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残り90%の人々のためのデザイン、折り紙のように灯るランタンが世界を変える可能性について @maskin

「世界のデザイナーの95%は、世界の10%を占めるにすぎない最も豊かな顧客向けの製品とサービスの開発に全力を注いでいる」

これは「世界を変えるデザイン(英治出版 2009年)」(原題はdesign for the other 90%)という書籍の冒頭で語られた言葉です。

一方で、電力さえ自由に使えない国や地域が存在します。私たちの住む日本にあふれるアイディアや技術を少しでも彼らに提供することでどれだけ多くの人が助かるのでしょう。限られた領域にフォーカスし過ぎるあまり、私たちは大切なことを見失ってしまっているのではないか。それは社会的意義などだけに限らず、ビジネスの機会としても大きなものを逃している可能性があります。

いつでもどこでも持ち運べる照明

昨年、米クラウドファンディングサイトのKickStarterに投稿されたプロジェクトに注目が集まりました。太陽光発電により蓄電された電力により内蔵された6つのLEDを点灯させるというモバイルランタン「solar puff」です。

一辺が3.5インチ=8.89㎝の正方形。材質はエコ熱可塑性プラスチックというリサイクルが可能の素材です。QVCのような毒性がある物質は使っていません。繊維で補強された厚めのビニールといった触感で、このように折りたたむことが可能です。

折りたたんだ時の厚さは0.25インチ=6.35mmで、スマートフォンより薄いくらいでしょうか。重さは2オンス=約56.7グラムととても軽く、そのまま封筒に入れて(太陽電池パネルは割れる可能性もあるので厚紙などで補強は必要ですね)郵送することも可能です。

LEDライトの明るさは2段階あり、およそiPhoneのフラッシュライトと同じくらい照らすことが可能です。(冒頭の写真はこのランタンを使って勉強をしている光景でした)。LEDは白と赤(緊急用)の2種類にはっ色しますが、本体のプラスティックにはカラーバリエーションがあり、さまざまな色味を楽しむことが可能です。

プラスティック筐体部分は柔らかいため、自由に形を変えることが可能です。上下にはバンドが付いており、木に吊り下げたり、天井に掛けたりすることが可能です。

太陽電池は4~6時間充電すれば、4~6時間点灯させ続けることができるそうです。便利ですね。防水処理がされているのでキャンプはもちろん、緊急時のために防災セットに入れておくのもいいかもしれません。

しかしこれは、日本など豊かな地域にいるからこその発想かもしれません。可燃性のある素材を使わないで済む、安全でかつ永久的に使える照明。これを臨む人が世界にはどれだけいるか、私たちは想像すらできないかもしれません。

社会を変えるデザイン

この事業を始めたAlice Chun氏によれば世界で電力が使えない人は30億人ほど。かつ地球人の20%が、照明器具を使う贅沢が許されていません。また、こうした地域ではランプ用の灯油が使われており、毎年200万人の子供達がこの化石燃料の毒素で亡くなっているといいます。灯油を買うために必死で勉強して働いて、灯油の毒素で亡くなるのです。

Alice Chun氏は「「Solar Puff」ランタンを光のないところに提供し、灯油ランタンから解放したい」そして化石燃料の使用による有害物質の発生や火災を回避していきたいと考えています。

実際、「Solar Puff」を貧困地域に提供するためにはさまざまな課題をクリアしなければなりません。製品としてもより壊れにくく利便性のを高める必要もあるでしょう。ただ、灯りが無料で使えることで、人々は勉強ができるようになり、健康維持につながり、仕事の幅も広がるでしょう。

KickStarterでのクラウドファンディングでは、「1つ購入すると、1つをプレゼントする」というメニューが用意されました。筆者もそれでこのランタンを購入しました。ペアのもう一つはシリア国民の難民キャンプへの送られたそうです。

「Solor Puff」のプロダクトとしての完成度は十分すぎるほどです。筆者は25ドルでペアを購入しましたが。安すぎるくらいに感じています。ニーズを満たし、所有する満足度がある。かつ、誰かを助けることができる。一見するとただのランタンですが、グランドデザイン次第で世界を変えることにつながるのです。

【関連URL】
・A TwiLight! The Unique NEW SolarPuff Solar Light!!
https://www.kickstarter.com/projects/solightdesign/twilight-a-littler-solarpuff-making-a-huge-impact

蛇足:僕はこう思ったッス
 本当に困っている人たちがいる。人々はしばしば「そんな大げさな」と嘲笑してしまうが、小さなことが不足して困窮したり命を落としたりすることがままある。日本は人口がじわじわ現象してくることに対する危機感が高まっているが、それで内向きにになってしまうことこそ恐ろしいシナリオはないだろう。今こそ、世界の90%に対する貢献へと目を向けるべきだと思う。TechWaveでは、デザインカテゴリにて、こうした「世界を変えるデザイン」について継続的に記事を書いていきたいと思う。
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