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シリコンバレーのアクセラレータは3ヶ月で1億円以上の価値を育てる【@itmsc】


[読了時間: 3分]

シリコンバレーの有名シードアクセラレータである「500 Startups」と「Y combinator」をご存知だろうか?

そこにはTwitterやInstagramのような巨大サービスを育て上げるべく、世界中から優秀なチームが集結している。
つい先日100億ドル(1兆円!)の価値を認められ、2.5億ドル(250億円)の資金調達を行ったDropboxもYcombinator(以下YC)から輩出された企業なのだ。

ビデオメッセージアプリ「unda」の立ち上げに際して「500 startups」(以下、500)に参加したCTO徳井直生氏に興味深い話を聞くことができたので、皆さんと共有したいと思う。

以下、徳井氏からのコメント。

「500 startupsの2013年の春のバッチ(学校で言うところの学期)「Batch 6」にundaのCTOとして参加しました。undaはビデオにフォーカスしたLINEのようなメッセージプラットフォームです。メキシコ人の友人と個人的につくっていたプロトタイプが500の代表の目にとまり、他の会社よりも半月遅れで急遽参加することになりました」

応募して、プレゼンして、という選考手順を踏まずにプレゼンを見るなり「来週からシリコンバレーに来なさい」と判断された非常に稀なケースであったようだ。

「500での生活はいたってシンプルでした。朝起きて自転車でマウンテンビューのオフィスに出勤。ゲスト(成功している起業家、VCの代表者 etc)のトークをランチを食べながら聞く。週に二、三回のメンターセッションでプロダクトに対するフィードバックをもらって修正を重ね、夜はVCや他のスタートアップのメンバーと会食。オフィスにもどって夜中までプログラミング… そんな毎日でした」

これらのバッチに参加するメリットはどんな点があるのだろう?

「メンターとのセッションが最大の特徴ですね。メンターといわれる「先生」役のメンバーが登録されていて、彼らは定期的にオフィスに来て僕たちの話を聞いてアドバイスをくれます。メンターの経歴は様々で、成功した起業家、Google/Facebookなどの元エンジニア、VC出身者などなど。たとえばマーケティングならAさん、デザインならBさん、サービスをスケールすることはCさんという具合に、専門分野を持った人たちばかりです。各スタートアップは、必要としているアドバイスをくれそうなメンターにコンタクトをとり、アドバイスしてもらいます」

そして2大アクセラレーターともいえる500とYcombinatorとの違いはこんなところにあるという。

「500に参加して感じたのはマーケティングと数字(メトリクス)がなによりも重視されているという点です。エンジニアリングやデザインを専門とするメンターは少数で、全体のミーティングでもKPIはなにかといったメトリクスの話が主体でした。参加している会社の中でも、プログラマが常駐していて日夜プログラミングをしているチームは比較的少数派で、エンジニアは別の場所にいる、あるいはシステムは海外へ外注しているというチームの方が主流でした。

おなじシリコンバレーのアクセラレータでも、Y Combinator(YC)は完全にプロダクトにフォーカスしたアクセラレータだと聞いています. そのあたりは伝説的なハッカーであるYC代表のポール・グラハムとPayPalのマーケティングで辣腕をふるった500代表のデーブ・マクルーア、それぞれの特徴がそのまま反映されているのかもしれません」

バッチプログラムに参加するチームには例えば「株式5%と引換に500万円の資金提供」が行われる。5%で500万円ということは100%で1億円。この時点で「1億円の価値」が認められるということなのだ。

そしてバッチの締めくくりとして開催される「Demo Day」には有名投資家が勢揃いし、彼らの成果を値踏みする。
バッチ終了時の評価額は例えば「数億円」というチームもあり、この3ヶ月の期間内で実に1億円以上の価値が上乗せされた形になる。

もちろん評価額イコール、自己評価であって「僕たちのサービスは今○億円の価値があります。あなたはそれをリーズナブルだと思いますか?」という需要と供給の一致が必要なのだが、彼らが目指しているのは1000億円、1兆円という世界であり、バッチプログラムの中に「本物」が混じっているのは過去の例から明らかなのだ。

「1兆円になりうる」と認められたサービスをプレゼンする起業家と「この中に本物がいるはず」と思いつつ見守る投資家。彼らにとって「Demo Day」は果てしなくエキサイティングなイベントであるに違いない。

蛇足:僕はこう思いましたー。


500は世界中からチームが集まっているのに対し、YCは基本的にシリコンバレーの会社でないと参加できない模様。海外で資金を調達したり、会社を売ったりすることには否定的な意見もあるが、アメリカの方が現時点での舞台の大きさが桁違いなのは確かであり、徳井氏のような日本人チャレンジャーが成功することは日本のスタートアップ・エコシステムに良い影響を与えるはずである。500やシリコンバレーについて徳井氏に話を聞きたい方はTwitterで @naotokui に絡んでみるのが良いだろう。
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