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日本の会社に蔓延する「仕事のための仕事」を根本からなくす方法ー書籍「より良く働くためのワークマネジメント」 (著・田村元)が気付かせてくれたこと

今回紹介する書籍「より良く働くためのワークマネジメント 〜日本の会社に蔓延する「仕事のための仕事」を根本からなくす方法」 は、世界で最も信頼できる働き方マネジメントツールと評される「Asana」の日本法人の代表取締役ゼネラルマネージャーである田村元氏が執筆している。

コロナ禍の中でテレワークの導入が呼びかけられている。しかし日本のテレコミュニケーションのツールの選び方は独特で、なんとかリアルのワイガヤをオンラインで実現しようと、結果として“効率”がおざなりになることが多い。

この本は、そうした働き方やプロジェクトマネジメントにおける課題の核心を突き、より良く働けるようにするためのヒントで網羅されている。「日本の仕事」にとって多くの気づきを与える一冊といえるだろう。

「より良く働く」の意味を解く

日本には仕事において独特な文化がある。仔細に渡り徹底的にこだわることをよしとする一方で、前へ倣えと上司に従うばかりで、組織としての生産性や効率に欠くことに疑問を感じない傾向がある。いつの間にか群れ、いつの間にか曖昧なルールによって一方的に裁定がくだされる。

結果として、誰かに負担が集中したり、チーム内での不均衡が生まれやすくなる。業務効率化の前に、人が自分の脳力を最大限に発揮するための土壌が整っていないといってもいいのかもしれない。

そもそも、日本の労働生産性は、主要先進7カ国(G7)の中で約50年間にわたり最下位だ。日本における仕事の進め方は不透明で、各人およびチームの能力を最大限に発揮するための効率化が果たされていないように見える。

アウトプット(産出)/インプット(投入)=「労働生産性」

日本における“仕事”とは何だろうか?上司や投資家などの言うがままとなり、我慢したり“気合い”で乗り越えることを是とする空気に支配されてしまっているのではないだろうか。組織としての共通の目標を掲げ、各人が自律的に意義ある労働を創造し続けていないのではないか?

田村氏は本書のタイトルに使われている「より良く働く」という言葉をこのように定義し提唱している。

「より良く働く」というのは、自分も周りも成長することが前提の価値観

組織の中で独りよがりになって行動すれば、それが上司であろうと新入社員であっても自己満足に過ぎない。誰かが不利益を被ることになる。そう指摘する田村氏はこのようなことが職場で起こっていたら注意が必要だというう。

・自分の成果が正当に評価されていない
・自分ばかりに仕事の負荷がかかっている
・チームの目標に貢献している実感がない
・上司が自分を嫌っている
・仕事における問題解決の仕事ばかりしている

こうした不均衡をごまかし悪化させるのがチャットなどを使ったデジタルワイガヤであり、結局、これら“仕事をすすめるための調整”にかなりの時間を割いているのが日本における「仕事」といえる。こうした状況を知れば、誰だって「より良く働きたい」と思うのが自然だろう。

“仕事のための仕事”を無くす方法

実際、Asanaが2019年12月に日本やアメリカ、イギリスなど世界6カ国を対象とした働き方に関する調査(1万223人対象)によると、日本人はこうした“仕事のための仕事”を無駄であると認識していない傾向にあり、6か国中最も多い82%が残業をしているという結果が出ている。生産的な仕事をしている感覚は6か国中最も低い。

多くの人が関わる仕事の場では、人と人、チームの間に見えない壁が存在し、それが人や組織の成長や効率を向上させることの障害になっている。そうした仕事とそれに関する情報や意思の疎通が阻害されることでこういった問題が起こる。

・同じ仕事を複数の人が同じ仕事をしている
・予定外の会議が入る
・突発的な仕事によって予定が狂う
・依頼した仕事がどうなっているか調査する
・コミュニケーションツールや社内システムで情報を探す
・プロジェクトやチーム、会社のミッションを把握していない

どこにでもある課題に思えるが、実はどれも「ミッションや仕事がリアルタイムに可視化されていない」という共通の問題を抱えている。

Asanaへの期待

そこで、すべての課題を結びつけ、解決するのがAsanaの力だ。
メンバー一人ひとりがタスクを作り、他のメンバーとコミュニケーションを取りながら仕事を進めることで、それがプロジェクトや組織全体の動きとリアルタイムで結びついていく。

これはいわゆるToDoリスト型のツールではない。ビジネスチャットとも違う。「タスク管理」・「組織の情報伝達」・「コミュニケーション」・「組織全体の意思統一」を同時にリアルタイムで反映するものなのだ。

本来、メンバーそれぞれを尊重し能力を最大限発揮できるようにするならば、マネージャー層はチーム全体を常時認識し、改善し、すべての労働者が意義をもって働けるようにするだろう。それがワークマネジメントであり、それこそが上司がやるべき本来の仕事だ。

ただ、残念ながら「会議をやることが仕事」「話し合いで決める」「会わないと仕事ができない」などという固定観念や慣習という壁が「より良い仕事」という可能性から遠ざけようとする。この壁を乗り越えるための機運はそう頻繁に訪れはしない。すべての人の仕事をアップグレードし、チームや組織、そしてひいては日本の未来の原動力である仕事の現場全体を進歩させたいとすら感じる。

ワークマネジメント、それは本書が気が付かせてくれる“働く環境”を成長させる最大のコンセプトである。

【関連リンク】
Asana.com
田村 元・著 「より良く働くためのワークマネジメント 日本の会社に蔓延する 「仕事のための仕事」を根本からなくす方法」 @asana

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