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それでも仮想通貨は無くならない、コインチェック大規模流出事件を受けて

蛇足:僕はこう思ったッス
TechWave編集チョのMASKINこと増田真樹です。仮想通貨取引所として国内トップの勢いを持っていたコインチェック社が巨額流出事件を起こしました。事態がどちらの方向に転ぶか全くわかりませんが、経営陣や関係者の責任逃れはできないと考えられます。ただ、これを「仮想通貨が危険」と論じ、可能性全てにフタをしてしまうのはナンセンスだと思うんです。というわけで、長い蛇足をお届けします。

今回、問題があったのは取引所を運営していたコインチェックであり、仮想通貨NEMの技術には問題はありません。このような問題が個々の事業者で起こったとしても “仮想通貨” の仕組みが無くなることはありません。

インターネットが様々な人や組織によって世界規模のネットワークを構築しているように、マイナーなど仮想通貨のインフラを支える多くの人がいる限り、仮想通貨は止まらないのです。

焦点はウォレットの管理

では、何が問題なのか。今回のコインチェックもマウントゴックスも共通している点があります。仮想通貨の仕組みに脆弱性があったのではなく、取引所の運営体制に問題がありました。

取引所の仕事を簡単に整理するとこのような感じになります。

1.利用者から資金を預かる
2。取引に必要な資金を移動する
3.仮想通貨(暗号通貨)の取引に必要な暗号キーなどを保管
4.仮想通貨(暗号通貨)の取引手続きを行う

3の暗号キーなどを保管する場所は「ウォレット」といいます。ここでいう暗号キー(秘密鍵)はまさに金庫の鍵でこれが盗まれたら仮想通貨は持ち出されてしまいます。このデータは、インターネット経由で盗まれないように「インターネットに接続してない機器」や「USBなどの物理的保管場所」「紙にプリントしておく」といった方法がとられます。

今回のコインチェック社の流出では、このウォレットの仕組みをインターネットからアクセス可能な場所にしていました。これは、自宅の鍵を玄関マットの下に隠すようなものです。

安全を担保する仕組みが未成熟

今回、コインチェック問題では、マルチシグという言葉が注目されました。暗号キーが1つ盗まれたとしても、他の2つ以上の暗号鍵による認証と組み合わせることで簡単には盗まれないというものです。これは重要なポイントですが、運用次第でセキュリティ度合いは大きく変わります。仮にマルチシグが運用されていたとしても、前述のウォレット情報が全て盗まれたら意味を成さなくなる可能性があります。

大切なのは「ウォレット」つまり仮想通貨(暗号通貨)の口座情報および取引キーをどう保管するかということなのです。これまでも取引所が破綻する例がいくつもあり、ウォレットを平行運用していた場合、ウォレット情報も消えたなんてことが起こっています。

ただ、今の日本の流れでは、利便性を重視し取引所とウォレットの境目が見えないため、あたかも取引所に入金すれば資産は預かってくれるし取引も安心して行えるように見えてしまいます。そのため、いつぞやのマウントゴックスによる仮想通貨消失事件のように「取引所=仮想通貨の何でも屋」に見えてしまい「取引所の問題=仮想通貨の問題」になってしまいます。

ウォレットを簡単かつ安全に保管する技術もサービスも成熟していないといえますし、サービスも整っていません。重要なのは取引や税制や制度云々も大切ですが、前提条件としてこういった現状があるということを私たち一人一人が理解する必要があると思います。

仮想通貨は無くならない

改めて言いますが、このような問題が仮想通貨取引所周辺にあったとしても、取引が行われマイナーが採掘する以上仮想通貨(暗号通貨)の手続きは止まりません。誰かが「止めろ」といっても止まらないのが仮想通貨です。

現在、仮想通貨の取引が禁止されたり、ICOが規制される国と地域が出てきており、仮想通貨(暗号通貨)およびブロークチェーンなどの基礎技術に期待している人々から悲観の声が漏れ出しています。投機や不正な利用等を制限するためだと思われますが、制限しても世界規模の仮想通貨ネットワークが止まることはありません。

最も重要なのは、テクノロジーを理解し、より安全に取引できる技術やサービスを構築することです。利便性と安全性の両立は並大抵のことではありませんが、それを成し遂げようとする多くの人々がこれからの豊かで安心できる社会を構築することになると信じています。

【関連URL】
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