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スマホドリブンが生み出す新たなプラットフォーマーによる新時代【冨田 @tommygfx90】


[読了時間: 4分]

昨年の12月10日にリリースされるや、その使い勝手と網羅的なニュースコンテンツによって爆発的にニュースリーダーアプリとしてユーザー数を増やし続けるSmartNews(スマートニュース)。そんなSmartNewsを提供する株式会社ゴクロがリリース約半年を待たずに新たな展開を発表しました。

株式会社ゴクロ、「SmartNews」にメディアパートナー専用コンテンツチャンネルを開設(5月30日)
株式会社ゴクロ、メディア各社との協業を本格的に開始 ~ SmartNewsアプリの情報取得アーキテクチャを同時に改訂(5月30日)

リリースの要点をシンプルにまとめると、

●今まで一方的にTwitter上のつぶやきから抽出していたニュースを、正式に11社15媒体と協業関係を構築
●さらにアプリ内にタブ化される専用チャンネル「チャンネルプラス」を開始
●パートナーとの健全な協業をドライブ・サポートするために元アイティメディア代表取締役の藤村厚夫氏を招聘

スマートフォン時代のニュースコンテンツの入り口を抑え、サービス的にも体制的にもニュースプラットフォームとしての足場作りを始めたという感じでしょうか。まだまだYahoo!ニュース砲にはかないませんが、SmartNews砲が徐々にその威力を増し、スマートフォンから各ニュースメディアへのトラフィック誘導において重要なフロントエンドを抑えつつあるようです。

インターネットへのアクセスがもの凄い勢いでPCからスマホ・モバイルへ移行しています。特定の分野での日常生活に寄り添うユーザー体験をスマホドリブンで急拡大させネットへの入り口を抑えることによって、その分野における圧倒的なトラフィック力を持つことが業界の構造変化と新たなスマホプラットフォーマーの誕生という潮流を生み出しています

スマホ時代の新たな競争優位性

このスマホドリブンによるサービスの台頭によって、ガラケーでは起きなかった3つのファクターによる新たな競争優位性が明確になってきました。

①アプリシフト

Webでは提供できないようなネイティブアプリならではのいわゆる”サクサク体験”が、細切れの時間に忙しくコンテンツを消費するモバイル文脈とマッチして大きな競争優位性を実現しています。また、ユーザーへのチャネルも制約の多かったキャリア公式サイトからAppStore、Android Playというアプリ専用マーケットが大きな力を持ち、より自由度の高いアプリ開発環境が整ったことによってサードバーティーがよりダイレクトにユーザーにアプローチすることができるようになりました(もちろんまだまだ制約も多いですけど)。

②UI&UX

前述のSmartNewsもまさにこの点が優れており、かつ評価されています。スマートフォンでの閲覧体験を想定して徹底的に考え抜かれたコンテンツレイアウト/ボリューム(形態素解析を駆使して改行の位置や行間までチューニング!)や、スワイプ時のアニメーション・データ読み込みのチューニングなどいちユーザーとして本当に気持ちいい”ニュース体験”を提供してくれます。一時期物議を醸し出したオフライン閲覧に対応したスマートモード(コンテンツをキャッシュすることにより最速かつオフラインでの閲覧が可能に)も、ユーザーの利用文脈を考えた上での最適なバランスを選択した形と言えます。また、プッシュ通知などスマホならではのライフサイクルマーケティングノウハウも、UXという競争優位性を加速させていますね。

③パーソナライズ

SmartNewsは今回のチャンネルプラスという機能によってユーザーの主体的なパーソナライズ化が図れるようになりました。よりこの分野で注目されいているニュースサービスは現状Gunosyということになりますが、このパーソナライズも1人1台、いつでもどこでもというモバイルの利用文脈にフィットした重要な競争優位性となりますね。ただ、闇雲にパーソナライズしても逆にユーザーメリットを損なう場合もあるので、ここもニーズとテクノロジ―のバランスを見ることが大事なポイントでしょう。

次に注目されるプラットフォーマー

既存企業のイノベーションのジレンマを横目に、こういった新たなプラットフォーマーを生み出す構造変化がここ1〜2年でさらに加速することが予想されます。前述のようにニュースメディアの分野にて新たなプラットフォーマーの芽が顕在化していますが、次に健在化してくるのは確実にEC分野ではないでしょうか。

スマートフォンECとアプリコマース元年。 スマホEC市場と主要プレイヤーをざっくりまとめてみた。

海外Fabの成功事例にならって日本でもスマホドリブンでのECはorigamiやMONOCOなど注目すべきサービスが目白押し。特に日本のスタートアップ界隈ではここが一番ホットみたいですね。SmartNewsがすごいのは前述のトレンドを一般ユーザーまで拡げたこと。業界ウケではなく大衆ウケさせたところにスゴさがあります。ECの分野では業界的に注目されているサービスはあるものの、一般ユーザーの認知はまだまだ。もちろん各サービスプロダクトのフェーズとしてその段階では無いのかもしれませんが、絶妙なタイミングで大衆ウケしたサービスが頭ひとつ抜け出し、新たなスマホプラットフォーマーとして台頭してくるのではないでしょうか。

蛇足:僕はこう思います

SmartNewsに関しては僕もユーザーとして頻繁に利用していますが、実際にゴクロの代表浜本さんにお話しを伺うとそれまでは気づかなかったようなこだわりで、徹底的にスマートフォンでのニュース閲覧という体験において考え抜かれたサービスを体現しています。そしてその理想を実現するテクノロジーと機動力を持っているという点でも、スタートアップの強みと醍醐味を感じました。スマホドリブンでの新たなプラットフォームをガンガン生み出したいですね。
著者プロフィール:株式会社ジェネシックス 取締役 冨田 憲二
2006年東京農工大学大学院修士課程卒(ビークルダイナミクス専攻)。卒業後、U社にて協業でのモバイル公式サイトを複数立ち上げ。2008年ECナビ(現VOYAGE GROUP)へ転職し、2010年5月にスマートフォン専門に開発を行う株式会社ジェネシックスを設立。
ブログ / Twitter @tommygfx90
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