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マーケターに必要な二つの能力【ad:tech tokyoボードメンバーインタビューvol.1】

広告とテクノロジーの祭典「ad:tech tokyo」は今年で10周年を迎えます。2018年の10月4日5日に開催されるこの記念すべき今年のad:tech tokyoのアドバイザリーボードのメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんにad:tech tokyo事務局が連載形式でインタビューを行います(特集一覧はこちら)。


初回はエステー株式会社 執行役エグゼクティブ・クリエイティブディレクターの鹿毛康司氏が登場。今、業界に対して抱いていらっしゃる「期待」と「課題」についてお話を伺いました。

—2012年の初登壇以降、スピーカーやモデレーターのお立場、そして今回はアドバイザリーボードとしてad:tech tokyoに携わっていらっしゃいますが印象的なプログラムなどはありますか。

昨年の糸井重里さんとJR九州の唐池恒二さんの対談Keynoteかな。その中で糸井さんが言っていた「人間って何万年も変わっていないよね」という言葉がすごく腑に落ちたんです。人間は変わっているように見えるけれど、変化しているのは技術で、人の意識や感情さらには横たわる心は変わっていないと私は思っています。そして、その「心」を動かすことこそがビジネスでありマーケティングであるとも思っていました。

今のアドテクノロジーは人間の行動をダイレクトに分析できるようになってきました。ほんの一例ですが複数のクリエイティブを作ってABテストでどちらが良いかを評価することもできます。ほかにも行動履歴を分析することもできます。素晴らしい進歩であるとは思いますが、それは行動の分析であって「心」までは見えていない。だからそのことを認識するかどうかが重要だと思っています。

—それはマーケティングにおけるテクノロジーの限界ということでしょうか。

いえ、限界ということではありません。むしろ発展だと思います。問題はテクノロジーで分析した結果だけをもってして、分かった気になってしまうと危険な気がするわけです。この「分かった気」というのが非常に厄介で、「全てが解決する」と思考停止してしまうことが問題だと私は思っています。将来的にはある程度の心の分析もテクノロジーでできるとは思うのですが、やはり自分という「人間力」で思考することが必要です。

先ほどお話した糸井さんは「自分と会話する」という言葉を使われていましたが、まずは自分が「何万年も変わらない人の心をもった消費者」だということを前提にテクノロジーを使うことが重要なんじゃないかなあ。そうやって自分の心と会話して、その上で日進月歩のテクノロジーを使いこなす。そのふたつの能力がマーケターには問われていると思うんですよね。その上ではad:tech tokyoは、テクノロジーをどう乗りこなすのかのヒントだらけで素晴らしい場だと思います。一方で「技術さえ使えばなんでも解決する」と思考を停止した人はアドテックに触れても表面上の「これは使える、使えない」の判断で終わってしまいがちです。それはとってももったいない。そんなことをad:tech tokyoに参加した人の感想を聞いて思っていました。偉そうにすみません。

—エステーブランドはCMとネットコミュニケーションでしっかりと作られてきました。例えばCMづくりにおいてもご自身との会話をなさって生まれるのでしょうか。

そうですね。むしろ自分と会話しないとCMはつくれないかもしれません。「消臭力」「脱臭炭」「米唐番」だったりと、もちろん商品としての機能があってお客様は買っていただくのですが。それだけではない購入態度がそこには確実にありますね。それは単純に調査してもどうしたって出てこない。例えば米から虫を守る「米唐番」。機能は「唐辛子ゼリーでちょいと置くだけで防虫できる」ということなんですが、それだけじゃないお客様の心があります。野菜が腐ったら「もったいなかった」と思うけどお米に虫がついたら「申し訳ない」という感情が生まれるんですよね。これずっと続く日本人の心だと思うんですよ。それをCMづくりには味付けしました。というか、その上で歌詞と曲を自分でつくったんですけどね。そういう「当たり前だけど大切な心」って技術では発見できないでしょ?自分の心と会話して、さらには人と話して、その上で調査してマーケティング手法を利用して、そしてアドテック手法でコミュニケーションを設計して展開していくという流れになっていました。その結果、米唐番がお米防虫のシエア70%につながっていると思っています。

—鹿毛さんのクリエイティブにはそのような過程があったのですね。

人の心にどう触れるかがクリエイティブだと私は思うのです。一方でアドテクノロジーだけが全てを解決するという行き過ぎた論調があるのが気になります。私はアドテクに非常にポジティブです。テクノロジーでできることがどんどん産まれている。その両方を使いこなすことが重要だと思っています。そして、アドテク業界にそういう人がたくさんいます。元LINE現スタートトゥデイの田端さんなんかは、ご発言や活動内容を拝見するに、まさしくその両方を持っていらっしゃるようにお見受けします。オイシックスの奥谷さんなんかも、そういうタイプの方ですよね。そういう人がどんどん登壇するad:tech tokyoになればいいなあと、今年も期待しています。私も勉強します。

—2018年のad:tech tokyoはプログラムが公開されたばかりで登壇者の方の発表はまだ少し先になりますが刺激的な2日に作り上げていきます!ありがとうございました。

<プロフィール>
鹿毛康司
エステー株式会社
執行役 エグゼクティブ・クリエイティブディレクター
エステーCMの父、ミゲルの日本の父、自分の子供達の父。2004年に自社サイトで動画配信、2005年からコンテンツマーケティング、2006年から別名「高田鳥場」でツイッターを開始。クリエイティブとアドテックの融合をテーマに活動して今にいたる。コミュニケーション戦略/CMクリエイター/戦略PR//作詞作曲、時々CM監督 2014ad:tech tokyo セッション部門(モデレーター)1位、2015 同3位、2013WEBグランプリWeb人貢献賞、2013マーケターオブザイヤー、2012ACC GOLD賞

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