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Facebook f8 2014レポート:開発者には更なる安定性を、ユーザーにはもっとコントロールを!【@MICKEYTACHIBANA】

[読了時間: 15分]

現地時間2014年4月30日(サンフランシスコ) – 2011年以来3年ぶりのf8開発者会議に参加した。Mark Zuckerbergは、2010年のOpen Graph、2011年のTimelineのような全く新しい概念の機能のお披露目には固執していない。基調講演の冒頭、彼は過去に口にした”Move Fast and Break Things”、つまりどちらかと言うと完成度に注意を払う事よりは、早く作って市場に出して既存勢力を壊して行く、評判が悪ければ引っ込めればいい、という姿勢から”Move Fast with Stable Infra”が今の気持ちと会場の参加者にコメントした。3月末の時点で世界最大、12億8千万人の月間アクティブユーザーを抱えるソーシャルメディアネットワークを運営する上場企業としては、遊び心はそこそこに、極度に信頼性に拘ったサービスを提供し続ける必要性がある。しかし、Facebookは決して守りに入ったわけでは無い。わずか2年前までは、他社に比べてモバイル戦略が見えていないと言われたが、もはやそれも過去の事。現在は収益の柱である広告ビジネスも、2年前はほぼゼロだったモバイルでの売上が全体の59%を占め、もの凄い勢いで続伸している。Markは、次なる目標は、クロスプラットフォーム・モバイルアプリ開発者の為のプラットフォームになる事であり、その為のツールを提供する事だと語った。

現在、モバイルOSはiOS、Android、さらにWindowsなどと複数存在しており、それぞれが他のOS提供者よりも素晴らしいプラットフォームになるべく競争をしている。その事が皮肉にも、逆に独自性を生み、アプリ開発者にとって重荷になっている。また、消費者にとっても決して良い解決にはなっていない事は周知の事実である。iPhoneからAndroidに変えた事によりiCloudメールをメインに利用している筆者の場合も、ユーザー体験が極端に低下している。このクロスプラットフォームのプラットフォームになる(Mark自身の言葉)件は、Facebookが一年前に買収したParseが重要な役割を負う事になるが、このサービスに関しては後段で記述する。

既に世界一のソーシャルメディアであるFacebookは、より良いユーザー体験を提供する為、そしてデベロッパーや広告主に対してのプラットフォーム提供者であり続けるため、いくつもの重要なアップデートを発表した。その中であえて3つに絞り込んでレポートする。

 

Facebook Login

消費者にとってFacebook Loginはすこぶる便利であり、時間と手間を多いに短縮してくれるものの、不用意に利用すると、後で好まない情報がFacebook内外のコミュニティーで拡散してしまうので、それを心配する人が少なくない。それでも月間8億5千万回も利用されているFacebook LoginはiOSのトップ100アプリの81%、Androidの場合62%に採用されている。Facebookはユーザーの不安要素を解消する為に、利用者のコントロール範囲を拡大し、より注意を促す構造にした。

新しいFacebookログインは本日以降リリースされる新しいアプリと、今後一 年間の期間中にアップデートされる既存アプリに適応される。開発者はSDKで提供される、匿名でログインといったボタンとライブラリーを利用すればいい。

ユーザーが初めて試すモバイルアプリを起動した際に、アプリがFacebookログインに対応していた場合、今後はFacebookユーザーがメアドや誕生日といった個人情報のどれを提供するかを、自分で毎回選択する事が出来る。同時にFacebook IDでログインしたアプリがFacebookに投稿する機能に関しても、ユーザーは直接の友達か、友達の友達までに見せるかどうかといったソーシャルグラフでの範囲設定を細かく設定する事ができるようになった。ここ数年、問題視されていた、個人情報のコントロールが改善され、不安要素が取り除かれたという訳だ。それでもメッセージが書かれているダイアログは毎回丁寧に読む事をお勧めする。

さらに新機能として、匿名でのログインが可能となった。例えば、Flipboardというニュースリーダーアプリを試そうとした際に、Facebookの実名でログインする選択肢の他に匿名でログインする事もできる。つまり、Flipboard側には個人情報を一切提供しない形でアプリを利用する事が出来る。筆者の理解に間違いが無ければ、その際にも匿名用のユニークIDが内部で利用されるので、匿名でログインしたケースでも利用した履歴は残っているので、場所を変えてデスクトップブラウザから同じサービスを利用するといった際には、それ迄の利用履歴を引き継いで、そこから継続出来るという事のようだ。という事はFacebook IDと匿名IDは紐付いているという事。しかし、サードパーティーアプリには情報漏洩が無いという事になるか。つまりFacebookそのものが匿名のSNSになる訳では無いので間違った理解をしないで欲しい。シンプルなアップデートであるが奥が深い。

 

App Links

App Linksはオープンソースとして提供され、誰でも無償で利用できる。モバイルアプリには完全にネイティブアプリとして自己完結型の物もあるが、その多くはフレームワークの中身をウェブから引っ張って来て表示している。特にウェブ/モバイル、そしてクロスプラットフォームのリアルタイムコンテンツ表示という、最もユーザー体験に優れたツールを開発する場合は、コンテンツはライブという事以外に考えられない。その際にモバイルアプリではブラウザーで見れるようなURLが表示されない。このディープリンクのURLが参照出来ないという事で、モバイルアプリ間でコンテンツのリンクを送受信する際に問題が起きている。例えばオンラインストアの購入したい商品のページとか、今皆さんが読んでいるブログの当記事のページといった、一番最後の単体コンテンツページをリンクしたくても、トップドメインのリンクになってしまったり、プロダクトや写真が沢山あるページにしか飛んでくれないといった事になり上手く行かなかった。

App Linksはそういったアプリ内の各コンテンツページのディープリンクURLを簡単に入手できるように業界の共通規格を作ろうという働きかけだ。これは是非共業界を上げて推進して欲しい。

 

 

Audience Network

絶好調のモバイル広告ビジネスの成功の理由としては、友人からの投稿フォームと同じフォーマットでニュースフィードに流れてくる、スポンサード広告の成功が大きい。そして現在急成長しているのがモバイルアプリインストール広告である。モバイルアプリの広告で真っ先に始まったのは、Admobなどが始めたバナー広告であり、さらにAppleのiAdでは、バナー広告よりもリッチな「広告体験」とマルチメディア機能を提供したが、それらに比べFacebook広告は抜群の(業界一の)ターゲティング精度とコンバージョンレートを誇っている。利用者の細かい個人情報とソーシャルグラフやアプリリンクから得られる志向を組み合わせて広告を表示する対象者層がピンポイントでターゲット出来るからだ。

f8では広告ビジネスの拡大に向けて、更なるドライブエンジンを追加した。Audience Networkはモバイルアプリ開発者向けのサービスで、Facebook内のモバイルアプリインストール広告と同じ体験をあらゆるサードパーティー性モバイルアプリ内でも再現するものだ。つまり貴方のアプリ自体が広告プラットフォームになるので、アドサポート型のアプリをリリースしている開発者は、今迄のバナー広告やお仕着せのアプリインストール広告に比べて、Facebook Audience Networkを利用する事で、より見かけが奇麗で、コンバージョンレートの高い広告を表示できるという事。結果として、従来より利益が上がる事は、間違い無しという強力なサービスだ。

アプリ開発者は各アプリに振り当てられてコードを添えて、バナー、全面広告、ネイティブアプリの3種類にそれぞれ用意された数行のコードを、アプリのビルドの際に実行するだけだ。後はFacebook Audience Networkが全て引き取ってくれる。しかもほぼリアルタイムで広告の表示が始まるので驚くばかりだ。FANでは現在のFacebook広告商品と同様、カスタムオーディエンスやコアオーディエンスといったターゲティングの絞り込みが利用できる。バナーなどの広告も自社のアプリを一番良く利用しているターゲット層に会った広告だけ表示される。

例えば23歳の男性ゲーマーがそのアプリを使用している時に、赤ちゃん用品や化粧品の広告は送られてこない。また、自動的に生成されるモバイルアプリインストール広告は、いずれもアプリに利用されているグラフィックスや書体をそのまま使っているので、見た目にも違和感が無い。日本企業ではユニクロやGreeが既に既に実験中だ。

 

Parse

最後にParseについても簡単に触れておこう。Parseはマルチプラットフォームモバイルアプリ開発プラットフォームであり、開発段階では無償(毎秒30回までのAPIコールまで)であるが、アクセスが増えると従量制の課金モデルとなる。簡単に言うとアプリ開発者はParseにバックエンドサーバー領域の運用を任せ、フロントエンドアプリの開発に集中する事で、工期の大幅な短縮と費用軽減を得る事ができるという物だ。

例えば貴方がInstagramのようなカメラアプリを作るとしよう、その際には、写真データの他、フォローしたりされたりするユーザーのデータや、気に入ったとかコメントとかといったデータが、日々生成される事になる。これらをアプリ自体に保存する事は不可能なので、ウェブサーバーに保存するのが一般的だ。その際にデータのバックアップとか、セキュリティーとか、はたまたプッシュ通知機能とかいった事に対応する為に、バックエンドの開発をする事になる。これを自社内で負担するにはそれなりの開発体制が必要となってくる。人気アプリのBand of the Dayを例に取ると、バックエンドは全てParseに任 せているので、バックエンド側の開発要員は一人しかいないという。しかも、iOS用、Android用、Windows用と各プラットフォーム毎に専門のプログラマーを雇うのは大変だ。Parseはマルチプラットフォーム対応で、Unityなどのゲーム用プラットフォームにも対応しているので、Facebookが今年になって買収したOculus用のアプリもParseで対応出来る。さらに、Parseには使えるアナリティックス(分析)ツールが無償で提供されるので、どの期間中にどのくらいダウンロードされたか、リピート利用率が何日目ぐらいから落ち込んで行くかなどといった数字を得る事ができる。

Parseの利用料金は以下の通り。

•Parse Core

•一秒間に30回のAPIリクエストまでは無料 (以下毎秒10回のAPIリクエスト毎に$100つづ追加)

•20GB of file storage (+ $0.03 per GB over)

•20GB of database storage

•2TB of file transfer (+ $0.10 per GB over)

•Parse Push

•1 million unique recipients/month (+$0.05 per 1,000 unique recipients over)

•Advanced push targeting, push scheduling, and multiple push certificates available to everyone for free!

•Parse Analytics

•Completely free! (including advanced analytics)

(価格はいずれも一月単位)

詳しくはこちらのリンク先で確認して欲しい。

https://www.parse.com/plans

 

【関連URL】

・App Links

http://applinks.org

・Facebook Audience Network

https://www.facebook.com/business/news/audience-network

・Parse

https://www.parse.com

 

Facebook Newsroom (English)

 

蛇足:Mickey’s インスピレーション

Facebook離れが進んでいる。ティーンエイジャーは、既にSnapChatやWhatsAppに移っていて、Facebookのユーザー数はむしろ下降線を辿っている。こういったニュースや批判があった事は確かだ。理由としては単純に飽きられたという事よりも、自分の知らない所で、個人情報やデータが拡散してしまったりする事への不安が増大した事で、利用する事を止めた人達がかなりいた事は間違い無い。Facebook Loginでそれを是正した。また、一年前にParseを買収してマルチプラットフォーム対応モバイルアプリ等開発用バックエンドサービス、backend-as-a- service (BaaS)を推進し、WhatsAppは買収。さらに上手く行ったアプリインストール広告を、サードパーティー製モバイルアプリを広告媒体として提供していく、FANのロールアウトと、さすがに他社追従を許さない。一時は株主に不調だったOculus買収の件も、来年のf8までには、恐らくあっと言わせるVRアプリケーション・プラットフォームに仕上がっているのではないだろうか。最近プラットフォーム戦略という言葉を良く耳にする。BoxもDropboxも(ややこしいが別物)、プラットフォーム戦略でデベロッパーにアプリを開発してもらいたいと言っているし、Facebookもプラットフォーム戦略を強化する事で、OSやデバイスを超えたユニバーサルなユビキタスコンピューティング環境を支配したい。勿論それが出来ればユーザーに取っては歓迎だ。だが、ここにウェアラブルデバイスとか、モノのインターネット、人のインターネットが交錯してくる事は間違い無いし、Appleはどう考えても他社との共通化には応じてくれそうもない。大手各社はユーザー目線で、ユーザー体験の向上を計る為にはプラットフォームの標準化だと叫びつつ、実際には止めども無く糸がこんがらがっていくのではないかという心配である。特にデジタルヘルスやフィットネスエリアはハードも絡んでくるし、クラウド環境も必須だ。ユーザーとしては、複数のブランドのハードを利用していても、自分の健康データを一元管理出来る標準ダッシュボードが欲しい所だが、その辺の標準化もお願いできないだろうか。少し脱線したが、Facebookはしばらくは安泰のようだ。尚、f8ツアー/勉強会は参加者が定員に満たなかったので、見合わせる事になった。幸い録画が用意されているので、こちらを利用して欲しい。https://f8.facebooklive.com

 

蛇足の蛇足:アフターパーティーはLAのDJ/ラッパーDIPLO

f8は2007年の第一回からサンフランシスコSOMA地区のデザインセンターで開催している。第5回目となるf8 2014も同じ場所(今はConcourse Exhibition Centerと呼ばれている)で開催された。会場の一画にはダンスフロアが設営され、セッション終了後に軽食を挟んでそのままクラブイベントに突入する。f8の運営責任者は、地元のクラブに場所を変えてパーティーをするとドロップする率が多くなるのを良く知っているからそうしているのだろう。しかも退屈なDJを選んでいないし、かといって余りにも専門的でもない良い線をついている。f8の話題から一旦離れるが、昨今、テックスタートアップがどんどんとサンフランシスコで起業して(同時にシリコンバレー企業のベットタウン化もある)、MissionやWestern Addition地区のような比較的コストが安く住み易かったエリアにもヤッピー向けレストランが開業し、昔からの住人や収入の少ないアーティストなどが街から追い出される事にもなっている。おまけにクラブもシアターもアングラじゃなくなりつまらなくなったという不満もよく聞く。Googleの送迎バスも、そういう意味であまり歓迎されていない。しかし市当局としては、税収が増え財政的には良くなっているという。なかなかバランスを取るのが難しいところだ。何はともあれ、来年のf8は3月25日、Fort Masonに場所替えして開催される。

https://www.youtube.com/watch?v=mxQClG6XYjE 

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