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「Amazon.co.jp オンデマンド本」がローソン店頭で販売、書籍の売り方が変わる可能性も 【@maskin】

 電子書籍の取扱い率は紙のものに比べるとまだまだ小さいものの、成長を続けていると見られてており、落ち込み続ける出版業界は電子書籍関連の領域によって牽引されるのではないか?という希望すら感じられる(「出版不況は終わった? 最新データを見てわかること 」(朝日新聞社デジタル本部 林智彦 氏))。

 大きな問題は、ただでさえ敷居が低くなった書籍出版が、電子書籍の出版システムの一般開放により誰でも気軽に出版できるようになったことのマイナスの面。購入する価値がないようなものが多く、紙の書籍を出版するというレベルには到達できないものが多く出てきている。

 一方で、もちろん、うならされるような作品もあるわけで、ECのレビューや売上のシステムに勝ち抜くことで、未知の作家や作品を発掘できる面もある。このことは、電子書籍の販売システムがより大きな紙の書籍販売への登竜門として機能するという期待感へとつながる。

 そんな中、デジタルコンテンツから紙の書籍の店頭販売へ。その検証実験とも言えるプロジェクト「Amazon.co.jpオンデマンド本セレクト」が2016年5月14日にスタートした。


実際の「Amazon.co.jpオンデマンド本セレクト」コーナー。雑誌コーナーに特設ラックが用意される。Amazon.co.jpのバナーが目につく。某ローソン店舗で2016年5月14日に撮影

 「Amazon.co.jpオンデマンド本セレクト」は、顧客から注文があった書籍を印刷して出荷するサービス「アマゾン・プリント・オン・デマンド(POD)」で人気だったタイトルを選び、紙の書籍としてローソンの6000店舗で陳列販売するという取り組みだ。

 今回のセレクトはヒット作6作品で、タイトルは「心配ぐせをなおせばすべてが思いとおりになる」「スティーブ・ジョブズの言葉」「ゴルフは「自律神経力」で確実に10打縮まる!」「知って得する相続税」「タモリさんに学ぶ 話がとぎれない 雑談の技術」「指名される技術」。

コンビニでの実売率をあげられるか

この取り組みの仕掛け人であるゴマブックス 電子書籍事業部の小玉裕介 氏は手ごたえを感じている。

 「作品選定には、まずPODの人気タイトルである点、そして電子書籍でも上位ランクインしたことのある作品を選んでいます。

 ただネットとリアルとでは購買行動が違うと思うのでネットでの実績がそのまま通用するとは思っていなかったのですが、北関東の100店舗でトライアルを実施した際にかなり実売率が良かったので今回6000店舗まで拡大した形になります」。

 小玉氏によれば、コンビニでの書籍の実売率は平均3-4割と言われているようで、それに対し「Amazon.co.jpオンデマンド本セレクト」では、倍の6-7割を目ざしているとのこと。今回のローソン店舗での取り組みの実績次第で、拡大していく考えもあるようだ。小さな電子書籍という市場から、大きな紙の書籍の市場へのジャンプ。今後どうなるか注目される。

(補足訂正とお詫び)
「Amazon.co.jpオンデマンド本セレクト」においてローソンとアマゾン両者が提携した事実はありません。それに伴い表現などの修正や調整を行いました。



【関連URL】
・Amazonオンデマンドセレクト本シリーズ

http://www.lawson.co.jp/recommend/original/books/

蛇足:僕はこう思ったッス
 仕掛け人であるゴマブックスの小玉氏は「オンライン販売&POD出版の人気が、店頭での売上と直結するかどうかはわからない」と話している。こういった話はこれまで暗黙の常識と考えられてきたが、実際は違うということがわかったということは大きなトピック。

電子書籍からオンデマンド(書籍になっていないものもオンデマンドで販売は可能)、オンデマンドからコンビニ、そしてコンビニから書店やその他の販売店と販路が拡大する絵が描けるだけでなく、書き手にとっても「結局書籍にするには、編集者にかけあうか、名前を売るしか無い」という紙の時代と変わらないリスク回避というかコンサバティブな状況から脱することが可能となる。もちろんそこには敷居の低さと比例する品質低下の問題は介在し続けるが、登竜門の仕組みさえ確立されてゆけば、書籍というものの売り方そのものの体質が変容するのではないかという期待もある。

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