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分散型身分認証(KYC)の時代は 確かな土台の上で前進する [ゲストコラム]

寄稿
TechWaveではさまざまな分野・国と地域からの寄稿を受け付ける取り組みを始めています。引き続き中国圏からのゲストライター Mr.BlockChain 氏による寄稿です。

分散型身分認証の時代は 確かな土台の上で前進する

純粋なデジタル世界の時代に近づくにつれ、データの保護やプライバシーに対する需要の高まりはいくら強調してもし過ぎることはありません。オンラインのサービスやプラットフォームには一定レベルのユーザーの個人情報が必要ですが、このことがプライバシーやこれらの情報が使われる、あるいは分散化される方法について疑問を掻き立てるのです。

例えば、2018年最大のデータスキャンダルとして世界に衝撃を与えた「FacebookデータがCambridge Analytica社によって流出した」問題には、ユーザーには完全なプライバシーの遵守や共有される情報を機密として扱うことを約束する一方でユーザーの個人データが正当な同意を得ないままどのように共有されているかについて大きな疑問を投げかけました。

このケースでは、クイズアプリを経由して、ユーザーに事前に知らせる、あるいは同意を得ることなく、8000万人を超えるFacebookユーザーのデータの収集が含まれていました。この時点で唯一問えるのは、「私のデータのプライバシーは本当に保証されているのだろうか?」ということです。

似たような方法で、最近あったGoogle+データ漏えい問題では、40万人を超えるユーザー個人情報が含まれていましたが、表沙汰になる前に隠蔽されていた疑いが持たれています。このようなケースを見ると、誰がそれを使えるのか、どこに分散化されるのか、誰がそれにアクセスできるのか、プライバシーと保護の保証はどうなのかなど、ユーザーが自らの個人情報に関するコントロール権を持つ必要性が固まるのです。

KYCの複雑さ

今日、金融機関やほとんどの取引所は自社のサービスに新しいクライアントを登録する際に大きな費用を負担していますが、これがすなわちKYC(顧客確認=Know Your Customer)プロセスです。このプロセスに沿って、新しいクライアントは各自KYC検証プロセスを受ける必要があり、そのためにはさらに数日かかり、実施する人員も必要となります。

米トムソン・ロイターによる2017年の発表によると、金融機関ではKYCの手続きにかかる費用の支出額が2016年度に平均で1億4200万USドルから1億5000万USドルへと増加し、併せて配置された従業員(KYCコンプライアンス専従者)の数も68人から307人へと増えました。

組織にとっての主な目標は、コストを縮小するための効果的かつ効率の良い方法を見つけることであり、KYC手続きのコストはそのような注目を最も必要とするものの1つです。金銭的および人員的なコストが常に上昇するのを見ると、KYCの財務的影響を大胆に削減しつつも新しいクライアントの登録に必要な時間を短縮するような枠組みの採用が必要となります。

ブロックチェーンを取り入れる

ブロックチェーンテクノロジーの出現以来、様々なビジネスプロセスの発展を促進するために、様々なセクターにおいて大量のユースケースが開発されました。このテクノロジーを効率的に発展させる能力を示したものの1つがデータの保護とプライバシーを保証する分野です。ブロックチェーンベースの身分認証により、ユーザーは自らの個人情報やその使われ方をコントロールする術を取り戻します。ブロックチェーン上で作成されたデジタル身分認証は中央集約型のコントロールに拘束されることがなく、ユーザーはこれらの個人情報の使用および開示の方法を決めることができます。

このような身分認証の枠組みのパイオニアの1つが「Blockpass」です。

Blockpassは、Regtechプラットフォームです。Regtechは、「Regulation(規制)」と「Technology(技術)」)を組み合わせた造語です。人、ビジネス、もの、および端末に対する規制およびコンプライアンスの共有サービスを提供するというものです。

ブロックチェーンテクノロジーを活用することで、このプラットフォーム上のユーザーは自らの身分の確立、検証、保管および管理を行うことができ、関与するすべてのデータをコントロールし維持することが可能になります。分散化により中央集約型の機関からコントロールを移し、それらを個人ユーザーの手に委ねるという考えの製品です。これにより、KYCのプロセスにかかる手続きを簡素化させ、日数を短縮し、コストも低減させることができるというものです。

また、Blockpassは、ブロックチェーン上で検証済み身分認証を一度作成すれば、スマートコントラクトによって別のプラットフォームでも使える汎用の身分認証プロセスとしても使えます。ユーザーは自分のデジタルデバイスに、身分証明アプリケーションをインストールしておくだけで、素早く身分認証手続きを行う事が可能です。

枠組みを効果的に採り入れるための戦略的パートナーシップ

ブロックチェーンベースの身分認証の枠組みを効果的に取り入れるようにするために、Blockpassは、Blockpass身分認証アプリケーションを統合した注目すべき組織との戦略的パートナーシップおよび提携に乗り出しました。

そのような組織の1つがKorporatioです。このブロックチェーン企業は主に「スマート企業」の概念、すなわち、独自の法的身分により世界的につながったブロックチェーンを活用した企業という概念に着目し、最近になって新しいクライアントのオンボーディングプロセスを容易にするためにBlockpass KYC検証プロセスを統合しました。

「ビジネスおよびコマースの将来はブロックチェーンエコシステムにかかっていると思います。企業は身分認証ソリューションを開発中で、Korporatioとともに引き続き緊密に取り組んでいきたい」とBlockpassのCEO、Adam Vaziri氏はが発言しています。

もう1つの注目すべき提携は、Ethfinex取引所のプラットフォームとのコラボレーションでした。提携による、ブロックチェーンベースのプロトコルの「Rigoblock」でBlockpass身分認証の枠組みを使えるようになったのです。

Adamはこの提携について「Ethfinexとの提携を通して、資産管理向上においてRigoBlockを支援することで、分散型の資産管理はますます重要になったといえるでしょう。透明性、柔軟性、およびコントロールはブロックチェーンテクノロジーの特質であり、大衆のためにこのようにユーザーを中心とする形のソリューションをもたらすRigoBlockのようなプロジェクトを喜んでサポートします」と話します。

分散型の身分認証の浸透は、いかに有力な組織やプラットフォームに導入されるかが重要です。また、こうした提携が、現実のビジネスプロセスをどれだけ強化し貢献できるかに注目が集まるでしょう。

【関連URL】
・[公式] Blockpass

超蛇足:僕はこう思ったッス
ブロックチェーンの2019年はさまざまな現実社会と連携した取り組みが動き出すような様相だ。中国側からの目線から見ても、まだまだ課題が多い様だが、これだけ個人情報の大規模流出が続く中でBlockpassのような非中央集権サービスが適切な競争の中で育つことは逆に多くのKYC活用ビジネスにおいて歓迎すべきことのようにも思う。

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