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Ustreamに投資、連続起業家、近々出版も予定のベンチャーキャピタリストChrisにインタビュー【@Naruki】

[読了時間:5分]「シリコンバレー」という言葉は人をわくわくさせる、行ったことは無いけれど。
本記事では多彩なベンチャーキャピタリストChrisへの取材を通じ、この魔法の言葉に形を与える。

「シリコンバレーでは興味に従って、多様な活動を続ける人が多い」

Wasabi Venturesの三柳健一氏(Senior Analyst)に言われた記者は、同社のCo-Founder & General PartnerであるChris Yehに紹介された。

Chrisは大学生時代にはクリエイティブライティング、製品デザイン、即興コメディーなど様々なクラスをとったが、ベンチャーキャピタリストになるとは思ってもみなかったという。今はEarly Stageに特化したベンチャーキャピタルを立ち上げ、投資活動に加えてWasabi Ventures Academyという起業家向けの講座(投資家向けPitchの方法、マーケティング等)を行うかたわら、14年間続けるブログエントリーで2000記事を書きあげた。今年7月にはLinkedIn Co-Founder & Executive ChairmanのReid Hoffman、起業家のBen Casnochaと共著で、ネットワーク時代のタレントマネジメントに就いての本の出版も予定している等、多様な活動を行っている。

本記事では、興味に従って次々と新しいことに挑戦するChrisへのインタビューを通じ、シリコンバレーらしい人間を描写する。

Chrisの理解で鍵になるのは

・人生はポートフォリオだ
・Help interesting people do interesting things
・浴びるように情報に触れ、アウトプットする

ことだと記者は考える。

初めに、彼の経歴を紹介する。

・Chris Yeh

1974年米国カリフォルニア生まれ。15歳でStanford大に入学し、Creative Writing、及びProduct DesignのDouble majorを学ぶ。卒業後、ニューヨークのHedge Fund D.E.Shaw Group入社。23歳でHarvard Business School(MBA)に入学。在学中に起業。又その後に起業した会社の売却資金でAngel投資を開始(Wasabi Venturesのはじまり)。現在は、Wasabi Venturesの出資先のPBworksでMarketing VPとして勤務しつつ、投資活動、執筆活動を行っている。更なる詳細は、こちらを参考にして頂きたい。

本インタビューは、PBworksのオフィスにて行われた。

インタビュー用の録音機を取り出すとひょいと手に取り「口のそばに持って行って話すのは慣れている」と笑顔で録音に応じた。「車を運転中にアイディアが思いついたらレコードする」という。
(なお本記事では、Chrisの言葉を””や「」で引用し、彼の生の言葉と記者の解釈を分けた。)

・Help interesting people do interesting things

―Chrisさんは連続起業家で、今はベンチャーキャピタリストであり、本の出版もします。なぜ興味が広いのですか?

Chris: “I view life as a portfolio.” 人生を、ポートフォリオとしてみているからだ。ベンチャーキャピタルはポートフォリオとして色々な会社を持っており、あるものは上手くいくしだめになることもある。ポートフォリオの見方は、全体を見なければならない。実生活でも同じように興味のあることに手をつけている。

だから私は一つのことに集中するよりは、ポートフォリオのように色々と試して全体として上手く行くかどうかを見る方法をとっている。

例えば私は自分のアイディアをシェアしたい”I want to share my ideas with the world.”。だが、起業家やベンチャーキャピタリストがベストな方法とは限らない、起業家をしているとアイディアをシェアする時間が取り難い場合があるからだ。だから、本を書くことにしたんだ。

―自分のアイディアを世界に広げるための一つの方法として本を書くことを選んだのですね。

そうだ。では、私が世界をどう見ているかの話をしよう、私のミッションは“Help interesting people do interesting things.”だ。これはとても広い意味だけれど、同時にとても絞られた答えだ。

つまり“I value interestingness. I value things that are intellectually stimulating, and that I am looking to do so not just by saying, oh I’ll do everything by myself, but by helping other people do this.

例えば本、ブログ、記事を書くことは、面白い人が面白いことをする助けになると思う。自分のアイディアを世界に出すと、interesting peopleに影響を与え、彼らと知り合いになれるからだ。又、彼らが自分のアイディアを取り入れることで何かの役に立つかもしれない。

―Chrisさんはアイディアを前に前に進めますが、読み返すことはないのですか。

ない。もしアイディアがつまったら、色々な人に話をしたり多くの情報を集めたりする。
”My ideas come as a reaction to the broad information I’ve taken in. By doing so, I’m moving along with the time.” 例えばビットコインについてみんなが話していたら、それについて調べ、自分の意見をもち、ブログ等でそれを発信する。そうしたら後になって「君はみんなと同じことを言っているじゃないか」と言われても「いいや、既にブログで書いているよ」と言えるからだ。


(14年続けるブログ)

―情報を浴びるように触れ、同時にアウトプットもするのですね。情報集めに何時間使いますか?

一日、2~3時間だ。EconomistAtlanticHacker Newsを読む。因みに、著名投資家のWarren Buffetは一日に8時間程度を読書に使っているということだ。彼の投資は、世界の長期的な動向を見据えて行うものなので、情報収集が大切なのだ。

 

・したいことは何でもトライし、その中からもっとしたいことを見つける

ここまでの取材で、Chrisは大量のインプットとアウトプットを同時にしていることが分かった。彼は、子供の頃からサイエンス・フィクションを読むのが好きで、将来は作家になりたいと思っていた。大学でCreative Writingを学んだが、卒業後はHedge fundに入り、金融業界について全くのゼロから学んだ。当時は、本を書いて生計を立てるのは大変だと思っていたが、いつかは書きたいと思っていた。そして今年、本が出ることになった。

彼の次のステップを聞いた。

―本を書き、したいことは達成できましたね。次は何をしますか?

今まで、興味の有ることは色々とやってきた。何をやらないで何をもっとやりたいか、分かるようになった。例えば心理学にはずっと興味があるし、ブログを書くのは14年間、ずっと興味が続いている。これからも情報を集めて、アイディアを書き、面白い人と面白いことをし続けたい。

―では、今日Interestingだと思ったことを教えて下さい。

今日は本の共著者と最後の修正をしていて、未だ本に書いていないけれど面白いアイディアが出てきた。”guilt in management”だ。その罪の意識は”sign of weakness”だ。例えば、社員が会社を退職したいと言った時、社員には会社に対する罪の意識が芽生えていると思う。会社側が共に働きたいと思う社員で有れば、その意識をうまく活用することがタレントマネジメントの一つの方法になるだろう。ただ、心を決めた社員を変えることは難しい場合もあるけれどね。

―興味の幅が広くてしたいことはたくさんある。しかし、いざ取り組むと一つのことにこだわり過ぎて、時間が無くなることが無いですか?

取り組むものに、どれだけ興味があるかによるよ。例えば、昔からタッチスクリーンには興味があり、まだまだ黎明期だと思う。我々のPortfolioであれば、子供向け数学教育モバイルアプリのMotion Mathやメール仕分けモバイルアプリのSquare One に出資をしながら、上手くいくかどうかみている。もしかしたら上手くいくし、もしかし興味が無くなればかける時間を減らす。

大切なのは、持っている時間の中で何をしたいか、ということだ。だから自分の生活を見つめて、人生で何をしていたいのか考える。私の場合は、読んで世界を理解したい、書くことでアイディアを世界にシェアしたいということ。これからも、面白い人と働いて共に面白いことをしていきたい。

(インタビュー、終わり)

 

・Wasabi Ventures

最後に、彼の立ち上げたベンチャーキャピタルについて書く。

Wasabi Venturesとは?

Wasabi Ventures is an venture capital, incubator, and consulting firm that specializes in building and advising early stage technology companies. In the last 10 years, Wasabi Ventures has built, financed, and advised over 200 start-ups including some wildly successful ventures like Right Now Technologies, PBworks, Ustream, and Etherpad.

HPより

なぜWasabiなのか? Chrisによると、彼はCo-founderのTKと寿司や刺し身が大好きだといい、ニューヨークでよく食べていたという。そこでWasabiと名づけた。

これには、少ない量だけれど、刺激を与えて全体に大きな違いを生み出す材料、という意味が込められているという。

他のVCとの差別化は、起業のアイディアがまだ無いような”very early stage”の人とも付き合うことだという。良い起業家には他のVCも例外なく興味を持つ。だが、起業前の人も含めて付き合うことは大きな特徴だ。

それでは、どうやって起業家をセレクトするのか? 一つの方法として、同社ではWasabi Ventures Academyというオンラインの起業家向け講座を開設している。ChrisやTKが直接講義を行っているが、毎回の参加者数は5~20名、一般公開もされている。毎回の講義の後に宿題を出しており、課題への対応を見ることで、参加者についてより深く知ることができる。

実際に、Wasabi Venturesには、15歳から70歳を超える、面白いアイディアを持った人が相談に来るという。「Chrisはとても面倒見がいい」(三柳氏)との言葉通り、様々な人と向き合って対話をする。

“Help interesting people do interesting things.”を体現している。

蛇足:僕は、こう思ったんですよ


まるでジェットコースターのように、目に映るものが次から次へと変わる。目の前のものに瞬発的に対応でき、大量のインプットをまじえて次へと向かう。だから、知識と経験を濃密度で得ていると言えるだろう。

一方で、全てをやり尽くすことができないことも分かっている。だから、捨てることが得意だ。自分の得意では無いことは「それは僕の専門ではないから」と捨てるという。

記者が「興味が広くて色々なことに手をつけるけれど、大切なことを後回しにしてしまう」と相談すると、1番重要なことを1番先にしよう、それをしている人は段々差が開く、と答えてくれた。

“Help interesting people do interesting things.”

Chrisは自分が何をしたいのか分かっている。だから「面白い!」に全力で応答し、時間に身を任せて瞬発力を発揮し続けられる。

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