サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

シリコンバレー流、7才からのイノベーターの育て方<1/2>【@Naruki】

[読了時間5分]

【シリコンバレー】Light Cube Enlightened. サンノゼのThe Tech Museum of Innovationにて、同館とBenesseによる子供向けワークショップが開かれた。目的はクリエイティブな自信をつけることだ。シリコンバレーの生の声をレポートする。(2014年3月15日)

折り紙✕LED✕コマ撮り、自分だけの作品

・STEAM Dojo

The Tech Museum of Innovation は誰もがもっているイノベーション気質を呼び起こすため、体験型の技術の展示やゲームを設置している。

同館と、協賛するBenesseが共同で行う子供向けのワークショップがSTEAM Dojoである。STEAMとは、science, technology, engineering, art, and mathを指しており、Art以外の科学技術(STEM)に加えてArtを加えることで、創造性と技術が交わる所でイノベーションを起こそうとしている。

本ワークショップの内容を説明しよう。まずは折り紙でキューブを作り、8色あるLEDから一つ選んで入れる。


複数のキューブを作った後、様々な配置を試しながらコマ撮りし、最後に自分だけのストーリー映像を作る。

撮影する前に、ストーリーボード(絵コンテ)を使って下書きをする。何色のキューブがいくつ必要か、予め考えるためだ。

子どもたちの作った動画は、YouTubeに公開され、こちらのリンクから見ることが可能だ。午前・午後の二回のワークショップで計51本の作品が作られた。

ワークショップの様子、参加者の声はこの動画で一目で分かるようにまとめられている。

[iframe src=”http://www.youtube.com/embed/UoKciGvrfm4″ width=”500″ height=”281″]

動画撮影:谷内(Benesse)

参加者の声

参加者の反応はどうだったか? 生のシリコンバレーを伝えるために参加者の声を紹介する。まずは子供二人を連れて参加したSheelaさんにインタビューした。(SheelaさんをS、記者を東と略した)

東「今日来たのはどうしてですか?」

S「私は、ここの会員なんです。子どもたちは科学や技術が好きで、また、家族で過ごす時間としてよく来ます。」

東「今まで、何回ほど来ましたか?」

S「数年前から会員になって以来、とてもたくさん来ています。」

東「今日のワークショップは、どの部分が一番楽しかったですか?」

S「キューブを作って、コマ撮りをした所。子どもたちが何度も動画を撮っていました。全て楽しかったですよ。」

Sheelaさんの子どもたちは、丁寧にキューブを組み立て、「3」「2」「1」とカウントを入れるなど工夫した作品を作っていた。

こちらは、Zoe。

「ダディ, 私の作品がYouTubeにのるんだって?」と大はしゃぎしていた。感想を聞くと「今日の経験が、私を映画監督にさせようと思わせたわ」と得意顔。学校ではロボティクスを学んでいるという。

館員の考える、シリコンバレー流イノベーターの育て方

(ワークショップ運営のPrindaさん)

イノベーターを育てる鍵はどこにあるのか? “Spirit of Silicon Valley”を体現する本館で、シリコンバレーらしさとは何か取材した。本ワークショップで運営役を務めたPrindaさん(Gallery Program and Staff Developer)がThe Tech Museum of Innovationの目的、展望を語る。(Prindaさんの回答をPと略す)

P:The Tech Museum of Innovationでは、Inspire the Innovator in everybodyを目的に活動しています。シリコンバレーのスタートアップ、起業家などの源流は全てイノベーションです。全ての人がイノベーターになれると思っています。そのために、間違いを怖がらずにトライすること、プロトタイプを出し、失敗から学ぶことを教えます。

東:イノベーターとは何ですか?

P:People who think outside of the box. クリエイティブに考え、難しい課題にエレガントな解決案を出す人たちのことです。答えは一つではありません、複数の解決策があります。

東:このワークショップのどの点で、イノベーターを育てることが達成できましたか?

P:テクノロジーとクリエイティビティを少しずつ混ぜた所です。私達が実践しているのはSTEAM Learningです。STEAMはScience Technology Engineering Art Mathの頭文字をとっていて、今まで行われてきたSTEM LearningにArtを加えることでクリエイティビティを育てます。
例えば今日は、LEDというちょっとした技術に、子どもたちが自分で0からストーリーを作るコマ撮りを入れることでTechnologyとArtを混ぜています。

東:目的は何ですか?

P:”Inspire creative confidence”自分だけのアイディアにトライし、自信を持ってもらうことです。

東:今日、それは達成できましたか?

P:はい。なぜなら子供たちが1つだけでなく、2~3個の映像を撮ろうとしていたからです。Creative Confidenceを見るためには、どれだけ「こだわっているか」を見ます。それは彼らが熱中して、繰り返したいと思っているということです。

東:Zoeさんという女の子が「私は映画監督になりたいわ」と言っていました。

P:まぁ、クールですね! ワークショップ中の役に将来なりたい、というのは成功の証です。例えばエンジニアよりのワークショップをすることがありますが、自分もエンジニアになれると思う、というのは成功のサインなんです。

東:尋ねるのですか?

P:聞くこともありますが、私達のワークショップもまだまだプロトタイプです(笑)。私達のゴールは、直接に評価をもらったり、フィードバックを記録することだと思います。

東:館員の活動に満足していますか?

P:私はもっと色々なことをする時間が欲しいです。それには二つ必要です。
一つはスタッフです。今日のようなワークショップの場合、毎回することが違ったり、参加者との1対1の交流が大切なので人が必要です。

もう一つは営利団体ではないので、お金が必要だということです。なので、パートナーがいることは大切です。

(取材、終)

技術とアートを融合し、失敗から学ぶことを実践するSTEAM Dojo。熱中して作ったコマ撮りをYouTubeで外に発表し、他者に見てもらうことでCreative Confidenceが深まる。独自のアイディアを認めることがイノベーターを育てることにつながると感じた。

次回の記事では本ワークショップの考案者であるBenesseに焦点を当てる。ベネッセ・シリコンバレーオフィスの谷内正裕氏に、ワークショップの狙いを学問的な裏付けを元に説明して頂く。創造性の伸ばし方を学べるだろう。

取材協力:
Prinda Wanakule, PhD
Gallery Program and Staff Developer

The Tech Museum of Innovation
Our Mission:http://www.thetech.org/about-us/our-mission

蛇足:僕は、こう思ったんですよ
「それ、面白い」と認めること。イノベーターを育てる鍵はInspire creative confidenceだと学びました。シリコンバレーに来て、こちらの人に共通する当たり前をいくつかリストします。

・シェアする。ピザも車も家も機会も。
・「君はなにしてるの?」「僕は記事を書きにきた」「じゃ、このイベントがあるよ」したいことを語ると、かないやすい。
・初めて会った人との敷居が低い。まず握手、すぐ名乗る “Hi, I’m David”。
・プログラミング言語が複数扱える

逆にシリコンバレーで見ないだろうことは

・「君はどう思う?」「分からない」で会話が切れる。
・「僕は記事を書きに日本から来たんだ」「へー、そう」などの無関心。
・「大変あつかましいお願いなのですが、○○につなげてもらえないでしょうか?」恐縮する。

したいことを語ると、かないます。それは人と人との会う障壁が低いため、目的を明確に伝えることができれば遠慮無く人とつながれるからだと思います。それでは、なぜ人を紹介したり、機会を与えてくれるのか? ここにいる人は「前に進むのが好きな人種」だと思います。他人のために奉仕したい、という動機ではなく、「成樹が取材したいという目標を持っているので、解決案を出そう」と思っているのではないか。仕事から、食事などの小さな問題まで、自分の提案を持っているのがシリコンバレーの人だと思います。

自分の提案を大切にするのと同様に、他人のアイディアも前向きに受け入れます。それが「それ、面白いね」とアイディアや意思表示に対してオープンである姿勢であり、提案に対してポジティブに動ける気質だと思います。

本ワークショップでも、私は動物のキューブを作りたい、などと意思表示をする子が多く、それを誰も否定せずに子供が自ら進んで行きました。そして作ったオリジナル作品が、YouTubeで社会に向かって公開されることで自分が認められたという自信がつくのだと思います。

私は、他者の視点を身体に染みこませるために記事を書きたいと言った。編集長の許可、現地でつないでくれた初対面のルームメイトとインターンのボス、快く取材の許可を下さる方々。糸がまっすぐにつながって、この記事が書けました。大変嬉しいです。

モバイルバージョンを終了