サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

【TOA – Tech Open Air 2017】とにかくお洒落な欧州最大のテクノロジーとクリエティブの祭典 (美谷広海)

世界を駆け巡る美谷広海さんの登場です
さまざまな海外スタートアップに関与し、現在はCerevoのシニア・バイス・プレジデントとして世界中を飛び回っている美谷広海さんにドイツで開催されたイベント「Tech Open Air (TOA)」のレポートを寄稿していただきました。

ドイツ、ベルリンで2017年7月11日から7月14日までテクノロジーとアートをテーマにした祭典、Tech Open Air (TOA)が開催された。TOAは2012年でのクラウドファンディングによる資金調達からスタートし、今年で6回めの開催となる。欧州発のテック系イベントSlushと並び、注目されているイベントだ。今年のTOAの様子を紹介したい。


TOAはメイン会場で開催されている有料のメインイベントと、それ以外に多くが無償でベルリン市内各地で開催されているサテライトイベントで構成されている。雰囲気としては、アメリカでのSXSW、日本の明星和楽に少し近いかもしれない。メインイベントは400ユーロ以上の有料制となっており起業家や投資家などを中心に2万人以上が参加している。一方、サテライトイベントは7月11日-14日の4日間、ベルリン市内各地で150以上のイベントが開催された。

メイン会場では、スタートアップによる展示ブースがあり、同時並行で5,6箇所でテックやアートに関するカンファレンスが行われている。雰囲気のある大会場から、木立の中に設けられて、藁の椅子に座るもの会場まで様々だ。アートをひとつのテーマに掲げているだけあって、どのカンファレンス会場も個性的でデザインが洗練されている。

筆者はここ数年、SXSWや香港RISE、ウィーンの王宮が会場として開催されるPioneers Festivalなどを始め、数十のテック系イベントに参加してきたが、そのなかでも断トツといっていい程お洒落な雰囲気のイベントだ。それはカンファレンスを行う場だけではなく、イベント会場の休憩スペースであったり、出展者向けのブースまでシンプルながら独自のものが用意されていることから感じられた。参加しているだけでも気分が良くなるし、心地いい。日本の多くの展示会では規制品による展示ブースが用いられているため、こうした個性的な展示会場を見る機会が少ないのが残念である。

カンファレンスや会場での会話は、外国からの来客が多いこともあり、ほぼ英語だけで事足りる。最もベルリン自体が外国人が多い街であり、ドイツで一番英語での生活がしやすい。TOAのカンファレンスのひとつで、外国人による起業家の割合がロンドンで50%超え、ベルリンで50%近く、パリでは20%台に留まるというデータも紹介されていた。

雰囲気も良く、自分の興味があるセッションを気分に応じて好きに渡り歩くことができる楽しいイベントであった。とはいえ、カンファレンスの各プログラムは15分から30分程度と短く、これでは自己紹介でかなりの時間がなくなり本題が盛り上がる前に終わってしまうためちょっと物足りなさも感じた。

sdr

また大型イベントでよく見られる、イベント会場とは関係なく周辺のホテルなど本体とは関係ないところに来客が流れてしまい、有料の本会場には人が来なくなる空洞化現象が、このTOAでも起こっているようだ。サテライト会場で、現地の人と話していると、「メイン会場はどうだった?」と頻繁に様子を聞かれた。本会場の費用は決して安いものではないし、「話を一方的に聞いているだけではつまらないし、サテライトイベントのほうがそばにいる人と話がしやすいし繋がりを作りやすい」という。

サテライトイベントの内容はピンキリで、ただ集まった人で飲んでいるだけのパーティー風のものもあれば、投資家に対して起業家がピッチをするもの、Kickstarterによるピッチイベント、ワークショップ形式のものまで様々だったが、総じてアットホームで、誰でもいつでも飛び入り参加ができるものも多い。参加者との距離も近いため、自然と現地や、参加者の人とも仲良くなることができる。個人的には、現地のハードウェアスタートアップのオフィスに訪問して、製品を世に出すための苦労話をスタッフから直接聞く体験もできたサテライトイベントのほうがメイン会場でのイベントよりも楽しめたかもしれない。何よりも、多くの会場では軽食やビールも無料だ。

dav

総じてTOAで感じたのは、ベルリンという街と一体となったアットホームな雰囲気と、ある種の洗練されたオシャレさだ。このオシャレさというのが何よりもヨーロッパのテックシーンが持っている強みかもしれないし、それを何よりも体感できたのがこのTOAだった。同様のイベントを他の国で開催しようとしたとき、会場のデザインから、イベントとしてのカルチャーをデザインするというのは中々できることではない。それはアーティストとフリーランスも多く住むこのベルリンならではのものとも言えそうだ。

【関連URL】
・Tech Open Air 2017
https://toa.berlin

蛇足
TOAはいい意味でとても緩くて楽しいイベントだった。細かいところまでこだわりがあり、ステージ上のスポンサーであるレッドブル入の冷蔵庫が屋外の木材のステージでは外装が特別に木でカスタマイズされているという凝り様。なぜその決断が末端部分まで組織としてできるようになっているのか、直接収益にはならないデザイン性や場の雰囲気づくりにどうやってお金やリソースを配分できているのか、まで考えるとちょっと真似ができないと感じた。
モバイルバージョンを終了