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トップマーケター 資生堂 音部大輔 氏の限定セッション潜入レポート

Friday Night Session in Roppongi−−−−−−
6月某日、金曜日夜の六本木に、厳選された16名のマーケッターが集った。

業界関係者であればどこかで名前を聞いたことがある人たちばかり、また半分以上は広告主の責任者たちだ。

その16名が、日本を代表するトップマーケターである資生堂 音部大輔氏を中心に、8時間に渡り「勝てる戦略とはなにか?」について、考え、議論し、意見をぶつけ合った。

「戦略」について徹底的に議論

Friday Night Sessionは、音部氏がP&G時代に行った講座の名前に由来している。今回六本木で開催された「Friday Night Session in Roppongi」は、音部氏の著書『なぜ「戦略」で差がつくのか。-戦略思考でマーケティングは強くなる-』(宣伝会議 刊)を教科書に、徹底的に「戦略」について理解する場として誕生した。

筆者は運営側の立場で今回の限定セッションに立ちあうことができた。今回の参加者たちが ”ラーニング” として心に強く残ったと指摘した内容は、広く多くの人にもあてはまる箇所であると感じる。そこで、セッション中に特に盛り上がった部分について、ごく一部ではあるが抜粋して記載したい。少しでも戦略立案成功のヒントにしてもらえればと思う。


講師:資生堂 音部大輔氏 — 関西学院大学商学部卒業後、P&Gジャパンのマーケティング本部に入社。17年間の在籍中、ブランドマネジャー、マーケティングディレクターとしてアリエール、ファブリーズ、アテント、パンパースなどのブランドマネジメントを経て、US本社セントラルチームでイノベーションに関する知識創造プロジェクトのマーケティングサイドを主導。帰国後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂などさまざまな文化背景、製品分野の企業でブランドマネジメントやマーケティング組織育成を指揮。2016年、CNETJapanのCMO Awardを資生堂ジャパンCMOとして受賞。博士(経営学 神戸大学)

1. 80%のマーケターが気づくことなら間違いない。でも勝てない

Sessionの様子。少人数で机を囲み、インタラクティブなやり取りが続く。

市場調査を綿密に行い、しっかり描いた戦略。

もちろん理論的にも正しい。でも成功しないのはなぜだろう。

よく考えれば当たり前だが、8割の人が思いつくことでは勝てない。

緻密な調査を行った上で、2割の意外性を攻めるクリエイティビティが必要である。視点を変えて、正しい目的や資源を見出すことが重要だ。

「正しい目的や資源を見出す?」と、言葉だけ聞くととても難しそうだが、方法論も用意されている。

奇抜なアイディアを生み出す天才である必要はないのだ。視点を変えるテクニックを身につければ、誰でも普通の先へジャンプすることができる。

2. そのビジネスの結果、得られたラーニングは何なのか

仕事や施策などのレビューを行う場合、取り組みの内容や成果を報告し合うことはよくある。◯◯年計画の前段や、月初会議などでの前月の結果報告などがそれにあたる。

だが、その際、「該当期間に何を新しく学んだか?」について触れているだろうか。

結果の数字だけ並べ、そこに次回への抱負をそえて、レビューを終えていないだろうか。

もしそうだとしたら、いささか残念だ。レビューは組織が成長するための大事な機会でもある。

「新しく学んだこと(ラーニング)」こそが、昨日できなかったことを明日できるようにさせる。

組織と人を前進させる。

3. ビジネスではポエムを書かない

ビジネスの文書は解釈の余地なく書かれていると、効率がいい。

対して、解釈の余地しかない文章はポエム(詩)と分類され、非効率的だ。

だが、そういうポエム的な表現が目的設定においても散見される。

その曖昧さゆえに、複数のステークホルダー間に目的を共有したつもりでも、混乱を共有することになりかねない。

メンバーが協調して効果的に戦略を実行する上では、解釈の余地を排除することが重要である。

新入社員から超ベテラン役員まで、関与する全員が同じ理解をするような、解釈の余地ない目的設定をすることは、安定した戦略の第一歩だ。

さまざまな視点からの議論を通して、効果的な目的の設定や資源の解釈を実践することができる。

4. 他人の成功事例は、ほとんど自分のビジネスの役に立たない

書籍では、いわゆる「事例」にはほとんど触れられていない。

汎用性の高い概念を学ぶことは、、自身の経験を事例として結びつけやすく、より深く内容を習得する機会になるからだ。

セッションでは、4つのカテゴリ「目的の再解釈」「資源の再解釈」「戦略の効用」「戦略の実行」について、それぞれの参加者が自分事例を持ち寄って議論を行った。

文脈や背景も含めた多くの「自分事例」に触れることは、理解の限界を大きく広げてくれるだろう。

(音部氏を交えて、グループ毎にワークを行う。交わされる各社の事例は、生々しいものが多く、それだけでも一聞の価値がある。)

また、ひたすら個人プレイである読書においては、理解したつもり病が蔓延しがちだ。

その上でも、インプットしたことをもとにアウトプットしてみることは、自身の理解度もはかることができる。

しかも、別の参加者や著者との議論を通してその理解を深め知見を広げることができる。

たとえば「戦略」をテーマに限るならば、「それって目的の再解釈じゃなくて、資源の再解釈じゃないか?だから2ラウンド目では、大きな資源をもって臨めたのでは?」

そんなことを議論し合いながら、学び進められたら有効だろう。

(了)

新TechWave塾とは?
人気スピーカーを講師に招き、少数精鋭の集中講義を行う。塾のポイントは、参加者の質の高さ、それゆえの参加者間での連携、また参加者限定SNSプラットホームを活用した講師との密なコミュニケーションだ。

【ご案内】
最後に朗報です。この少数精鋭「Friday Night Session in Roppongi」、第二回を9月開講決定。参加希望者はぜひ、名前と自己紹介をそえて、事務局(school@techwave.jp)まで応募ください。こちらへの参加が難しい方は、本を二度三度読み通した上でぜひ、自分事例を周りで議論していただければと思います。
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