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Justin.tvの失敗からTwitch の成功へ ー イベント「collision」特別レポート第2弾

Collision 2017イベントレポート 第2弾
2万人を集めるテックイベント「collision」が2017年5月2日から4日にかけて米・ニューオリンズで開催されました。
スタートアップや企業のイノベーションをリードするエクゼクティブが集結するこのイベントですが、日本からの参加は極めて少ない状態。TechWaveでは特派員を派遣し、ここでしか読めない特別レポートをお届けしています! (第1弾はこちら

Justin.tvの失敗からTwitch の成功へ、“ライフ動画”から“ゲームライブ動画”へのピボットーニューオリンズのビックイベント「collision」特別レポート第2弾

ライブ動画でのゲーム配信プラットフォームとしてグローバルで圧倒的なシェアを誇るTwitchの共同創始者、ケヴィン・リン氏のセッションをお届けする。justin.tvの失敗からTwitchへとピボットした理由、成功のポイントなど短い中で必聴のエピソードが散りばめられたセッションとなった。

セッション登壇者

[スクリーン&座席左]
Kevin Lin(ケヴィン・リン): Twitch Co-Founder & COO

[スクリーン&座席右] インタビュアー
Blaise Zerega(ブレイズ・ゼレガ): VentureBeat編集長

YouTubeのゲーム動画人気を見てビジネスモデルをシフト

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): そもそも、なぜゲーム動画なの?
ケヴィン・リン(Twitch): Twitchの前身である、justin.tv(動画プラットフォーム)で、「24時間自分の生活をライブ配信してみたらどうか」というアイディアが出たのが始まりだった。“Life casting”という言葉が流行ったのもここからだ。しばらく続けて、ただ人の生活を24時間配信しても大して面白くないことに気づいた(笑)そんな中、YouTubeを見ていたら、ゲーム動画がバズっていた。2009年、リーマンショックという最悪のタイミングだったけれど、そこで、ビジネスモデルをシフトする決心をしたんだ。

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): ライブ動画にこだわっている理由はなんだろう?
ケヴィン・リン(Twitch): 人はライブが好きということだね。ライブチャットもそうだけれど、ライブにはコンテンツクリエイターとの特別なインターアクションがあり、ただ動画を見るのとでは違う体験ができる。自分がコンテンツの一部になるという感覚で、チャットに参加していなくても、ライブを見ているだけでコンテンツとエンゲージしている。それが理由だね。

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): なるほど。ライブストリーミング中の言語の壁には問題はない?
ケヴィン・リン(Twitch): いい質問だね。Twitchは今や世界中にユーザーがいて、北米が占める割合はたったの37パーセントでしかなく、韓国、日本なども重要なマーケットになっている。ただ、ゲームの場合、コンテンツがユニバーサル。言語の壁がほぼないと言っていい。笑う場所も一緒だったり共有できる要素が多いから、言語の問題がないよね。

クリエイターをユーザーが支援する“バーチャルグッド”のコミュニティ

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): 世界No1プラットフォームとはいえ、ゲーマーというとてもニッチなコミュニティがターゲット。クリエイターはどうやってマネタイズしているんだろう? YouTuberとの違いは?
ケヴィン・リン(Twitch): Twitch はクリエイターファーストのプラットフォームだ。Twitchを立ち上げる際には、多くのクリエイターにインタビューを行ったんだ。そしてYouTuber達から、広告では稼げるが、ファンからは稼げないという声があがった。それだ!と思って。無料コンテンツなのにお金を払えるシステムにしたんだ。正直上手くいくかはわからなかったよ(笑)

お金を払うユーザーは徐々に現れた。理由を聞くと、クリエイターを支援したいから、と言うんだ。ソーシャルグッドという言葉があるけど、Twitch上で起きていることはまさに”バーチャルグッド”だ。ユーザーにコンテンツを提供するクリエイターと、それをサポートするユーザー相互が助け合ってコミュニティを維持している。

ちなみに、justin.tvの時はインタビューをあまり行わなかった。今考えると、だから失敗したんだろう。スタートアップによくあることだけど、自分達が最高のユーザーと思いこんでいると絶対上手くいかないよ!

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): クリエイターで沢山お金稼いでる人はいるの?
ケヴィン・リン(Twitch): メディアでも良く取り上げられているけど、月に5000ドルを稼ぐ人もいるね。

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): 最近では、ゲーム以外のコンテンツもあるようだけどその意図は?
ケヴィン・リン(Twitch): ゲームの試合中継中、ハーフタイムにユーザーがゲーム以外の行動を取っていることに気づいた。ユーザーの大半はクリエイターだから、Photoshopをいじっていたりコーディングのビデオを見ていたりする。ライブチャットから分かったことで、ここから意外なニーズが掘り起こせる。そしてユーザーの行動に合ったコンテンツ提供を考えると、自然とゲーム以外のコンテンツも出てくるようになったんだ。

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): Twitchのコンテンツってクリーンだよね。Facebook live では暴力的な動画が話題になっているけれど、ゲームも暴力的なコンテンツが多くなりそうだよね。何か手を打っているの?
ケヴィン・リン(Twitch): コンテンツマネジメントについては、Twitchでは専任チームを配置している。最近では、Automodという機能をローンチした。暴力的、性的で不適切な言葉をマシーンラーニングによってフィルタリングするシステムだ。クリエイターは4段階に分けてフィルタリングの強度を調整することができる。とはいえ、複数のライブ配信を同時にマネジメントするのは困難なことだ。

ブレイズ・ゼレガ(VentureBeat): トラディショナルメディアと比べるとTwitchにはどんな違いがあるかな?
ケヴィン・リン(Twitch): 一つは、ユーザーのインサイトを教えてくれるということ。ライブは、その瞬間に人々が何を考えているのかがコミュニティでシェアされる。

もう一つは、何が起きるか分からないというライブ感だ。プログラムされてないコンテンツを今の若い世代は求めている。驚かされたい!という欲求がある。テレビ番組について、放送の翌日に学校で話す―今はそういうコミュニケーションは求められていないんだ。

(以上)

【関連URL】
・Collision Conf
https://collisionconf.com
・スタートアップが大企業へのプレゼンに失敗する理由 ー イベント「collision」特別レポート第1弾
http://techwave.jp/archives/collision-2017-report-01.html

特派員感想
知り合いにゲーマーが何人かいますが、彼らのTwitch崇拝度には毎回驚かされます。ライブを見逃した時には、サッカー日本代表戦を見逃したかのように悔しがっています。ライブを見ていないとコミュニティに入れない疎外感や、自分とは異なる攻略プレーから得られる「驚き」という快感。Netflixで配信されている“House of Cards”もユーザーの反応を見てシナリオを変えているそうですが、これも驚かされたいというユーザーのインサイトをうまくくみ取った事例と思いました。
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