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ASIA Hardware Battle 2019 日本予選結果、優勝者は10/25に深センへ

ASIA HARDWARE BATTLE

中国最大のテックメディアTechnodeが主催するハードウェアスタートアップのコンテストの「ASIA HARDWARE BATTLE 2019」の日本予選が本日(2019年9月11日)、東京都内で開催されました。優勝者は2019年10月に中国で開催される決勝舞台に出場する権利が得られます。

日本の開催パートナーはサムライ・インキュベート。代表の榊原健太郎氏は「日本はハードウェアで一時代を築いた。しかし、今、ハードウェアスタートアップが日本から生まれてきていない」と危機感を露わにしつつ、この取り組みで世界にチャレンジするスタートアップを増やしたいと話します。


ASIA HARDWARE BATTLEとは

「ASIA HARDWARE BATTLE」は中国有数のテックメディア「TechNode」が主催するハードウェアスタートアップのコンテストイベントで、中国はもちろん韓国・台湾・シンガポール・マレーシア・インドネシア・タイ・インド各地から400社以上が参加しています。年1回の開催で今回は4回目。

審査ポイントはイノベーション・課題認識・ビジネス性・持続性・技術的価値・デザイン性で、最終的に各国から選ばれた15チームが2019年10月25日に中国・深センで開催される決勝戦に挑みます。

優勝賞金は、50000元、2位は30000元、3位は10000元(1元=約15円)。これに加えさまざまなハードウェアスタートアップ向けの支援プログラムが提供されます。日本予選を勝ち抜いた企業はこの決勝戦への参加費用(宿泊交通費含む)に加え、Technodeが独占パートナーを結んでいるTechCrunch Shenzhen2019のブース出展チケットおよび参加チケットなどが提供されます。

ASIA HARDWARE BATTLE、日本予選の審査員

Dr. Gang lu
Founder & CEO at TechNode / Head of TechCrunch China

鎌田 富久
TomyK代表 / 株式会社ACCESS共同創業者

丸 幸弘
株式会社 リバネス 代表取締役CEO

中馬 和彦
KDDI株式会社 経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部 部長

ファーウェイ

岡島 康憲
岩淵技術商事株式会社 執行役員

榊原 健太郎
株式会社サムライインキュベート 創業者 代表取締役 共同経営パートナー

出場スタートアップ&レビュー

  1. 株式会社ASTINA
    洗濯・乾燥した衣類を本体の衣類カゴに入れるだけで、全自動で折りたたみ、分類して収納するタンス「INDONE」

    法人向けにエッジデバイス向けのソフトウェアモジュールを開発する会社。今回エントリーするのは消費者向けのプロダクトINDONE」。籠に衣類を投げ入れると、独自機構とロボットアームで自動で衣類を折りたたんで分類することができるというもの。スカートやセーターなど非対応の衣類もあるが、常用する多くの種類の洗濯物に対応する。現在はtoBとしてリネン工場などに導入将来的にはビルトイン家具として高級分譲マンションなどに展開する。

    蛇足)
    リネンなどの工業衣類のフロー効率化に自動化の手がなかなか届いていない。仮にあらゆる素材の布素材を画像認識&ロボットアームで拘束にコントロールできるようであれば、日本の工業衣類の優位性は大きく、toCのみならず大きなマーケットを狙える可能性がある。


  2. 株式会社PacPort
    荷物の非対面配達・集荷が可能、誤配送・なりすまし防止IoT宅配ソリューション

    2018年5月に創業。宅配便の再配達率16%を削減するスマートロックを使った宅配ソリューションを開発。IoT宅配ボックスと専用アプリを使い、送り状に記載されたQRコードを自動で読み込んで荷物のやり取りをする仕組み。宅配事業者の送り状番号を自動で読み込む仕組みもある。セキュリティを維持しつつラストマイルを効率化する仕組みも投入する。ボックスもサードパーティとの連携で作るため、デバイスメーカーというよりはソリューション・プラットフォーム提供の会社。

    蛇足)
    ECおよびフリマの普及により増え続ける宅配事業を効率化する要素もあるプロダクト。宅配事業などを巻き込むことで力を発揮する。明日からマクアケで小宅向けデバイスの提供を開始する。シェアハウス向けの実験も進めている。


  3. 株式会社クォンタムオペレーション
    心電図や血中酸素飽和度・血糖値なども測定可能なウェアラブルバンド

    高齢化に向けオンライン医療を推進するため光センサーと電極を組み合わせたウェアラブル型のバイタルデータ取得センサーを開発。第一弾で脈波を計測するデバイスを開発。現在は糖尿病予防のため、針を刺さなくても血糖値を常時連続測定可能な次世代のバイタルバンドを開発中。展開第一弾はバンドの販売、その後、ビッグデータ事業を計画。

    蛇足)
    近赤外線LEDを応用した技術。省電力で動く医療用ウェアラブルデバイスが実現するとしたらインパクトは大きい。当初は認可が難しい日本の医療分野を狙っているとのことだが、海外のほうが広がる可能性が高いようにも思う。


  4. N-Sports tracking Lab合同会社
    広域スポーツのリアルタイムデータ取得に使える「νSports trackingソリューション」

    ヨットや自転車レース、ランニング、スキーなど広域なフィールドで行われるスポーツにおいて、カメラでのハイshんおよびGPS搭載センシングデバイスで位置やデータを取得。観戦はもちろんコーチングとして支持を出すのにも使える。中継用はGPSと3G/4Gグローバル通信を搭載。トレーニング用にはそれに加え9軸センサーや関連機器接続のためのBLEを搭載。

    蛇足)
    データロガー型が主体となっていたスポーツ情報デバイスを通信型にするというもの。リアルタイムフィードバックができる点も特徴。欧米では短中距離競技でかなりシステム化されたものが導入されている。これは広域にフォーカスしているが、市場をどう作れるか。


  5. 株式会社ZMP
    ラストワンマイル問題解消を支援する宅配ロボット「キャリロデリ(CarriRo Deli)」と、高齢者等に安全に移動してもらえるパートナー「ロボカーウォーク」(Robocar Walk)

    宅配ロボット「キャリロデリ」は日本郵便、ローソンなどで実証実験。愛嬌をふるまったり対話をすることで公共空間を移動する。「ロボカーウォーク」はタブレットで簡単行き先指定して自動運転を行う小型モビリティ。公道での自動運転実験を多数行っているZMPの技術を小型モビリティに展開したもの。一回の充電で8時間走行可能。遠隔監視は必須と考え万が一にも対応する方策を用意している。

    蛇足)
    笑顔でアイコンタクトすることが人との共存になるかどうかは、ペッパーなどをみればなんとなく理解できるが、それよりも課題をどう解決するかの手法が重要なので、移動技術のその次のビジョンが知りたいと思った。


  6. HoloAsh, Inc.
    発達障害の方を対象とするホログラムのAI Friend「HoloAsh」

    ADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害の方に対するカウンセリングなどは高額であるなどの問題がある。そこでホログラムで投影される人工知能型ボットフレンドでガイダンス支援をする。認知科学に基づいた対話。ハードウェアは400ドルと月額9ドルのサブスクリプションでサービスを展開する。三か月運用して5000件のデータを収集済み。メンタルヘルスに特化したチームで挑む。50万ドルの資金調達にチャレンジ中。

    蛇足)
    課題感が大きいが、チャットボット専用デバイスでどこまで成立するか。はたまたスマートスピーカーやアプリではいけないのかという疑問。大学との実証実験などで検証中とのことだが、この大きな課題の解決にはさまざまな技必要になりそうに思う。


  7. AC Biode株式会社
    世界初の独立型交流電池「AC Biode」

    世界で初めて交流で動く電池を開発。モビリティや再生可能エネルギーの蓄電に向けて展開予定。現在普及している直流リチウムイオン電池に対し、交流ならではの強みー安全性の高さやライフサイクルの増加(2倍)や省容量化(30%を発揮するだけでなく、既存の電池としても適用可能。粒子加速器に使われる電気回路を使って(特許申請済み)大手も参入できないチャレンジとなっている。事業モデルはライセンス供与。すでにプロトタイプは完成しており、資金調達後(当初目標は2億5000万)、来年にもドローン向け供与やキックボードなどに展開(都度開発のための資金調達が必要)。ゆくゆくは自動車や航空機にも提供したい。海外のコンテストでも入賞。

    蛇足)
    長年変わらなかった電池やバッテリーの世界が変わる大きな発明といってもいいように思う。これがスタートアップから出てきて市場を席捲するとなると、社会が変わるようにも思う。


  8. 株式会社Xenoma
    計測スマートアパレル「e-skin」

    衣服にセンサーを搭載し人の動きやバイタルデータを取得する。東京大学の伸縮性のある回路を応用。多数のセンサーや機器を衣類に装着することで、さまざまなデータをとれる。すでにスマートテクスタイルでモーションキャプチャーシステムを開発済み。創業4年ながら、ベビーモニタリングで売上1億円超を達成。現在は高齢者向けに、心理的障壁を拭いながら使えるモニタリングデバイスとして「ルームウェア」を展開。在宅リハビリなどの応用も可能に。2020年春からアパレルメーカー向けにe-skinを展開していき、デバイス販売とビッグデータ提供に動きたい考え。

    蛇足)
    ZOZOスーツのような実験的なプロダクトばかりが注目されるが、スマートテクスタイルの技術はかなりの段階にきている。大切なのはその技術をどう応用するかという点。このプロジェクトも実験ツールだけではなく、一般に利用されるプロダクトにつながるかどうかが注目。


  9. 株式会社エスイーフォー
    VR空間を通じたロボット遠隔操作のソフトウェア/プラットフォーム

    遠隔ロボット制御プラットフォームを実現するための通信遅延の有無に影響されない仕組みとして、遠隔空間環境を仮想空間に再現して作業を実施、遠隔地にあるロボットはそこで必要な作業を認識して実行する。2030年の300兆円宇宙産業をはじめ、土木作業などさまざまな領域に適用可能。2019年12月末にシリーズA資金調達をクローズに向け展開中。

    蛇足)
    通信を限りなく使わないで遠隔操作をするためのプロダクト。現時点は作業を遠隔地で再現できるものという領域に限定されるが、物体やその作業を学習させることで作業はより効率よく進むようになる可能性がある。


  10. MAMORIO株式会社
    世界最小クラスの紛失防止IoTデバイス「MAMORIO」

    BLE(省電力ブルートゥース)を使った2.4gの紛失タグ。スマートフォンと連携して紛失時にアラートが鳴るだけでなく、ユーザーのアプリが他のユーザーの紛失アイテムを検知する仕組みやARで紛失個所を表示する機能がある。全国の700路線の遺失物センターにセンサーが設置されており、届けられた時点で通知される取り組みなどを行っている。法人向けも提供。他社製品への組み込みプロダクトも展開中。

    蛇足)
    ユーザーが増えれば増えるほどその利便性が増す画期的紛失防止ソリューション。Appleが紛失防止タグが発表されると予想されるが、価格差や先行者利益で優位に立つか。


  11. Mira Robotics株式会社
    遠隔操作パートナーロボット “ugo(ユーゴー)”

    人材不足が深刻なサービス業、特に清掃警備の人員が不足している。国内ビルメンテナンス市場は3兆90000億円。採用コストも増加している。そので場所にとらわれず働けるようになるアバターロボットを開発。自動化が難しかった領域の自動化を支援する。完全なるリアルタイム制御ではなく、さまざまな作業を学習したうえでVR遠隔操作でうまく作業を進める仕組み。

    蛇足)
    エスイーフォーの遠隔操作とはまた種類の違う発想。作業のプリセットと遠隔操作によって適用できる領域をカバーできる点が大きい。


(全リンク一覧は本サイト末尾蛇足に掲載)

優勝は?ASIA Hardware Battle 2019 日本予選

オーディエンス賞
エスイーフォー「VR空間を通じたロボット遠隔操作のソフトウェア/プラットフォーム」

イノーベーティブ賞
世界初の独立型交流電池「AC Biode」



優勝は
株式会社Xenoma
計測スマートアパレル「e-skin」

おめでとうございます!

【関連URL】
・[公式] ASIA Hardware Battle

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