サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

Rising Expo 2014 in jakarta 1位はバーチャルクレジットカードの「matchmove」【@itmsc】


[読了時間: 4分]

本日(2014/6/17)ジャカルタのグランドハイアットホテルで開催されたRising Expo (South East Asia Round)が16時(日本時間の18時)に終了した。

投票1位と個人的ベスト3

参加者の投票で選ばれた第1位はバーチャルクレジットカードのmatchmoveとなった。このサービスは『世界に5億人以上いる”クレジットカードを持っていないスマートフォンユーザー”にバーチャルなクレジットカードを発行する』という内容である(早速使ってみようとサイトを訪れたが、今のところシンガポール国民に限定したサービスになっているようだ)


参加者として僕も投票をして3つのサービスを選んだが、matchmoveには丸をつけなかった。確かにイノベーティブなサービスだ。誤解を恐れずに言えば、参加サービスの中で唯一イノベーティブなサービスだったと思う。他のサービスは「シリコンバレーでいえば○○」とか「日本の○○のベトナム版」といったものが多かった。

なぜ「他のサービス」に丸をつけたのだろうか?それは「他のサービス」が「東南アジアで今仕掛けるならコレ!」というものであり、僕が今日のイベントで見たかったモノがそれだったからだ。

惜しくも2位となったVIP PLAZAには丸をつけたのだが、このサービスはGILTやmonocoといったファッション系フラッシュマーケティングのインドネシア版である。アイディアとして新しいわけではないが、インドネシアの人々がどれくらいの購買力をもっていて、どんな指向を持っているのかなどが分析されていて、ビジネスプランの細部がきっちりと磨かれている印象だった。CEOのキム・テソン氏は日本生まれで楽天出身。メイドインジャパンの品質はビジネスプランにも現れるのかな、と感心してしまった。

Candyも日本人が立ち上げたサービスであり、インドネシアで生活する日本人として「なるほど!」と思う仕組みだった。ユーザーはアプリダウンロードやアンケート回答などの対価として「AirTime」というスマートフォンの無料通信を獲得できるプラットフォームなのだが「AirTime」という考え方が絶妙なのだ。

インドネシアではスマホを使う時、まずは数百円相当のSIMカードを買う。そしてSIMカードをスマホに挿入したら「プルサ」という電子マネーのようなものを購入する。この「プルサ」がイコール「AirTime」になるわけなのだが、インドネシアで生活する人にとって「プルサ」はお金に限りなく近いのである。コンビニでも個人商店でもたくさんの店でプルサを気軽に購入できる。日本でいうところの「スイカ」をイメージすると良いかもしれない。簡単なアンケートに応えるとスイカ残高が100円増えるとなれば、多くのユーザーが集まりそうだ。

もう1つ個人的に興味を引かれたサービスはインドネシアのウェディング系サービスのbridestoryである。これは単にウェディングの準備をするカップルと事業者をマッチングするサービスなのだが、結婚というライフイベントに関して「インドネシアはまだまだブルーオーシャンだ!」と言い切っていて、それが本当なら平均年齢が29歳と若いこの国で、このサービスは大きく伸びるかもしれない、と感じることができた。

東南アジアで勝つのは誰か?

さて「東南アジアで勝つのは誰か?」という問いをもって、いろいろな参加者と話してみたが、分かってきたことを整理しておこう。まず今回のプレゼンターをいくつかのパターンに分けてみたい。

(1)日本のベンチャー出身
Candy(YoYo)の深田氏はDeNA出身、VIP PLAZAのキム・テソン氏は楽天出身である。日本のベンチャーで学び、あるいは人脈を作り、東南アジアを自分のステージと決めて起業しているようだ。彼らのサービスが成長していくならば、その後に続く起業家も増えていくだろう。

(2)オーストラリアから帰国組
bridestoryのCEOをはじめ、何人かの起業家から「オーストラリアの大学で学び、自国へ戻ってきて起業した」と聞いた。インドネシアに住んでみて気がついたのだが、東南アジアとオーストラリアは思った以上に近い。これから中流層が増える東南アジアからオーストラリアへの留学は増えるだろうし、英語、ビジネス、文化を学び、自国へ戻って起業するというパターンもまた増えそうだ。

(3)シリアルアントレプレナー
価格比較サイトのPriceza, 1位を獲得したmatchmoveについてはCEOが既に何度か起業とexitを経験しているようである。経験豊かなシリアルアントレプレナーも東南アジアのプレーヤーとして見過ごせない存在である。

(4)シリコンバレーからも少々
1社だけであったが、シリコンバレーで生まれてマイクロソフトに買収されたYammer出身のCEOもいた。

(5)そしてベトナムはベトナム
今回はベトナム発のサービスがいくつかあったが、グルメサイトであるとか、通販サイトであるとか、見た感じ普通のサービスだった。しかし順調に成長はしているし、あまり海外展開の必要性も感じていないような印象でもある。もしかするとベトナムでは何らかの理由で海外からの参入が難しい上に、経済の成長が著しいという、ベトナム国内のスタートアップにとって良い環境が整っているのかもしれない。

起業家をパターン分けしたところで「このパターンが最強です!」みたいなものはない。結局は「東南アジアで勝つのは誰か、それは国や市場によって違うでしょう」という身もふたもない結論になってしまうのだが、思った以上にいろいろなスタートアップが生まれつつある状況だと分かった。東南アジアの環境に特化して独自の進化をとげ、グローバルな大手プレーヤーの参入があってもそれを退けるようなプレーヤーが彼らの中から出てくるのかもしれない。個人的には日本チームに勝ってもらいたいし、そのサポートもしたいと思う。

とにかく今日は東南アジアの空気を目一杯吸いこんだような一日だった。

モバイルバージョンを終了