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スタートアップ型で何かを成し遂げようとする人たちを、筆者自身の経験を含め、かれこれ30年以上、途切れること無く接し続けてきましたが、これほどまでリアリティがあふれるチームのストーリーを読んだのは初めてかもしれません。
「Airbnb」ー部屋の空きスペースにエアベッドをおいて宿泊させる民泊事業。2008年8月にスタート、今や世界3万4000都市にサービスを拡大、会社評価額3兆円という誰もがうらやむ急成長を遂げた彼らに何があったのでしょうか。日経BP社から出版された「Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法」には驚くべきさまざまな事件が綴られています。
日本のみならず急成長するスタートアップといえば、有名大学・有名企業出身・豊富な支援者・当人の恵まれた環境と才能に加え、大風呂敷のプレゼンテーションに企業経営のプロが参入して、大型の資金調達を成し遂げ成長する典型パターンが頭に浮かびますが、「Airbnb」の場合は、仕事に悩むデザイナー2人とエンジニア1人の思いつきから手作りで生んだサービスに過ぎませんでした。数日後に3人から予約が入った時、共同創業者兼CEOのブライアン・チェスキー氏は「誰かが泊まってくれるなんて思ってなかったようだ」といわれるほど拍子抜けな門出だったようです。
実際、このアイディアを投資家にプレゼンテーションしても酷評のオンパレードでした。(そもそもエンジェル(個人投資家)という言葉すら知らなかったというエピソードも)しかも事業モデルは、イベント開催時に不足する宿泊施設を穴埋めするものであるため、イベントがないと売り上げが立たない状態。ここぞとばかり大型イベント開催時に広告を打つものの1人しか顧客を獲得できない結果に陥ります。
そこで彼らはアメリカのスタートアップにありがちな、仲間でクレジットカードの与信枠ギリギリのお金を借りて事業運営資金に充てるのですが、すぐに借金返済に追われることに。そこで彼らが考えたのは大統領選挙戦にちなんだシリアルの販売でした。しかも、パッケージを入れ替えただけの代物です・・・。
この後、「Airbnb」創業チームは、少しずつ事業モデルを修正しながら、投資家へのアプローチを続けました。ほとんどの評価は「家に他人を泊まらせるなんて危険すぎる」というものでした。昨今の日本で起こっている評価と大差ありません。「Airbnb」は当然そういった懸念を起こらないようにサービス改善を進めるのですが、やはり事件は起こります。
「みんなが欲しがるものをつくろう」
始めに発生したのはサンフランシスコのホスト(部屋の提供者)からの訴えで部屋がひどく荒らされているというものでした。その後も、盗難や破損、騒音問題、契約と違う使われ方による迷惑行為、違法行為、人種差別などなど。こうした事件は、現在もしばしば目にします。
そうした問題を乗り越えどうやって「Airbnb」は成長することができたのでしょうか?
シリコンバレーの有名アクセラレーター「YCombinator(Yコンビネーター)」のポール・グレアム 氏は、「4ドルのシリアルの箱を入れ替えて40ドルで売り切った彼らなら、みんなを説得できるだろう」といったことを考え、「Airbnb」チームを起業家支援プログラムへの入学を認めたのです。
おそらくYコンビネーターへの入学が「Airbnb」を変えたのでしょう。Yコンビネーターのモットーである「みんなが欲しがるものをつくろう」が、のちの「Airbnb」のさまざまな困難を乗り越える際の指標になっていきました。
自分の理念で前に進む
「Airbnb」は、多様な部屋がホストされるのにあわせて、さまざまな個性のあるブログに取り上げてもらう戦略を取りました。それが少しずつ成果を出す中、彼らは現場に足を運ぶことで「エアーマット」を使う制限を無くした方がいいなどの気づきを得ることに成功。現在の戸建てまるごと貸し出しモデルが確立されていきました。
重要なのは、彼らが誰かのいうことを鵜呑みにしたり、真似事をしたのではないということです。
自分たちの理念を信じ、グロースハックやユーザー体験の改善、グローバル展開、さまざまな施策に彼ららしさがあったように思います。
創業者兼CEOのブライアン・チェスキー氏は本書のなかでこういいます。
「ビジョナリーなんかじゃない。普通の人間なんだ。ぐずぐず頭の中で想像をこねくり回してばかりじゃなかった。ローンチしたんだ」。
その後シリコンバレーの老舗ベンチャーキャピタル「セコイヤキャピタル」から58万5000ドルの出資を受け、企業としての本当の旅立ちが始まりました。
急成長の中で
急拡大を続ける「Airbnb」のその後については本書を読んでもらえればと思うのですが、社会現象となった「Airbnb」に襲いかかるさまざまな問題や課題を彼らが乗り越えていく様が本当にドラマティックです。
「Airbnb」は、住環境をシェアすることで、単なる部屋貸しではなく、個性の交流という一つのカルチャーをつくりました。工夫を凝らした手作りの施設と、それを楽しむ利用者。地域を越え、文化を越え、旅というものの魅力をより素晴らしいものへと変える一躍を担いました。
「Airbnb」の成長はとんとん拍子に進んだように見えますが、自分たちの文化を守り、「みんなが欲しがるものをつくろう」というモットーを頑なに守ることで、成長のうねりの中に身を置くことに成功したように感じます。
【関連URL】
・Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法 | Amazon.co.jp
https://www.amazon.co.jp/dp/4822255190/