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2019年のIPO総額世界一「香港スタートアップシーン」に進出する海外勢2位は日本という衝撃

香港貿易発展局は2020年8月20日(木)、日本の起業家等の香港進出をテーマとしたオンラインイベント「香港スタートアップ事情最前線」を開催した。日本企業の海外進出などを支援する日本貿易振興機構(JETRO)との共催で、最新の市場トレンドを中心に、投資家およびアクセラレーターなどスタートアップに関わる情報を提供するというもの。

香港は世界有数の学術・研究機関(QS世界大学ランキング 100位以内に5大学:香港大学、香港科技大学、香港中文大学、香港城市大学、香港理工大学)が集まるだけでなく、政府支援によるVC支援やR&D拠点「香港サイエンス・テクノロジーパーク(香港科技園:HKSTP)」やIT系企業集積地「サイバーポート」といった展開もあり、あり2019年はIPO総額で世界最大規模に到達している。

今、香港では、さまざまな不安材料がありつつも、日本人起業家にとってのチャンスが見え隠れしている状態だ。

LimeHK 共同創業者兼パートナー Michael Yip(マイケル・イップ) 氏


香港の地場アクセラレーター「LimeHK」のマイケル・イップ氏。
起業家として、またメンター・エンジェル投資家として活動。テクノロジーや投信金融領域で10年以上活動。

LimeHKはシード・アーリー期のハンドメイド型アクセラレーターで、主力分野のブロックチェーン、クラウド、AR/VR、フィンテック、デジタルマーケティングなどで日本企業を含む約50社を支援している。

成功者は香港・中国を同時に狙っている

香港にはこの数年で急成長した企業がひしめき合っている、マイケル氏が強調するのは「多数のユニコーン企業が香港のみならず中国企業との関係構築を狙っているというところ。また、香港で起業もしくは上場を行っている」という点も上げられる。

例えば、「Tencent」は2004年に香港で上場。

Alibabaも2007年に香港で上場(その後、上場廃止し、2014年に米ニューヨーク証券取引所に上場)。同グループの「Ant Financial」(Alipayからリブランディング)は香港と上海での上場を目指しており、その評価額は2000億ドルとみられている。

スマホなどで日本でも知られるXiaomi(シャオミ)は2018年7月に香港で上場。

グルメ口コミサイト「美団点評(Meituan Dianping)」も2018年9月に香港で上場。

ドローンなどで日本でもファンが多い「DJI」の創業者Wang Tao氏は香港で教育を受け、香港で企業。2021年にも香港で上場するとみられている。

香港で起業するのは1位中国・2位日本という衝撃

こうした香港・中国での起業や上場のストーリーに「日本人は関われないのでは?」と感じる人も多いかも知れない。しかし、香港に進出する海外勢のトップは、いわずもがな中国が占めるものの、2位は日本なのだ。

また、創業者の3分の1位が海外勢。Lime HKは、日本のアクセラレーター「01Booster」とも戦略的パートナーシップを結んでいる。JETROが世界で展開する「グローバル・アクセラレーション・ハブ」とも提携済みで、日本か香港への創業にはさまざまなサポートが用意されている。

香港の人口は747万人。そもそも香港は法人税などの安さや立地・フリーポートなどで注目されているだけでなく、香港政府が自らアクセラレーション施設やInvest HKといったイベントを展開したり、RISE(WebSummitsが主催)など世界の主力コミュニティイベントを招致するなど、この3〜4年だけでもスタートアップシーンに対する支援策はかなりの充実ぶりだ。

現時点で香港ベースのスタートアップとして目立つのはハードウェア系のように見えるがECやソーシャル、EdTech、フィンテック、広告、ソフトウェアそれぞれが独自のエコシステムとして成長しており、政府は重点分野としてこれまでフォーカスしてきたフィンテックに加え、さらに別のレイヤーであるバイオ、人工知能(AI)、スマートシティにも注力してきている。

そうした多様なエコシステムの成熟にあわせ、現在ではスカイプやFacebook、Wazeなどに投資をしてきた「Horizons Ventures」、「IDG Capital Partners」、「FRESCO Capital」、「Orchid Asia Group」、「Red Chapel Advisors」、日本への参入などで注目されいてる「Sequoia Capital」、「QUIMING Venture Partners」、「1823 Ventures」などが香港で投資活動を展開している。VCに帯する政府の支援も用意されている。2019年初頭の時点で、香港で活動しているVC(Venture Capital)は400以上で、運営資産総額は1.5兆ドルとなっている。

こうしたVCおよびCVC(コーポレートVC)とのコンタクトは開かれており、まさに今(2020年8月17日(月)~31日(月))、香港サイエンスパーク(HKSTP)で現地投資家と起業家とのオンラインマッチングイベントが展開されている(日本人起業家も参加している)。

LimeHK Michael Yip(マイケル・イップ) 氏が感じる日本スタートアップの課題

Lime HKのMichael Yip(マイケル・イップ) 氏は、日本起業家の香港進出について「良い点」と「悪い点」があると語る。

良い点は、香港の起業家と日本の起業家には共通店があり協力できるところがあるというもの。日本人のプロ気質が信頼を得るために重要だという。

一方で日本人起業家の悪い点として「文化の違いを重視する必要がある」と指摘する。日本人起業家は“良いか悪いか”をレビューしたがる傾向がある。しかし、急成長を遂げる香港市場でそれにこだわってはスピード感が失われる。

こうした文化への理解は、英語や中国語を使うことも同じ。香港に入るためには英語や中国語を全て理解するかは別として、言語も一つの文化として理解する必要があると話した。

JETROグローバル・アクセラレーション・ハブをつなぐ連載企画

こうした香港の最新事情にあわせ、日本貿易振興機構(ジェトロ) 香港事務所 経済調査・企業支援部長 吉田和仁 氏に直接、日本人起業家からの質問にお答え頂くオンラインイベントを開催する。

日時は以下の通りで、イベントのチケットページで質問も受け付ける。後日アーカイブも配信する予定だ。

・日時:2020年8月25日(火) 17時〜18時

【関連URL】
・[イベント] 香港スタートアップシーンのすべて

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