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ネット動画広告を科学することで、さらなる活用促進へ【ad:tech tokyo 2017 ABM vol.16】

ad:tech tokyo 2017アドバイザリーボードメンバーインタビュー特集
日本を代表するイベント「ad:tech tokyo」が今年も2017年10月17-18日にかけて開催されます。このイベントの総勢40名の業界リーダーで構成されるアドバイザリーボードのインタビューを連載形式で掲載しています(特集一覧はこちら

今回はサイバーエージェントの伊達 学氏が登場。同社のAbemaTV事業から見えてきた、インターネット動画広告の拡大、そして今後の発展に必要なことについて語ってもらいました。

株式会社サイバーエージェント 執行役員 伊達 学氏

ーインターネット広告市場の最近の動きは

私自身がAbemaTVに関わっていますので、動画広告市場の伸びがやはり目立ちます。当社のことになってしまいますが、動画の広告売上は2017年1−3月期で67億円、昨年同時期対比で2.8倍。ここ数年300%くらい伸びており、まだまだ成長過程にあるという感じです。売上をけん引しているのがYouTube、Facebook、LINE、そしてAbemaTVです。

ー動画広告に関する広告主の意識や行動は変わっていますか?

動画広告については、もう「取り組まなければいけないもの」という意識になっています。特に、AbemaTVについては「新しいメディアへの先行投資」として捉えていらっしゃる企業も多くありました。最近は、そうした企業が活用方法を自社で分析したうえでリピートすることも増えています。あとは、マスメディアを使うほどの予算規模ではないため、オンライン主体でブランドリフトをしよう、という明確な目的で活用する企業もいます。

私自身、2002年からネット広告の流れを追ってきていて、それぞれの大きな転機を見てきましたが、やはり先行者メリットを得ている企業は、新しいメディアや手法に対して積極的に取り組んで、自社ならばそれらをどう捉えてどう活用するのか、試行錯誤しながらPDCAを素早く回していると感じます。

ーそうした企業を突き動かしているのは何なのでしょうか?

競争が激しい業界の場合だと、やはり「競合他社に先を越される前に動かなければ」といったことも強いと思いますが、担当者個人のモチベーションというより、「新しいことに積極的に取り組むことが当たり前」という企業体質があるかどうかが大きいように思います。

ー先ほど「新メディアへの先行投資」という話がありましたが、ノウハウの蓄積のほか、どのような狙いがあるのでしょうか?

それこそ、テレビなどの黎明期から広告を行ってきた伝統ある企業に多いのが、AbemaTVをマスメディアと捉えて、テレビ局の立ち上げ時期を支えてきたように、「共にメディアを育てよう」という考え方で使っていただくこと。当然、一緒に関わっていただけるので、企業もたくさんの情報をメディア側と共有することができます。

一方で、新しいメディアの役割をしっかりと自社で設定していて、「このメディアにはこの役割を担ってもらう」と活用する企業もあります。AbemaTVに限らず、新しいメディアが発展するには、これらの「育てる」と「厳しく効果を見る」のバランスが必要なのだと思います。
今年は、先行投資として行ってきた企業のリピート活用に加えて、そうした企業の動きを見ていたフォロワー企業の活用が一気に増え、ネット動画広告が当たり前になってきたと感じています。

ーこの先さらにネット動画広告が発展するためには何が必要なのでしょうか?

次に必要なのが、クリエイティブの向上と分析・運用です。活用が進んでいるといっても、まだまだ多いのが、既存のテレビCMの素材をそのまま動画広告として活用すること。ただ、これでは各プラットフォームのフィードを見に来たユーザーにノイズと捉えられてしまいかねません。各プラットフォームに合った動画を用意できるのが最も良いのですが、これからメソッドが確立していく段階です。

その前に「クリエイティブを変えることが必要」であることの、さらなる啓蒙を行っていきたいです。そのためにも、クリエイティブの質を高めるための投資を行ったり、成功事例をもっとシェアしたりしていきたいと考えています。

ー確かに、トレインチャンネルに代表される電車車両内の動画広告も、最初はテレビCMがそのまま流れていましたね。

でも、その後にクイズ形式など、電車内で見ることの特性を踏まえた表現・成功事例ができ、オリジナルの素材を作るようになりましたよね。あの例を見ていますので、ネット動画広告のクリエイティブについても同じことが起きて、理解が深まっていくはずだと思います。

ーもう一つの、動画広告の「運用」について聞かせてください。

ウェブ広告においては、測定できる数値を見ながら、掲出期間中にさまざまな運用を行い、パフォーマンスを高めることが当たり前になっています。クリエイティブについても、A/Bテストを繰り返して反応が良いものを残しています。

同様に、動画広告についても、クリエイティブを複数用意して「ブランドリフトの効率をいかに上げるか」という運用を行う事ができます。しかしながら、先ほどのようにクリエイティブを複数用意していなかったりしますし、それ以上に広告主側に「ネット動画広告を運用する」ことがまだまだ浸透していません。テレビCMと同じように、素材を用意してある面に流したらそれっきり、と捉えていらっしゃる人もまだ多くいます。

ネット動画広告がさらに広がって行くためにも、エージェンシーやソリューション・パートナー側は、ネット動画広告のブランドリフトの効果をしっかりと分析してPDCAを回し、成功事例をシェアする必要があります。アドテックでは、こうした「ネット動画広告を科学する」ことについても話していけるといいですね。

ーほかに、アドテックに期待することなどあれば教えてください。

地に足が着いたセッションを行ってほしいです。これは日本の悪い癖なのですが、主に米国から来るバズワードに踊らされて、実際どうなのか? ということが見えてこない場合があります。良い面、課題も含めて、結局それはどこまで影響するのか、その後深刻な問題になりうるのかなど、新しい言葉や事象の表面だけをなぞるのではなく、今後に向けて「どう捉え、どう行動するべきなのか」までも見えるような場であってほしいです。

これは、セッションを聞いているだけではなかなか見えません。参加する皆さんには、交流の場や質問の場を活用して、他の人が解決案を提示するのを待つのではなく、自ら解決案を見つけるように動いていってほしいですね。

ーありがとうございました。

伊達
株式会社サイバーエージェント 執行役員

2002年 株式会社サイバーエージェント入社
2005年 インターネット広告事業本部営業部門責任者
2011年 同スタッフ部門責任者
2014年 執行役員
現在に至る。

【ad:tech tokyo 2017 概要】
日時:2017年10月17日(火)-18日(水)
場所:東京国際フォーラム
参加人数:15,000+
詳しくはこちらから

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