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いま広告に求めたいのは多様性【ad:tech tokyoボードメンバーインタビューvol.2】

広告とテクノロジーの祭典「ad:tech tokyo」は今年で10周年を迎えます。2018年の10月4日5日に開催されるこの記念すべき今年のad:tech tokyoのアドバイザリーボードのメンバーは総勢35名。業界のリーダーであるメンバーのみなさんにad:tech tokyo事務局が連載形式でインタビューを行います(特集一覧はこちら)。


今回は株式会社NTTドコモプロモーション部長石川貴浩氏が登場。膨大な量の顧客データを抱える通信キャリアのこれからのデータ活用についてお話を伺いました。

—通信キャリアである皆さんが取得可能なデータというのは行動履歴、購買履歴、位置情報までと幅広く、アドテクノロジーやマーケティングの世界からはとても注目度が高いと思うのですが、自社戦略としての活用というのは実際どのぐらい進めていらっしゃるのでしょうか。

実はまさに今年から来年がデータ活用へのチャレンジの年で、具体的なことを詰めている段階です。外部の方から見ると、「意外とゆっくりだな」と思うかもしれませんが、そこは私たちが通信会社であるということが大きく関係しています。いわゆるレガシー的な顧客情報、例えばご契約時にいただく氏名、生年月日のような情報は今までもありましたし、個人情報の取扱の許諾や匿名化の処置を施した上での活用をしていました。しかし、通信会社ですから、実際に端末同士でやりとりされている情報というのは通信の秘密を守らなければいけません。法的な制限もあるので、非常に慎重かつ丁寧に進めてきたという経緯があります。webからスタートしたサービスとはその点の発想の違いが大きくありますね。

—まさに進行中とはとても楽しみです。

データの活用が本格化していくからには各社には負けられません。リーディングカンパニーにしていきたいと同時にドコモのビジネスそのものも変わっていくのではないかと私は感じています。実際にdTVやdマガジンといった新しい事業も大きくなっていますし、「+d」というパートナー企業の皆様との取り組みで事業が広がっています。蓄積されていくデータはどんどん拡大していき、、、そのデータを活用することで、お客様をもっと理解した高度なプロモーションが実施できるのではと考えています。そうすることでお客様へ提供していくサービス自体も更に幅広く柔軟なものになっていくのではないでしょうか。

—事業の幅を広げていく中で、プロモーションの方向性としてはやはり強みのあるスマホシフトでしょうか。

そんなこともなくて個人的にはデジタル上での出目とでも言いましょうか、もっと新しいコミュニケーションの面というのがないのだろうかと感じています。いくらデータを活用して個人個人にフォーカスを絞った適切なアプローチをしたとしても、接触の場所がいつまでもお決まりのサイズのバナーでは、従来の追い掛け回すような「広告」と同じと捉えられてしまう。もっと多様性があってもいいんじゃないかなと。

またそこに出していくコンテンツとしても、見た人の購買を促していくような「広告」というジャンルに括られてしまうと限界が来てしまうので、自然と納得感を与えられるようなエンゲージメントを構築できるようなものを作成していきたいと考えています。

私はよく映画「マイノリティリポート」みたいな世界が早く実現されないかと楽しみにしているんです。街中のOOHがデジタルサイネージ化して、通行人にパーソナライズされたクリエイティブが出てくる。そして、それが車内広告や別のところとも連携して、目の前を通る人に話しかけてくれる……。きっと実現はもう間も無くですよね。昔のSF映画はもう未来の夢物語ではなく、今現在や数年後の世界の答え合わせができるものになっています。

—何か注目されている技術などがあるのでしょうか。

新しい可能性として出て来ているのはやはりAIです。今は入力のインターフェイスとしてスピーカーが多く使われていますね。音声認識もどんどん精度が高くなっていっているので、興味があります。また人とAIの間を繋ぐインターフェイスとしての役割にしろ、プロモーションの出目にしろ、様々なデバイスが今後登場し、マイノリティレポートのような世界が実現されていくのではないでしょうか。

—非常に前向きなお考えを持っていらっしゃるという印象ですが、課題感などはお持ちですか。

人材です。お客様の価値観が分散して、特に若年層の興味関心を追いかけるのが難しくなってきています。チャネルやクリエイティブの手法にこだわらず横断的にプロモーションを考えなければいけないなかで、マーケターを育てるためにはハードもソフトも改革が必要ではないでしょうか。急速な変化についていくからには、育成だってスピーディにやらねばなりません。その点については同じ悩みを持っている企業、業界全体で考えていきたいです。人の気持ちに寄り添うことを忘れずに、技術を進化させて活用するために学んでいきたいですね。

—ありがとうございました!


<プロフィール>
石川貴浩
株式会社NTTドコモプロモーション部長
1989年NTT入社、1994年NTTドコモに移り、本社ではプロダクト部、プロモーション部等を歴任。前職のマーケティング部戦略担当より2017年6月に現職。同社のプロモーション業務全般を統括。

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