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IoTソリューションを通して『小ロットハードウェアのマーケットをつくる』Bunnyhop社の代表取締役、澤 規仁 氏インタビュー【@masaki_hamasaki】

 Bunnyhop社の代表取締役、澤 規仁 氏にインタビューを行いました。Bunnyhop社はIoT(Internet of Things)ソリューションを提供しており、『小ロットハードウェアのマーケットをつくること。』を目指している企業です。クラウドや、3Dプリンタ、オープンハードウェアなどを利用して、数台からでもハードウェアを生産・販売できる基盤をつくっています。

 マーケットづくりには強い思いを持っているようで、「世の中に小ロットのニーズは常に存在しており、ハードウェア開発も小ロットのニーズはたくさん存在しますが、マーケットにはなっていません。我々はそのマーケットをつくることに挑戦しています。」とのこと。

Bunnyhop社によるIoTの取り組み事例


 過去のBunnyhop社の取り組みとしては、戸田建設株式会社と共に、『ビルメディカルシステム』として建物の揺れを検出・分析する地震センサ『ユレかんち』を製作しています。
 
 『ユレかんち』は、Bunnyhop社が提供する加速度、温度、電流などを、高精度にセンシング可能なIoTプラットフォーム『IoT for SENSE』を採用しています。

 地震発生時の加速度データを、リアルタイムでクラウド上に送信し、クラウド上で建物の健全性を分析。クラウドにデータを集約することで、地震発生直後でも、遠隔で建物の震度情報を含む被災状況を把握できるとのこと。

 製品基盤はRaspberry Piを利用しており、小ロット製品でもローコストでの製品化が可能だったようです。本事例も『小ロットハードウェアのマーケットをつくること。』を実現するために取り組んだ事例とのこと。

 「Raspberry Piをビジネスで使うことに不安を感じている方は多いです。しかし、コストも安く、ハードウェアとして信頼性を高めるために、さまざまな検査を受けることができます。もちろんCPUの処理は早いが、電流ノイズが多いなどのデメリットもあります。得意、不得意を使い分けて、得意な部分で使うと十分信頼性は高いと思います。」

Bunnyhop社のIoT関連のお問い合わせから見る市場観

 「問い合わせをいただくこともあるが、やりたいこと自体が分かっていない方も多いです。明確にこれがやりたい、というのが無い場合もあります。」

 「どうしてこれだけIoTが騒がれだしたのか。一つは『価格破壊』が理由にあると思います。例えばニッチな業界でハードウェアをつくろうとしても、量産しないと安くなりません。しかし、大量発注ばかりニーズがあるわけではありません。Raspberry Piやオープンハードウェアであれば、値段はそれほどしなくてもできます。」

 「特殊なセンサーは数十万円もしたものが、Raspberry Piを使えば10分の1で作ることができます。それによって多く設置できるようになります。」

Bunnyhop社はなぜIoT事業をやるようになったのか

 「IoTを狙ってやっていたわけではなく元々やっていたことが、IoTと言われ出しました。メインはWebシステム開発を行っており、その仕事をしていく中で、ハードウェアと連動する仕事があった。現場で行っていた作業をWEB上でやれるようになれば、保守作業を軽減できるかもしれないと思った。」

 「ソフトウェアを作ることで人の動きが変わったり、人自体が必要なくなったり、お客様の売上が変わったりする。その『ライブ感』が何より好きなのです。建設、電気工事など、現場の職人さんとお話をするが楽しいんです。やっぱり現場しか分からないがあると思っていて。僕らが提供するサービスで『事故が減った』などの実績が出るととても嬉しいんです。」

Bunnyhop社が見る品質の問題、WEBとハードの違い


 「品質でいうとリスク分析をしっかりと行えば、一部が故障してもサービスは止めずに済みます。実際に今まで一度も止まっていません。」

 「周囲からはハードウェアメーカーに見れますが、実際にやっていることはWEBの技術。マイコンをWEBの技術でできるようになっただけだと思っている。組み込み系の企業に見られている。成果を出してもWEB屋には見えない。しかしながら、中でやっている人たちはWEBの人たちです。」

 「ハードウェアをやりたいというモチベーションがある方は多い。電子工作をしている人は多いが、ビジネスと結びついておらず、伝わってる感じがしない。」

 「ハードウェアづくりでも『メーカーの思想』と『WEBの思想』があると思っている。『メーカーの思想』の場合は絶対壊れないものを作る。『WEBの思想』は運用しながら直す。パソコンはハードウェアで、クラウドはハードウェアではなくソフトウェア。思想や、文化が違うから、ハードウェアとソフトウェアの人材流動が少ないように思う。」

 「IoTはまだまだ事例が少ない。新しいビジネス、新しいサービスの事例を積極的につくっていきたい。特に現場のIoTの事例を増やしたい。」

 「WEB業界の人たちに伝えたいのは、WEBの技術を使っていても現場のリアルな効果を見ることがなかなか難しいですよね、と。GoogleAnalyticsを見ていても、喜んでいる顔が見れませんよね。しかし、私たちがやっている仕事は目の前の人に喜んでもらえている実感があります。」

■関連URL
株式会社バニーホップ

蛇足:僕はこう思いました
IoTという言葉がよく聞かれるようになったが、何か実態のないもののように思えていた。実際に現場で接している方に聞くと、少し実態のようなものが掴めたような気がした。WEBとハードの違いを認識するのもそうですし、文化の違いなどにも配慮することが必要なのだろう。Bunnyhop社で印象的だったのは、『WEBの思想』と『メーカーの思想』の違いを意識し、自社はWEBの会社であると語っていた部分です。そして、自身も建設現場向けの営業をしていたことがある。その経験からも現場の職人さんと話して仕事をしていく楽しさ、現場に役立つ仕事の楽しさはとてもよく分かる。なので、インタビューもとても楽しい時間だった。ITが入ることで、効果がはっきする領域はまだ多くあるだろう。それを支援するBunnyhop社の今後は、ウオッチし続けたい。
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