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業績下方修正のgumi! しかしソーシャルゲーム海外展開の成功の芽がそこにはある


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編集チョ maskinより:僕はこう思ったッス
新TechWaveの大きな柱であるGlobal Expansion。日本という視点でみるとどうしても「世界への橋渡し」とか「海外進出」といった島国の壁を乗り越えることがゴール、みたいな話になってしまいがち。そんなゆるい状況に、シンガポール発、Diixi率いる小林慎和さんからの渾身の一発が届きましたので、全文ママでお届けします

業績下方修正のgumi! しかしソーシャルゲーム海外展開の成功の芽がそこにはある

 先週業績の下方修正を発表したgumiである。

弊社は2012年の創業以来、一貫して日本企業と日本の若者の海外展開に焦点をあて、買収交渉、JVの設立、拠点の設立、アライアンス設立などの実働というのに拘ったサービス提供をしてきた。
筆者(代表の小林)は、実は2011年グリーに在籍していた。在籍中に世界8カ国に海外拠点を設立しまくる激動の時代、アメリカなども出張で行き来しつつ、最終的にグリーシンガポールを立ち上げ、当時アジアヘッドクオーター構想を実現するべく拠点長として動いていた経緯がある。

グリー(当時グリーシンガポール在籍)を辞めてから、そのままシンガポールで現在の会社Diixiを創業した。ソーシャルゲーム界隈はあまりにも知人友人が多すぎるため、ブログや記事などを執筆するのは控えていたのだが、独立からもう2年半。そして、今回のニュースを受け、独立後初めてこの業界について書いてみたいと思う。

CrowdSekaiは、「日本の世界展開を10倍加速させる」というミッションの元、IT、モバイル、サービス、飲食、教育という業界に絞って事業を展開している。今回はソーシャルゲームだが、次回は飲食について発表したいと思う。

さて、

海外売上比率が44%。

これがいかに驚異的かわかるだろうか?

主なソーシャルゲーム系企業の海外売上比率を出してみたい。参考情報として楽天も併記してみる。

各社の海外売上高比率

IR公表資料、プレスリリース資料などを元に作成

これだけ?と思う人もいらっしゃると思うが、

実はほとんどの企業はIRの説明会資料などで、海外売上比率を公表していない。
公表してないといことは、IR上での意味合いで言うと、プラスに働かないという判断をしていると思うのが普通である。
(*)をつけているGREE、DeNA、楽天は説明会資料には明記はされていない。

GREEとDeNAについては、コイン消費総額が国内と海外に分けて公表されているので、それを活用して比率を出した。よって、厳密には海外売上比率ではない。またGREEはほとんどが買収した企業による貢献である。
楽天については、2014年9月に米国のイーベイツを買収したことによって、海外売上比率が16%ほどになるという見解があったので、そのデータを拝借している。
Klabは地道に海外展開に取り組んでおり、徐々に増加。2014年12月期第3四半期報告書の中で12%と謳っている。

gumi業績推移(国内、海外別)

IR公表資料より作成

先週発表されたgumiの決算発表から拝借した業績報告である。2014年4月期から2015年4月期(Q3累計)において、国内売上は38億3000万円の増収、それに対して海外売上は55億9900万円の増収なのである。増収部分だけで議論するならば、gumiの業績は6割が既に海外からやってくるのである。

売上の6割が海外で成り立っている。そんなIT企業をかつて聞いたことがあるだろうか?

1970年代から90年にかけて、日本には多くの「世界ブランド」があった。
フォーブスやフォーチュンなどが毎年グローバル500というのを発表しているが、かつては3分の1以上が日本ブランドだった。直近では、アメリカ、中国に次ぐ3位まで後退している(2014年版では日本企業数は57社である)。

私は日々アジアを飛び回り、日本の海外展開を加速させるべく邁進しているが、その動きの中でいつも言われることがある。

「Japan is great, Japanese products are innovative」

一方、出張で東京に戻り各社とミーティングなどをする度に言われることがある。

「内はなかなか海外が苦手なんですよ」 「アメリカのようにイノベーションなサービスが作れればいいんですが」

このギャップはどこから来るんだろうか?

20世紀。100を優に超える最強の日本ブランド達が世界を席巻した。そしてバブル崩壊から20年以上が過ぎ、いま我々は世界中で先人たちが積み上げてくれた「巨大」な日本ブランドのうえで戦っている。
そのブランドを少しづつ食いつぶしながら、戦っているのだ。
この超優遇シード権もそろそろなくなりつつある。多くの日本企業が食いつぶすだけ食いつぶし、新たに積み上げてこなかったからだ。

再びのSONY。

かつてのSONYのように、世界を席巻するITブランドを作りたい。

これは大学生の時から考えていたことだ。実は大学時代はコンピュータサイエンスを専攻し、コーディングの毎日だったが、才能の無さを7年かけて気づき、コンサル業界に転進した口である。

しかし、その思いは今も変わらない。自らのスキルでは、このCrowdSekaiのようなサイトを作れる程度。

一方、事業の構想はいくらでも湧いてくる。ビジネスプロデューサー的な立ち位置で、世界を席巻するITブランドを作ろう。その意気込みで、いまがある。

海外展開で拠点を立ち上げるならば、まずはその現地マーケットを精通したトップを、競合からでもヘッドハントし引き抜き展開するのが定石である。

定石だろうか?

そうすれば、100%成功するなどという保証はない。

だが、拠点を立ち上げ、日本からトップ(その国に初入国)を送り込んで展開する。

後者よりは、前者の方が直感的に上手く行く気がする。
しかしながら、ほぼ全ての日本企業において、ごく一部の例外を除いて、このほとんどの人が直感的に前者だと思うが、それを日本企業はしないのである。

現地トップ人材の登用状況

(*)各社の会社ウェブサイト、プレスリリースなどの公表情報を元に作成。登記上の社長が日本に在住する社長(または役員)の場合でも、現地トップに匹敵する人物を登用している場合は、カウントしている。

かつて家電最強の松下も、世界最大の総合商社の三菱商事も現地トップは日本からの赴任がほとんどであり、これは各社の戦略に依存する問題ではあるが、少なくともほぼすべての米国系企業は前者の戦略を取る。

そして、その米国型の海外拠点の展開をスタートアップ時代から攻めているのがgumiである。数多くの日系スタートアップと接してきているが、ここまで米国型に振り切った展開をしている企業は稀有である。

そして、個人的な見解になるが、私はそのやり方への挑戦が大好きである。優秀な現地トップを外部から引っ張り、素早くその土地の最高のチームを創り上げていく。その場合、国籍は関係ない。日本人ではダメという理由もないし、拠点を立ち上げた国と同じ国籍でなければならないわけでもない。

ソーシャルゲームの場合、拠点を外に作らなくとも、海外での売上を立たせることは出来る。ではその日本にいる部隊を率いるチームは当然ながら、国際化していくべきだろう。

gumiは2012年4月に海外拠点を初めて作り、そこから約2年10ヶ月で9拠点にまで拡大している。

米国のビックスタートアップのUBERは50カ国でサービス展開、AirBnbにいたっては190カ国である(両者とも拠点数ではない)。それから比べれば、まだ始まったばかりだ。

ソーシャルゲームビジネスは、当然ながらコンテンツビジネスである。コンテンツ・ビジネスはよく水物だと言われる。当たるも八卦当たらぬも八卦だからだ。

同じくコンテンツ・ビジネスの極めつけとして映画がある。映画も大ヒットと、そうでないものとの差が大きい。
Frozen(アナと雪の女王)は制作費$1.5億に対して、興行収入は$12.7億となった。実に制作費の8.5倍の売上を稼ぎだした。
アベンジャーズなどのマーベルキャラクターものの映画の興行収入も凄まじい。

なぜ、彼らは世界中の国でヒットを連発することが出来るのだろうか?

ハリウッドでは、あらゆるキャラクターやストーリー、そして俳優、声優などが世界各国でどれほどの認知度があり、どれほどの興行収入をあげれるかを計算によって予測している。
実は、脚本、監督、配役、プロダクション予算が決まった時点で、おおよその興行収入をハリウッドは持っているのである。

1つ極端なデータをご紹介したい。

日米中における映画興行収入比較

データの出所は私がいつも愛用しているBox Office Mojoである。
皆さんご存知の「アナと雪の女王」は世界中で大ヒットしたのだが、唯一中国では芳しくなかった。
一方、トランスフォーマー:ロストエイジはまったくの逆。日本では散々な結果に終わっている。
知らない人の方が多いのだが、ロストエイジでは、ドリフト役で渡辺謙が声優を挑戦しているにもかかわらず、日本では売れなかった。

実は、このトランスフォーマー:ロストエイジという作品は、ハリウッドの歴史の中で大きな意味合いを持つ。
それは、史上初めて、ハリウッド映画の興行収入で、中国が世界トップに立った作品だからだ。

この作品がこれほどまでに中国で売れたのには、訳もある。中国系現地ブランドがかなりの広告費を拠出している。その理由としては、自社ブランドが映画の中で出る、自社ブランドに関連する場所・土地が映画の舞台として使われるなど、そうしたプロモーション戦略も手伝って、この結果となっている(その後、当初の予定と違うということで、中国とハリウッドの間で問題が起きたのだが)。

コンテンツは水物である。

しかしながら、「脚本、監督、配役、プロダクション予算が決まった時点で、おおよその興行収入をハリウッドは持っている」という事実もある。
そして、ローカルマーケットに食い込むためには、郷に入っては郷に従え。ローカルに深く根がしたチームが必要となる。

iPhone、Androidの普及によって、スマホゲームマーケットは世界で1つのプラットフォームで戦うことになったと言っても過言ではない(厳密にカウントするとWindowsも入れて3つ?)。
映画の戦場は映画館である。

映画館/iPhone/Androidという1つの戦場で戦わねばならない。

歴史上最大ヒットのアバターは約3000億円。つまり、おおまかに計算して3億人もの人が見た計算となる。これを映画人口の母数と捉えていいだろう。
映画とは、6億時間の消費(3億人*2時間)の奪い合いである。莫大な予算をかけて創りだした映画の元を取るために、世界各国のローカルマーケットの人々の6億時間の使い方を、各国で詳細に分析し、作品に反映していくという作業が必要となる。

ソーシャルゲームの人口は何人だろうか?

世界最大のヒットコンソール、プレイステーション2は世界中で1億5000万台売れた。これをそのまま取り、世界のソーシャルゲーム人口は映画の半分。1億5000万人の人が、世界各国でどういう時間の過ごし方をするのか。

その機微を捉えるチームが必要となる。

これから世界展開を加速しようとする日本のスタートアップ。敵となるアメリカ発のスタートアップは、ハリウッドから仕入れたプロモーション戦略で対抗してくるだろう。
是が非でも、多拠点もしくは、多様なマーケットの実情を知る多国籍なチームが必要となる。

コンテンツビジネスは、当然ながらコンテンツの良し悪しが勝敗を決める。

マリオほどの伝説的なものであれば、一切のローカライズもなく世界を席巻することもあるだろう。だが、基本的には一定のローカライズは必要である。さらに、コンテンツの勝敗は現地プロモーションが大きく左右する。現地消費者の機微や感性というものは、なかなかに外国人には知り得ないものが多い。

そのマーケットに根ざした感覚を持つ経営層を発掘でき、さらにそれに任せるマネジメントスタイルがなければ、日々の勝負に勝つことは難しい。その意味で、gumiのグローバル体制は、その動きに耐えうるものを目指したものと言えるのではないか。

上場直後の下方修正。株をお持ちの方は憤慨されておられる方もいるだろう。私自身は株を持たない第三者であるため、こうしたブログ記事を書けるわけだが。

しかし、

上場時点で売上の半分を海外から稼ぐ。

矢継ぎ早に海外拠点を立ち上げ、現地マーケットを精通する人間を国籍問わず発掘、抜擢し、トップを任せる

この稀有なスタートアップを私は応援していきたい。

ここからの反転攻勢を期待したい。



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・[出典] 
業績下方修正のgumi! しかしソーシャルゲーム海外展開の成功の芽がそこにはある
http://crowdsekai.com/cs1067



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