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一流のキャリアメイク術

デキる人は皆やっている 一流のキャリアメイク術(保田隆明著)

 共通の友人が多いと、なんだか旧知の仲のように感じるから不思議。そのせいか保田隆明さんと最初に会ったときに保田さんの一言「湯川さんて、転職しないんですか?」には、結構笑わせていただいた。
 なんだよ、それ。初対面の人に、普通そんなこと質問するか?(笑)。
 でも彼以外にも、初対面の人から同様の質問を受けることがよくある。僕ってそんなにふらふらして見えるのだろうか。実際ふらふらしているんだけど。

 でも正確に言うとふらふらしているというより、常に自分のキャリアのことを考えていきてきた。配達のアルバイトとして時事通信サンフランシスコ支局に勤め始めてから、キャリアメイクのことが頭から離れたことはなかった。
 自分は給料以上の仕事をしているのだろうか?明日、クビを宣告されたときに転職できるだけのスキルを持っているだろうか?クビになってもいいようなスキルをどのように磨くべきなのだろうか?自分のキャリアの最終ゴールはどこに置くべきか?・・・
 不安定な立場が長かったからか、そんなことばかり考えて生きてきた。入社試験を受けて入った同僚にそんな話をしたら、彼は「そんなこと考えたこともない」と言っていた。

 今、わたしのいるメディア業界、そしてその周辺の広告業界には、IT革命の津波が押し寄せている。少なくとも大手企業は、このままでは大変なことになる。
 最近は機会があるごとに、メディア業界や広告業界の友人や若者にキャリアメイクの考え方の大事さを説いている。しかしわたしの考えに共鳴するのは、転職経験のある人や派遣社員の人たちだけ。正規入社の社員の多くは、そんな話は聞きたくもないという顔をする。
 さすがに「転職するやつは裏切り者だ」と考える人間は少なくなってきている。しかしそれでもキャリアメイクを真剣に考える人間は、この局面においても圧倒的に少ない。
 だがキャリアメイクを考えないことが、会社への貢献にはつながっているわけではない。反対にキャリアメイクを考えている人間のほうが、企業から求められる人材になっていることがあるのが皮肉なところだ。
 今後、情報を扱う業界の大手企業の状況は、一般的に悪化が避けられないだろう。その中で多くの人間は、なすすべもなく立ちすくむことだろう。立ちすくむことしかできないだろう。

 世間では今だにお受験の風潮が続いているという。有名幼稚園から有名大学、有名企業へと敷かれたレールに子供を乗せたいのだろう。
 でもそのレールの先には社会、経済の大変革が待っているということを、お受験の母親たちは知らないのだろうか。右肩上がりの経済が終わったことを知らないのだろうか。大企業こそ、将来不安定だということを知らないのだろうか。
 今大事なのは子供をレールに乗せることよりも、自分で自分のキャリアを決めていくキャリアメイキングの技術を身につけさせることである。

 子供だけじゃない。多くの人にできるだけ早い時点でキャリアメイキングの技術を身につけてもらいたい。近い将来、変化の波に飲まれても、呆然と立ちすくむことがないように・・・。

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