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人工知能SENSYによるバリューチェーン最適化がもうすぐ実現、運営のカラフル・ボードがアパレル大手らからシリーズB 8億円調達

「市場に求められるものを開発し販売することで、不良在庫を解消することができるのではないか。そうしたマーチャンダイジング(商品政策)を筆頭としたバリューチェーン全体をテクノロジーを使って最適化したい」。2011年の創業間もないカラフル・ボード渡辺祐樹社長はそう語りました。彼は人工知能科学者でもあり、一人の野心家でもあります。


カラフル・ボード渡辺氏が創業前から関与しているアパレル分野でのバリューチェーンをざっくり説明するとこのような流れになります。

「商品開発」→「マーチャンダイジング(商品政策)」→「マーケティング」→「販売」→「カスタマーサービス」

これまで業界ベテランらによる経験値や直感に依存する部分がありました。渡辺氏はこのプロセスに人工知能「SENSY」を導入することで効率化を計ろうと考えています。そして遂にアパレル分野でのビジネス・バリューチェーンを効率化する次世代エコシステムがひとたびの完成形に向かいそうだといいます。

アパレル3社を含む8億円超の資金調達を実施

SENSYはこれまで消費者向けの人工知能アプリ、アプリを使った接客の実証実験などを展開してきましたが、こうした点と点とをつなぐ大きな発表が本日行われました。

カラフル・ボードは2017年4月3日、「ストレス対策スーツ」などの新機能商品や紳士服チェーンを展開するはるやまホールディングス」のグループ会社のミック、「ナノ・ユニバース」など37のブランドと約1400の店舗とECを有するTSIホールディングス(以下TSI)、アパレル系POSおよび物流を持つヴィンクス(以下VINX)の3社を引受先とする第三者割当増資、ならびに日本政策金融公庫の資本制ローン及び新株予約権付融資制度を活用し総額8億円超の資金調達を実施したと発表しました。

これにより「はるやまホールディングス」「TSI」「VINX」の3社は、カラフル・ボードの戦略的パートナーとしての業務提携も発表しています。各社は商品企画やマーケティング、マーチャンダイジング、POSデータとの連携による経営効率の改善など、カラフル・ボードの人工知能「SENSY」を活用した取り組みを展開することでバリューチェーン全体の進化に貢献していく考えです。

これまで人工知能「SENSY」は、消費者向けに商品提案ができる人工知能Botや消費者が所有するファッションアイテムを登録し新作とのコーディネートを確かめられるアプリ「Sensy Closet」などのアプリを始め、接客支援やカスタマーサポートの分野まで幅広く導入を進めてきました。

消費者との幅広いコンタクトポイントを構築し、顧客一人一人ににあった商品提案から販売、カスタマーケアの高度化を実現し、最終的にこのシステム全体の精度を向上しようと考えているというわけです。そして、今回、ブランドから流通、店舗・EC、POS・CRMを展開する各社と提携することでアパレル業界でその次世代システムの完成系がみえつつあるのです。

人工知能が作るパーソナライズDMの効果

では、人工知能はどういった成果を導き出すのでしょうか。最たる例が「はるやまホールディングス」と展開してきた、顧客一人一人に最適な商品を提案するダイレクトメール「パーソナライズDM」です。

2016年から実施してきたこの取り組みは、人工知能「SENSY」のエンジンを使い、顧客一人一人に最適な内容を送信するというもので、通常のDMと比較すると来場者が58.7%多くなるといいます。売上もそれにおおむね比例する形で増加しているそうです。

ここにSENSYがすでに展開している商品提案やPOSデータ、接客、そして需要予測などさまざまな取り組みで蓄積され続けているデータを活用し、さらに精度をあげるだけでなく、顧客との接点(UIなど)を改善することで、最終的な目標である不良在庫の削減や機会損失の提言、オペレーションの改善を実現しようとしているというわけです。

こうしたアパレル分野での取り組みは2017年内にも完成に近づくとみられています。また、現在すでに実証実験が進んでいるワインの提案といった食やそれ以外の分野にも、徐々に展開しようということです。

【関連URL】
・人工知能「SENSY」
http://sensy.jp
・カラフル・ボード株式会社
http://www.colorful-board.com

蛇足:僕はこう思ったッス
 人工知能は一種のブームともいえる段階にあると思うのだが、結局のところデータのインプットと解析分析からのアウトプットという組み合わせがどういった(経済)活動に効果を発揮するかという話が重要になる。カラフル・ボードの場合は、そもそもがアパレル業界のバリューチェーン最適化を人工知能を活用することで実現しようというところでゴールが明確なのが強い。かつ、ボットやアプリなど、消費者コンタクトポイントづくりが、データのインプットに貢献するモデルになっている。このサイクルが崩れない限り、今後、近い将来SENSYプラットフォーム全体のパワーは急成長する可能性がある。
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