもパネルでは「実はそんなこともないよ」という話が出ていました。セレブ側の意見としては、確かにテレビCMの出演料は高額なんだけど、テレビCMではファンと直接つながれない。一方で、短編ビデオを毎日撮りオンラインにアップすると、ファンとコミュニケーションが取れる。ブランド専属の有名人などは、ブランドの売上に貢献するために、ロイヤルカスタマーを作るにはソーシャルメディアでのユーザーとのコミュニケーションが必要と感じている、というのです。
とはいうものの、これは実際に有名人がパネルに登壇して語ったわけなく、有名人がそう語ってるよという伝聞に過ぎません。なので、私としては実際にハリウッドスターなんかにお会いして、どのように感じているのか聞いてみたいなと思いました。
でも複数のパネラーが、テレビや映画に頻繁に出ることも大事だが、ソーシャルメディアを通じたファンサービスも重要だ、と繰り返し強調していました。ですのでファンとの絆を深めるインボルブメント機能として、ソーシャルメディアやオンラインビデオが大切なんだという認識は、米国の業界関係者の間で広まっていることは間違いなさそうです。こういう認識が日本でも広まれば、日本の有名人でもYouTube動画に出演してくれるかも、と期待が持てそうです。
さてこのセッションでも、日本ではあまり聞いたことのない話題が出てきました。あまりにもびっくりしたのですが、まずはセッションで発言されたそのままを英語で書くと・・・。
The last discussion… talking about ad agency. Brands is now allocating more money for mobile, interactive contents, without agency function, directory working with mobile/social/creative production. Can agency maintain? or other function will take place?
ブランドやクライアントが賢くなり、直接モバイル、ソーシャル、クリエイティブプロダクションにお金を支払うようになっている世の中になりつつあるということなんです。
そして、より細分化したカタチで、クリエイティブはクリエイティブのプロに、メディアバイイングやソーシャルメディアプランニングはそれぞれそのプロに任せるようになってきているようです。ただ、これはブランド、クライアント側にかなり負担がかかるので、アメリカでも一部の話かもしれません。でもデバイスや視聴スタイル、購買スタイルの多様化と共にビジネス構造にも多様化がスタートしている事は会場にいるみんなが感じている事と共に、この記事に興味を持って下さっている方も感じている事だと思います。
今回参加したCES併設カンファレンス内でよく出てきた言葉は「Struggle(まだ模索中)」と「What is consumer’s benefit? (消費者にとってのメリットは?)」でした。つまり様々な立場の関係者が、セカンドスクリーン、ダブルスクリーン、ソーシャルテレビビジネスを模索中の中、解答を得る近道として「消費者が何を求めているのか?」を中心に考えて行こうという姿勢だと思います。我々も模索中なので、「What is consumer’s benefit? (消費者にとってのメリットは?)」を忘れずに進めていければいいな、と思いました。
以上長々とおつきあいありがとうございました♬
著者プロフィール:西村真里子
最高峰のクリエイティブ & コミュニケーション企画力を武器にソーシャル & スマートフォンのアプリケーションやサービスリリースにチャレンジする「バスキュール」の一員。
IBM、Adobe、Grouponを経て現職。テクノロジーと マーケティングとお酒に強い。
バスキュールの「大量の人数がリアルタイムに参加する(マス×インタラクティブ)新エンターテイメント」の代表事例:
TBS「大炎上生テレビ オレにも言わせろ!」(2012年9月28日)、フジテレビ「にっぽんのミンイ」(2012年10月15日~)、日本テレビ「JoinTVプロジェクト」、mixi Xmas「インタラクティブCM 小さなサンタクロース」( http://pieces.bascule.co.jp/2012/mixixmas/ja/cm/ ) があげられる。
バスキュール: http://www.bascule.co.jp/
ツイッターアカウントは@mariroom
まあまだ試行錯誤中という感じ。日本の最先端とそう違いはないなと思いました。バスキュールやサイバーエージェントなんかもベースになる考え方は同じだし、モバイルの使い方では日本のほうが進んでいるんじゃないかとも思った。それにアメリカといえども、テレビ業界はやはり後手に回っている。ウェブ業界では常識とでも言えそうな考え方を、ようやく実感するようになったって感じを受ける。
それと、テレビ業界の「セカンドスクリーン」も、製造業の「Makers革命」も、流通業の「O2O」も、キーワードこそ違え、目指している方向性はファンのコミュニティ化、活性化で、同じなんだなと思う。やはりインターネットは生産者と消費者を結びつけ、消費者を生産者に変えてしまう仕組みで、今は過渡期なんで試行錯誤が続くけれど、行き着く先ってもう決まっている。そんな思いを強くしました。(TechWave副編集長・湯川鶴章)