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【ad:tech New York レポート】いまや広告は効果ナシ? ポスト・アド時代に求められるコミュニケーション

111日、2日に行われた、ad:tech New Yorkに関するリポート。今年の会場は、チェルシー地区にあるMetropolitan Pavilion。すぐ近くには、GoogleNYオフィス、そして観光地でもあるチェルシーマーケットがある。今回のテーマは「INNOVATION IN THE POST-ADVERTISING ERA(ポストアドバタイジング時代のイノベーション)」。Keynote、公式セッションともに広告ではなく顧客コミュニケーションの価値をいかに上げていくかについて語っていました。ここでは、聴講したいくつかのセッションについて紹介していく。

テーマは「INNOVATION IN THE POST-ADVERTISING ERA」。ホストとして進行したのは、Wharton SchoolのFuture of Advertising Programでエグゼクティブ・プロデューサーを務めるCatharine Findiesen Hays 氏。

次世代のエネルギーは「データ」/ 創造性とデザイン力こそマーケターの武器

初日のキーノートでは、THINXMACHINEのJoanna Pena-Bickley氏が登壇。冒頭に「私たちは歴史的変換点にいる。人工知能、IoT、そしてデータの爆発は新たな産業革命を引き起こしている。中身を知らないまま『AIに仕事を奪われるのではないか』ということへの不安を持っている人も多い」 と指摘。現在起きていることを知るためにも、「コミュニケーション」「モビリティ」「エネルギー」という3分野の産業におけるこれまでに起きた3つの革命について語った。

特にエネルギーにおける変化、燃料からDATAへという点を強調していた。つまり、DATAは石油のように湧き出てくる、欠かせないエネルギー源になるということ。だからこそ、AIIoTの分野には今後様々な企業が参入してくるようになるが、マーケターはそれらを恐れずにトライするしかないと主張。そのうえで、次なるキーワードとして「Extraordinary Human Creativity」を挙げた。今後についてあえて予測するなら、デザインの力、アイデアとその実行能力こそが大切であり、マーケターは体験デザインにさらに注力する必要があると述べた。「人の持つ創造力、デザインの力」を信じており、それこそがマーケターとしての能力の源泉であるという言葉が、AI,IoTの最前線にいる人から出てくることに説得力を感じた。

THINXMACHINEのJoanna Pena-Bickley氏は、IoT,AIが進むからこそ、「Extraordinary Human Creativity」が必要と述べた。

顧客接点が複雑化する中での「顧客価値の源泉」を見極める

「OMNICHANNEL IN THE NEW WORLD」のセッションには、シティバンク、モバイルマーケティング協会、Five Star Senior Livigなどが登壇。企業は、オンライン、オフライン関係なく、シームレスに顧客体験をつないでいかなければならない中で、どのようなことに取り組んでるのか。特に、異なるチャネルでメッセージを変化させている場合に全体の効果測定をどのようにしているかについて語った。Citi BankのMike Eichorst氏は「銀行は広告展開はもちろんのこと、店舗のサインもいたるところにある。さらに店舗にいるスタッフもチャネルなので、あらゆるところに接点がある。それらの調査を全て行うにはコストも手間もかかっている」と述べた。一方で、ターゲティングに活用したのと同じデータを今度は効果測定で使おうとしている企業が多いという課題もあることも指摘されていた。キャンペーンの各施策の効果をつなぎ合わせ、最終的な目標をどう達成されればいいのか、アプローチを考える上で参考になるセッションとなった。

「OMNICHANNEL IN THE NEW WORLD」には、シティバンク、モバイルマーケティング協会、Five Star Senior Livigが登壇。

HILTON HOTELStuart Foster氏は、同社の「NEXT GENERATION TARGETING」をテーマに講演。冒頭、FacebookInstagramEmailNetflixなど大手プラットフォームサービスが1分間でどれだけ使われているのか、その数値の大きさを示したうで、同社として施策を行う上で大切にしていることを3つ挙げた。

1. Know your Audience

2.Know your Yourself

3.Keep it Simple

「デモグラフィックは死んだ」と語った、HILTON HOTELのStuart Foster氏。

そのえうで「デモグラフィックは死んだ」と語り、アプローチすべき人たちをプロフィールやセグメンだけでみるのではなく、あくまで「個人」として認識し、それぞれが、どのような行動、ライフスタイル、意思決定のシナリオを持っているのかを理解することの重要性を述べた。

さらに、コンシューマーマインドが変わりやすい中でカスタマージャーニーは非常に大切であるとしたうえで、自社の最近の取り組みを紹介。その一つがルームキーのスマートフォンによるデジタルキー化。「100年前からフロントデスクに行ってキーを受け取るという変わらないスタイルを変えた。フロントに並ばず直接部屋に行ってすぐにくつろげるのはとても便利。これがホスピタリティでもある」と述べた。同社には、物理的なサービス・施設を見るチーム、テクノロジーをチェックするデジタルチームとがあり、フィジタル(フィジカル×デジタル)な対応ができるようにしている。今後、AIがホテルカテゴリーのホスピタリティ産業に進出してくるのは間違いないので、それに向けてパーソナライゼーション、適切な人に適切な内容を適切な時間に届けること=顧客が求めていることを提供することが、次世代の顧客にむけた施策に求められると語った。

これまでホテルのサービス力・価値の中心であった「スタッフのホスピタリティスキル」が、顧客のマインドの変化によって、価値・評価の軸そのものが変わってきている事例であった。同時に、こうしたことが今後あらゆる業界で起きるだけに「従来提供していた価値はこれからの顧客に対しても価値であり続けるのか」をしっかりと問わなければ、一瞬で足元をすくわれてしまうことになってしまうことが実感できるセッションだった。

デジタル化によってマーチャンダイジングとアドバタイジングが一緒に

eCommerceに関するスピーカーのコメントも紹介する。ブランドではTUMICharlie Cole氏が「THE NEW BRAND PERFORMANCE」をテーマに講演。ブランドサイド、パートナーサイドの両方を経験した自身のキャリアからeCommerceにおける購買時の顧客感情が全く変わってしまっていると語った上で、「Dynamic landing pages」「Dynamic email generation /triggers」「Personal fitting」の3つをキーワードとして挙げ、ブランドのメッセージは何なのか?  ブランドパフォーマンスはどうなのか?を見極めた上でコンテンツの質を高めることが重要とした。

TUMIのCharlie Cole氏。

グラクソ・スミスクラインなどが登壇した「THE AMAZON IMPERATIVE」をテーマとしたセッションではデジタルディスラプションが起きたことで、コマースは大きく変化し、Retail10%の成長なのに対し、eCommmerceの成長は60%以上に及んでいること。さらにデジタル化によってマーチャンダイジングとアドバタイジングが一緒になってきていることなどに言及したうえで、Amazonの影響力がさらに大きくなり、企業にとって必須となっているAmazon Marketing Services (AMS)の活用事例を紹介。グラクソ・スミスクラインは、AMSによってパフォーマンスが+347%になったとした。

多くのセッションで、「 POST-ADVERTISING ERA」にふさわしく、広告ではない形で特にミレニアル世代にどうアプローチし、コミュニケーションしなければならないかについての言及が目立った。各社とも、現在の取組状況をad:techの場でシェアしながら、次の一手を模索していることが実感できた。

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