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Boxがエンタープライズアプリ開発プラットフォームを発表!【@MICKEYTACHIBANA】

[読了時間: 5分]

サンフランシスコ(3月26日) シリコンバレーのクラウドストレージサービスのBoxは創業以来初めての開発者向けイベントBoxDev2014で大きな発表を行った。企業内や顧客も含めたプロジェクトメンバーによるコラボレーションツールとしての使い勝手に優れ、法人向けとしてここ数年急成長しているBoxは、さらなる成長戦略としてエンタープライズアプリ開発プラットフォームをロールアウトした。BoxDev2014では3つ重要なリリースがあった。

1. 安価で堅牢なクラウドベースのエンタープライズアプリケーションプラットフォームの提供

今迄のエンタープライズアプリケーションは旧世代のIT思想とシステムアーキテクチャーで設計され、高額なインフラストラクチャーの上に構築されており、ハード/ソフトの価格が超高額であるばかりか、デプロイ、保守・メンテナンスは勿論の事、導入のコンサルテーションやカスタム設計など、それぞれ高額でそれらを積算すると1億円の値札がついてもおかしくない。つまり大手企業がオラクルやSAPを導入するとデプロイまでにかなりの期間を要し、さて人事管理や物流管理を始めるぞというには相当な資金力と忍耐が必要とされているのが現状だ。この市場はざっと300 Billionドルと言われているが、Boxは開発用プラットフォームを無償で解放するという事だ。これに参加するアプリ開発者はスマホアプリを開発するのと同じ次元で人事管理、物流管理、販売管理、会計システム、はたまた病院用カルテ管理システムなどと、得意な分野でアプリを開発してBoxのマーケットプレイスで販売していくという訳だ。利用者は買い取りではなく、基本的に使う頻度に応じてチャージされるので、導入コストもランニングコストも現行のERPとは全く比較にならないという事だ。2007年からAPIを解放しているBoxのエコシステムには、現在35,000のデベロッパーが登録していて、1000のアプリが開発され、ちょうど10億回のサードパーティーAPIコールを記録したとの事。法人向けコンテンツコラボレーションクラウドとなる、BoxコンテンツAPIの価格体系は表に示されるとおり、開発段階では毎月25,000APIコールまで無償、そこからは従量制で追加の25,000APIコール毎の$500となる。また大企業向けERP(企業資源計画)アプリなど徹底的にカスタマイズして専用サービスを構築したい場合は別途相談となっている。

2. メタデータ領域の解放

Boxの便利な所はオンライン検索機能だが、メタデータ領域を解放した事により、デベロッパーは書類名とは独自に必要な項目設定をして、それらを検索対象とする事ができる。自動/手動で付加した項番やプロジェクト番号、写真であれば撮影日などと共に緯度経度といった位置情報を含める事によって、それらを検索、リストアップするようなアプリの応用が可能となる。今迄も、ファイル名や書類をブラウザーで表示しさえすればフルテキストサーチが可能だったが、メタデータ領域を利用する事でアプリ応用の幅が広がった。

3. HTL5書類ビューアー:Box View

Box Viewは独立したサービスとなり、このツールを使う事でPDFとMicrosoft Office書類をHTML5に変換する事でブラウザーを通じて表示する事が可能になった。単に低解像度で表示するのではない。元データからCSS、書体、画像、SVGを抜き出して、高解像度でレンダリングする事でズームインしてもフォントも画像もピクセルが出ないようになっている。デベロッパーはBox Viewを独自のアプリに組み込む事でBoxに保存されているPDFやMSOffice書類をブラウザーは勿論の事、タブレットやスマホアプリで表示する事ができるようになる。Box Viewは昨年買収したCrocodocの技術を元に進化させたもので、元Crocodoc CEO、現在はBoxのDirector of PlatformのRyan Damicoが自ら紹介した。Box View基本コード(technology stack):viewer.jsはオープンソース化され、開発者向けコラボレーションクラウドのGithubに用意される。標準Box Viewをそのまま利用する場合は、毎月1,000回までの変換料は無償なので、個人や開発者には負担がかからない。Box Viewをカスタマイズ可能とし、さらに毎月2,500回まで変換できるBox Viewカスタムプランは$250、エンタープライズ向けプランでは、データ変換は毎月10,000回まで、更にエンタープライズSLAs(サービス水準合意書)と選任サポート要員が付属する。このBox Viewエンタープライズに関する費用は別途相談となっている。

 #boxdev2014

 

【関連URL】

・Box Platform
https://www.box.com/platform/

・Powering Solutions with Metadata
http://developers.blog.box.com/?p=14242

・Introducing Box View
http://developers.blog.box.com/?p=14272

・New Contents API Platform Pricing
http://info.box.com/content-api

 

蛇足:Mickey’s インスピレーション、

2005年、創業間もない頃のBox

Dropbox、Spotify、Pinterest、Uber、AirbnbといったB2C向けサービスを行っているスタートアップに比べてBoxは知名度は低いかもしれない。しかし今回の発表内容に目を通した方は、彼らの将来性にすぐ気付く筈だ。AWSのように容量無制限で、PCでもMacでも、色々なスマホやタブレットからでもアップロード、ダウンロード、閲覧、変更が素早くできて、社内でも、社外とでもデータ共有やリアルタイムコラボレーションができて、さらにPDFやMSOffice書類の表示や検索もできる。利用者は何のためらいも無くこの便利なツールを日常的に利用する事だろう。一方アプリ開発者は初期投資がほとんど無いので、とりあえずフリーミアム戦略でユーザーベースを確保して、カスタム開発の受注や、ユーザーからのフィードバックを反映しながら、機能アップデートを進めて行く。プラットフォームであるBox自体も、ぶれの無いロードマップのもとに機能の追加やSDKの充実を計って行く。既に20万社、2000万人の利用者を持つBoxは、Salesforce.com、NetSuite、Google Appsといった利用者の多いエンタープライズクラウドとも連携可能としており、開発者は製品に傾注するだけで、スケール戦略に関して心配する事はあまり無い。BoxDev2014の招待状には「Build Software for the Information Economy」 と記載されていた。陽気で頭の回転が抜群に早い、若干29歳にして既にシリコンバレーのスタートアップ企業のCEOの中でも抜きに出たカリスマ性を放つAaron Levieは、間違い無く近い将来Marc Benioffの偉業を塗り替える可能性がある。2005年にMark Cubanから$350,000のエンジェル投資を受けてスタートしたBoxは、以降2007年を除き、毎年コンスタントに追加投資を受けており、現在までに累計で$414 Millionという巨額投資を受けている。現在IPOの為の申請を進めているとの噂もでているが、Aaronはその件に関しては最後まで語らなかった。ただしプレスルームで立ち話した際には、日本でも需要が急増しているので優先順位は高くなっている。近い将来良いニュースを発表できるかもしれないと教えてくれた。

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