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広告評価は売上につながっているかがすべて【ad:tech tokyo 2017 ABM vol.23】

日本を代表するイベント「ad:tech tokyo」が今年も2017年10月17-18日にかけて開催されます。このイベントの総勢40名の業界リーダーで構成されるアドバイザリーボードのインタビューを連載形式で掲載しています(特集一覧はこちら)。

今回はPwCコンサルティングの町田彰宏氏が登場。近年、コンサルティング会社の広告会社買収や業界進出が目立つことの背景について語ってもらいました。

PwCコンサルティング合同会社
マネージングディレクター 町田彰宏氏

—近年、コンサルティング会社がデジタルも含めた広告・マーケティング領域に進出することが目立っています。

当社の話になりますが、近年「ブランド・エクイティ」という言葉がキーワードになっています。ブランド価値を創出するために、何を考え、何をしなければいけないのかをクライアントとともに議論する機会が増えています。

—広告会社とコンサルティング会社とでは、どのような違いがあるのでしょうか?

広告会社が行っているのは既存広告のデジタル化や体験・経験づくりです。一方で、コンサルティング会社は、まずビジネスの根幹である「売上を上げるために何が必要なのか」がゴールであり、そこに向けてファン作り、顧客化、ブランド化が必要という順番で考え、アプローチしていきます。この違いをわかりやすく説明するため、「BXT」というワードを使います。

B・・・Business

X・・・Experience

T・・・Technology

これまでの、コンサルティング会社はB(ビジネス)とT(テクノロジー)ばかりを行っていました。逆に、広告会社は、X(経験)からB(ビジネス)、X(経験)からT(テクノロジー)ばかりを行っていました。しかし、いまや、このBXTの3つは、同時に行わなければならない時代になっています。

「売上にコミットして考えましょう」がコンサルティング会社の定番アプローチになってきています。コンサルティング会社が広告業界に一気に入り込んできているのは、「売上」を切り口にしているからです。

—では、コンサルティング会社の広告会社買収には、不足している「X」を補う意味もあるわけですね。

そうです。コンサルティング会社は、売上にコミットしましょうというアプローチをしながらも、Xの部分が十分ではありませんでした。そこを補って、BXTを確立することが狙いです。PwCもこれまで不足していたXを補い強化するために、米国では広告会社を買収していますし、日本においては、今年エクスペリエンスセンターの設立を予定しています。

—ほかに、コンサルティング会社ならではのマーケティングの捉え方はあるのでしょうか?

広告は売上を上げるため、という文脈で言えば、今後は、「マーケティング=セールス」にしていかなければならないと考えています。最近では、セールスヘッドがマーケティングをやるべきという考え方もあるくらいです。売上がすべての起点という考えですから、例えば、売上を上げるためのルートが、EC、直販、間接販売など多岐にわたる場合、どうマーケティングを分解するのかを考えるうえでも、セールスヘッドを中心に先ほどのBXTを考える必要があります。

その事例として挙げられるのが、最近我々が行った「医療・人道援助を行なう国際NPOに対するプロジェクト」です。プロジェクトのミッションは、企業において売上にあたる「寄付金」を増やすこと。寄付金を増やして、救える命を増やそうという考えのもと、3年間の事業計画を手伝っています。

—具体的には、どのようなことをしているのでしょうか。

寄付は大きく4つに分類できるのですが、中でも「個人で100万円以上の寄付をされている人」に直接リーチして、いただいた寄付金を何に使っているのか、その後どうなったのかなど、寄付後のことをしっかり伝え、ファンになってもらうことが必要と考えました。そして、3年以内に達成する目標を決め、それに向けてやるべきことをBXTに落とし込んでまとめていきました。

まずは、対象となる方々を調査し、それぞれのペルソナを設定。彼らがファンになるにはどのようにアプローチしていけばいいのか、どのように情報に気づいて、最終的にNPOに寄付するのか、実際に寄付するまでのロードマップ・戦略を作っていきました。

その上で、その戦略を支援するためにテクノロジーを使っていくことを考えていきます。例えば、VRを使ってアフガニスタンの現状を見てもらうと効果的なのでは等「こういうことができれば」について、一緒にアイデアを出していきます。この手順は、他のクライアントでも同じですね。

ー「こんなことができれば」という願望について一緒にアイデア出しをするのですね。

そうです。常々考えているのですが、前職で話していた例え話なのですが、日本企業には、ドラえもんの“のび太”がいないと思うのです。ドラえもんは、未来の道具でなんでも夢を叶えてくれますが、そのきっかけは、のび太の「これがやりたい!」という強い願望です。多くの日本企業には、この「これがやりたい」という強い願望がない、もしくははっきりしていないのです。実現するテクノロジーを持っている企業はあるのに、何を実現したいのかがなかなか出てこない。だから、我々は企業と一緒にもっとアイデア出しをしなければいけないと思っています。

もう一つ、大切と感じているのが、事業の「老舗化」です。老舗という言葉には、歴史、安心感など、「ブランド」に大切なことが含まれています。企業にとっては、事業を早期に「老舗化」することが、売上につながっていきます。そのための手段はデジタルコンテンツでもなんでも構いません。とにかく、広告の単なるデジタル化から脱して、売上を上げることを中心に考えることが大切です。

—アドテックのセッションも「BXT」を意識しながら聞くと、事業の全体像が見えますね。

話している内容がいまBXTのどこにあたるのか、どこにつながっていくのかを考えると、また違った視点からの知見が得られると思います。繰り返しになりますが、マーケティング活動が売上に結びついているかどうか、この点をしっかり意識できるアドテックになってほしいです。

—ありがとうございました。

町田彰宏
PwCコンサルティング合同会社
マネージングディレクター
ハイテク・メディア・通信事業部 兼 テクノロジーアライアンス統括責任者

<プロフィール>
英国国立イースト・アングリア大学政治学部卒業
英国国立ウォーリック大学国際政治経済学大学院修了
前職SAPジャパン(株)入社後、データウェアハウスコンサルタント、プロジェクトマネージャーを経てプリセールスとして年間150社の提案を行う。プロダクトマーケティングでSAPERP製品責任者となる。後にストラテジックアライアンスのディレクターとして多くのパートナー企業を担当し副本部長に就任。戦略企画室長を経て、金融公共営業本部長、営業企画本部長、パートナー営業本部長を歴任。営業企画本部長時にはSAP買収企業のポストマージャーの責任者としても活躍。
2016年よりPwCでは、営業やテクノロジーアライアンスの責任者として製造業や製薬企業への提案を行う。

【ad:tech tokyo 2017 概要】
日時:2017年10月17日-18日
場所:東京国際フォーラム
参加人数:15,000+
詳しくはこちらから

【関連URL】
・ad:tech tokyo 2017 Advisory Board Member (ABM) Interviews
http://techwave.jp/category/features/adtech-tokyo-2017-advisory-board-member-interviews

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