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とんでもない店「サトーカメラ」が切り拓く #繁盛のつくり方 [新刊3/9発売]

私たちはいつしか“効率化”を最優先にすることを当然のものとして考えるようになってしまいました。「ターゲットを絞り込み、データを元にPDCA(Plan – Do- Check – Action)サイクルをぶん回せば何事だって良い方向に向かう」。誰もが「常識でしょ?」と思いがちな暗黙ルールを鵜呑みにしている人も多いのではないでしょうか?

ところが、サトーカメラ  代表取締役専務 佐藤勝人 氏はこう言います。「例えば、できません・ありません・やりません、と効率を追い求め、「60−70歳の人はスマホプリントなんかしない」等と決めつけるようなことをすると大きな商機を見過ごすことになる」と。

サトーカメラは、人口およそ200万人の栃木県だけにターゲットを絞っているチェーン店。かつては売り上げ向上と効率化のために「できません・やれません・ありません」と断ってばかりの時代もあったのですが、「お客様に教えられた一つ一つの体験を知識化し、仕組み化し、スタッフに教え、全店舗で実践しいく。そんな「顧客一体化戦略」を徹底することで、全国屈指の販売力を持つ企業へと変わったのです。

そんな大手がひしめく栃木市場でそんな究極のエリアマーケティングを成し遂げた栃木県のサトーカメラ成長の立役者 佐藤勝人さんの10冊目の経営本「モノが売れない時代の「繁盛」のつくり方 ―新しいマーケットを生み出す「顧客一体化戦略」が3月9日に発売となります。この記事は本書の内容に触れながらサトーカメラの強さを紐解いていきたいと思います。

地域を絞り全国平均3倍もの消費を生み出す

サトーカメラは、人口およそ200万人の栃木県だけにターゲットを絞っているチェーン店。オープン10年たらずで全国のカメラ業界売り上げトップ10入り。量販店激戦区である栃木県で80%以上のシェアを誇り、20年近くシェアNo1。全国からカメラメーカーなどがしばしば視察にくるばかりか、海外展開の協力依頼までくるほどの存在。

特にサトーカメラ成長の立役者 サトーカメラ  代表取締役専務 佐藤勝人 氏はコンサルタントとして全国から引っ張りだこという状況です。

サトーカメラの存在は、栃木県民のカメラに関する付き合い方すら変えました。デジカメからスマホまでプリントしてデコレーションしたりアルバムにする機会が増加。18店舗あるサトーカメラの店舗は、平日土日にかかわらずいつも賑わっているんです。

結果として現在の栃木県のカメラ・レンズ・写真の分野での売り上げは全国平均の3倍にまで達しています。

なぜ、サトーカメラはすごいのか?

カメラ市場というと、一部のプロシューマー(一般消費者ながらプロ並みの知識と関心を持っている人)が売り上げを牽引するという一面がありますが、サトーカメラはいわゆる素人の一般の人に対するカメラ浸透&活用にかなり力をいれています。

高齢の方や女性、一見スマホすら使えないように見える人は「プリントなんかしない」と思われがちです。おそらくメーカーもそういった層を対象とした商品を作ることも考えにくい。ところが、サトーカメラは、2時間接客は当たり前、どんな顧客の話もじっくり聞いてくれるのです。

日経ビジネス誌の特集記事(参考「栃木最強!サトーカメラの不思議な経営|日経ビジネス」)では「接客に5時間かけるということもある」と伝えられていますが、決して無駄を創っているわけではありません。この記事によると粗利率44%、しっかり利益を確保する仕組みもできあがっているのです。

クリエイティブで楽しそうなスタッフ

もう一つサトーカメラの特徴を示すのが「スタッフ」といえます。金髪茶髪は当たり前、自由な服装で店内を闊歩するスタッフは、みんな活力にみなぎっているのです。

感覚的には、東京などでしばしばあるような意識が高い系の交流会みたいなアクティブさ、しかし、彼らが売れ筋商品を一方的に勧めてくることはありません。むしろ「こういうレンズを新調してもいいかな」と購入の意思を伝えているのに、「んー、これはこれで充分使えますよ」と返してきます。

正直すぎる。この感覚は衝撃的でした。彼らは適正な商品を適正価格で進めるのです。つい最近も東京の大手カメラ店で「こんなことも知らないの」的な顔をされたばかりでしたので、裏も表もない等身大のスタッフ達にいつしか顧客も「自分もカメラ使いになれるのかも」と自信を持てるようになったようにも思います。

社員総会は一般参加可能

こうした営業スタイルのコンセプトを体現しているのが年に2回開催される「サトカメエキサイティング」というイベントです。なんとこちら、社員総会に一般参加が可能というもの。

実際に参加した筆者は、サトーカメラの社内の雰囲気や経営における大義を知り、食事会では某店舗のスタッフと同席し、カメラのこととか経営・営業のことをざっくばらんに話すことできました。もはや、店と客という関係ではない関係であると感じ、かつサトーカメラという企業体の未来に大いに期待を感じるに至ったのです。

価値創造

本日2018年3月9日に発売となったサトーカメラ 佐藤勝人さん10冊目となる書籍「モノが売れない時代の「繁盛」のつくり方 ―新しいマーケットを生み出す「顧客一体化戦略」」は小売店舗に絞った話ですが、私はIT業界を含め、多くのスタートアップ経営者にお勧めしたいと思います。

なぜなら、IT&ネットは、顧客と事業者の距離を無くし、より有意義な関係を構築できる可能性に満ちあふれているからです。高性能なスマホの普及が進み、もっともっと顧客との関係を濃密にできるはずだし、より豊かな体験ができずはず。

しかしながら今はどうでしょうか?ネットビジネス趨勢の時代になれど、薄利多売、みんな気にいるかもしれないけと小さく薄っぺらなものか、チャリンチャリンとお金ばかりかかるものばかり。顧客としてサト−カメラ店舗以上の体験ができるものに出逢ったことがありません。

ネットだからこそニッチに逃げず、もっと顧客目線のサービスが生まれていいのではないか?そんなことを感じる一冊でした。

【関連URL】
・佐藤 勝人 の モノが売れない時代の「繁盛」のつくり方 ―新しいマーケットを生み出す「顧客一体化戦略」― (DOBOOKS)
http://amzn.to/2FqTP4W
・【公式】サトーカメラ「想い出をキレイに一生残すために」
http://www.satocame.com

蛇足:僕はこう思ったッス
 リッチな顧客体験というと米ザッポスを思い浮かべる人もいると思う。ザッポスといえばスタッフに与えられた大きな裁量がポイント。そこはサトーカメラとは違いますが、組織そのものの構造はサトーカメラでの体験の方が一歩抜きん出てるような気がする。ただ、彼らはこれまで栃木から出なかった。理由は地域で一番になることにこだわったから。ただ、その手腕は全国区では当たり前のように知られていて、今や大手の海外展開も支援するほど。わざわざ栃木に学びに来る人も多い。そして、サトーカメラは2022年に向け、現在の国内18店舗から100店舗体制へ。また、アジア市場にも10〜100社のパートナーと共に1000店舗体制へと拡大することを明らか(satokame2018)にしている。これからのサトーカメラに注目したいと思う。

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