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日本の皆さん、トイザらスにFOREVER21、なんでも“アマゾン・エフェクト”だと思っていませんか?【米国マーケティング新潮流を追う vol.7】

変化が著しく、かつ様々な分野において最先端の取り組みがなされるアメリカ。ここでは、在米30年で、これまで数々の日系企業の米国進出をサポートしてきた、MIW Marketing & Consulting Group,Inc. の代表 岩瀬昌美氏による現地レポートをシリーズでお伝えします。売り場、現場の最前線で何が起きているのかはもちろん、いまなお米国に在住しているからこそ分かる生活者の反応や日本市場との対比なども交えてお届けします。
7回目は、先日10月末での日本市場撤退が決まったFOREVER21や米国で全店閉鎖となったトイザらスについて。彼らが衰退した本当の理由はどこにあるのでしょうか?

トイザらスを破綻に導いたのは競合対策の遅れだった

FOREVER21が日本市場からの撤退を決めたニュース、またトイザらスをはじめ米国の小売店の閉店ラッシュ、これらはすべてアマゾン・エフェクトであると日本のメディアでは伝えられていますが、それはあくまで複数ある要素の中の1つであって、すべてではありません。

まずトイザらスですが、全店舗閉鎖に至った一番の原因は、2005年に行ったLBO(レバレッジド・バイアウト)という資金調達にさかのぼります。そもそも2005年は、アメリカもITバブル崩壊と9.11の影響で不景気の真っただ中でした。そして、そのときはまだAmazon自体もそこまで有名ではありませんでした。

トイザらスはこのLBOで多額の債務を背負うことになりました。その結果、WalmartやTARGETといったほかの小売店がおもちゃを大々的に扱う戦略にかじを切った時に、店舗の改装や、品ぞろえの充実、オンラインサイト構築といった対抗施策を打てなかった。これが大きな理由だと考えています。

子どもがおもちゃを買う顧客体験を想像してみる

私の子どもが小さい時、トイザらスに行くことはディズニーランドに行くのと同じくらいにワクワクしたものです。子どもにとっては、おもちゃ屋さんに行って色々なおもちゃを手に取り、限られたお小遣いでどれを買おうか悩むなど、おもちゃで遊ぶだけでなく、それを選ぶ時間も含めたトータルエクスペリエンスが大事なのです。だから、トイザらスが破綻したのは“商品に触れながら選ぶ”という体験を届けられないAmazonだけではないと言えるのです。

ちなみにトイザらスの破綻後、おもちゃカテゴリーを充実させて競合となったWalmartやTARGETが、元・トイザらスの熱烈なファンたちを取り込んでいったのは言うまでもありません。この世に子どもがいる限り、楽しい空間を演出できているおもちゃ屋さんには大きな未来があると思います。

FOREVER21にマーケティング戦略はあったのか?

また、FOREVER21の撤退も同じく、Amazonの台頭だけでなくZARAやH&Mの台頭が関係しています。加えて、はっきり言ってしまえば、同社にはマーケティング戦略が皆無なのでは? と思えるような状況であったことが原因だと思っています。FOREVER21のビジネスモデルは高級ブランド商品のコピー。シャネルのバッグが欲しいけど、高すぎて購入できないから、似たようなFOREVER21バッグを買うという感じです。そのため同時期に何十件もの訴訟を常に抱えていたようです。しかしジェネレーションZ世代は、そうした憧れを持つのは少数です。なぜなら、その親の世代と違い、高級ブランドに対するロイヤリティや物欲が薄いためです。つまり、ターゲットとなるマーケットがないのに拡大路線に突っ走った結果が今回の撤退を引き起こしたのです。Amazonだけではなく“Z世代の買いたい物がないお店”になってしまったことが原因だと思います。

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