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アメリカのデザイン学校、Parsonsの学生が挑戦する、日本の伝統文化とIoTのコラボレーション

今年5月末、ニューヨークにある美術専門学校、Parsons School of Design(パーソンズ美術大学)が提供しているDesign and Technology(デザイン・アンド・テクノロジー学科(通称DT))に所属する学生が授業の一環としてサマーキャンプを行うために飛騨市を訪れていた。IoTやロボットなど新しいテクノロジー分野の発展と共にデザインの追求をしてきたParsons DTの学生が、なぜ飛騨市をキャンプ地に選んだのか。
筆者が「飛騨」という地名から思い浮かべるものは白川郷や「古い町並み」(さんまち通り)など伝統的建造物が多く残る観光名所ばかりで、IoTやロボットなど最先端のテクノロジーを連想するのはとても難しい。飛騨市で学生達は何をしているのか?実際に彼らのサマーキャンプを見学させてもらった。

Smart Craft Studioへの参加

Smart Craft Studio(スマート・クラフト・スタジオ)は、組み木など飛騨の伝統的木工技術とIoTを組み合わせたプロダクトの商品化を通じて社会にインパクトを与えていくことを目的としているイノベーションキャンプ。海外からは他にもUniversity of Toronto (トロント大学)、National Chiao Tung University(国立交通大学)の学生が参加した。


写真:Smart Craft Studeioが開催されたFab Cafe Hidaにて

Smart Craft Studioは、飛騨市に古くから伝わる組み木などの職人文化や、それと共に栄えてきた林業、そして森林の自然保護における問題を、新しいテクノロジーを取り入れることによって解決できないかと考え発足した。Smart Craft Studio開催に携わったFab Cafe TaipeiのオーナーTim Wong(ティム・ウォン)氏によると、この「組み木とIoTのコラボレーション」も解決していくきっかけになってほしいと話している。
釘を一切使用しない建築や家具などを作る組み木の技術は、日本人の私から見てもとても珍しい。その技に魅了されたLi教授はテクノロジーを取り入れることによって創造される新しい可能性を追求したいと思い、サマーキャンプの一環としてSmart Craft Studioへの参加を提案したそうだ。
参加した学生は、キャンプ前半では飛騨の森と人々の共存や植木や伐採について学んだ。そこから得た知識を活用し、組み木とIoT技術で人々が抱える問題に向き合い解決するアイデアを形にするためだ。

6月18日、学生による作品発表が行われた。

組み木と生け花をコラボさせ、古風な「雰囲気」を楽しむために提案された作品。天井から吊るされた木々にはタッチセンサーとライトが取り付けられており、触れるとライトアップされる仕組みだ。側面からだけでなく、下からの眺めも草木に囲まれて寝そべっているような感覚になりとても心地良かった。


飛騨市周辺に生息しているクマについて知ってもらうことを目的に作られた作品。飛騨の自然風景が印刷されたパーツを、ユーザーがパズル感覚でクマの模型を組み立てることができる。更に、アプリ上に表示されたクマに触れると、その触れている部分に合わせてもけいに取り付けられたライトが光る仕組みになっている。なぜアプリから操作するのかと質問すると、「実物のクマに触ったら危険だから」と注意も促しているようだ。


この2作品は、組み木の技術を取り入れて作られたベンチとほおずきの形をしたランプ。これらが設置された場所で専用のアプリを操作すると、その地域で過去に起こった出来事や、これから開催されるイベントなどの案内情報を収集することができる。他言語で情報発信ができれば、飛騨市だけでなくオリンピックに向けて海外からの訪問客が増える見込みのある日本各地で活用されるアイデアだと思った。

作品詳細はこちらをご参照ください。

「期待をはるかに上回るキャンプだった」

今回のサマーキャンプでDTの学生を引率したKyle Li教授は、学生には人から聴いて学ぶだけでなく、実際に手を動かし、学びから得たアイデアを創る体験をしてほしかったと言う。組み木とテクノロジーをコラボさせるこの取り組みは、ほんの第一歩を踏み出したばかりだ。しかし、学生に通常の授業にはない「学び、体験し、そしてアイデアを創る」というプロセスを踏む価値の素晴らしさを、 Smart Craft Studioに参加することによって体感してもらえることができたようだ。
Li教授は来年も飛騨でサマーキャンプを行いたいと宣言した。

(左)Kyle Li教授 (右)Tim Wong氏

Parsons School of Designについて

Parsons School of Design は、一般的にParsons(パーソンズ)として呼び親しまれ、設立から今年でちょうど120年を迎える。ファイン・アートではノーマン・ロックウェル、ファッションではアナ・スイ、マーク・ジェイコブスなどの著名人を輩出した伝統あるデザイン学校だが、近年、デジタルやロボットなど新しいテクノロジーの発展で必要とされるデザイン教育にも力を入れている。Li教授と今回のサマーキャンプに参加した学生が所属するDTは、インタラクション、フィジカル・コンピューティング、ゲーム、ニュー・メディア・アートなど最新技術を活用したデザインを学ぶカリキュラムが提供され、これまでにApple Inc.、NASA、Intelなどの企業と産学協同プロジェクトも多数行っている。


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