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セミプロ、アマチュアが作る広告-ボツにした未完成原稿vol.9

主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。

▼セミプロ、アマチュアが作る広告

 さて広告も表現物である。クリエイティビティの産物である。アマチュアのジュリエイティビティが爆発する中で、広告製作の領域にもアマチュアやセミプロによる進出が今後活発になると考えて間違いないだろう。

 
 英ガーディアン紙は、広告ネットワーク事業に参入している。具体的には、自社ウェブサイト上の旅行に関するページの広告枠と、旅行に関するサイトやブロ
グの広告枠を1つの広告商品として取りまとめ、旅行代理店や航空会社など関係の広告主に販売している。

広告主の出稿する同じ広告が、ガーディアンのサイト
の旅行に関するページに加え、他社の旅行サイトやブログにも表示される。どのサイトやブログを広告ネットワークに参加させるかという判断と、参加の合意を
取るための交渉が、ガーディアンの仕事となる。
 ガーディアンは、旅行のほかにも環境に関する広告ネットワークも運営しており、今後も新しい分野の広告ネットワークを次々と作成していくという。
 広告ネットワーク事業は、日本でもオンライン広告会社が提供しているが、メディア企業が手掛ける例はまだない。
 一方、英デイリー・テレブラフ紙を発行するテレブラフ・メディア・グループは、広告製作部門を拡充し、サイト上の宣伝ビデオの委託製作事業に乗り出した。紙の新聞の広告主に対して、宣伝ビデオを含むオンライン、オフラインの広告をパッケージにして販売するようだ。
 新聞などの従来型メディアの広告市場が縮小する中で、メディア企業自らが広告事業に乗り出してきたわけだ。
 一方、日本では、一般ユーザーが広告を製作するという動きが世界に先立って始まっている。
 株式会社エニグモは、消費者参加型CM製作ネットワーク「filmo(フィルモ)」を運営している。その仕組みは次のようになっている。
 
まず広告主から動画CM製作の依頼をエニグモが受ける。どのような製品のどのようなCMを希望しているのか、という広告主側からの要請が「クリエイティ
ブ・ブリーフ」として、専用サイトfilmoで公開される。そのクリエイティブ・ブリーフに従った製作した動画CMが一般の会員から寄せられる。約2万人
が会員として登録しているという。製作した動画CMはエニグモのチェックを経て、ブログや動画共有サイトへのアップが可能になり、その後の審査で応募作の
中から優れた作品に賞金が贈られる、というものだ。
 これまでにドミノ・ピザや、東芝EMI、松竹株式会社、株式会社リクルートの住宅情報関西版、コンフェクショナリー・コトブキ、株式会社タカラ・トミー、サッポロビール、ナショナル、オリンパスなどの広告主企業がクリエイティブ・ブリーフを公開している。
 
試しに、ドミノ・ピザのクリエイティブ・ブリーフを見てみると、「CMの目的」は「ドミノ・ピザの売り上げアップ」「ドミノ・ピザのブランドイメージ向
上」となっている。「CMを見て感じさせること」は「ドミノ・ピザを食べたい!」ピザといえばドミノ・ピザ!」。「商品の売り」は「品質にこだわった大人
のためのピザ」「どこよりも簡単なネット注文システム」となっている。
 また動画申請を通過した会員100人に対しては制作
費として1本当たり4000円が支払われるほか、金賞1名に10万円、銀賞1名に5万円、銅賞1名に3万円、入選作品9名に1万円ずつが賞金として手渡さ
れるとなっている。ドミノ・ピザの動画CMの審査は既に終了しており、「ドミノ・ピザたべたい」などと歌いながら商店街で踊る動画などが入賞している。

 ▼広告にも「団体戦」という競技

 この本を書くために非常に多くの広告業界関係者を取材した
し、意見交換も行った。その際に、こうしたセミプロやアマチュアによる広告製作の話をすると、ほとんどの広告業界関係者は、アマ製作の広告の効果に懐疑的
だった。「アマチュアにプロのような影響力のある広告は作れないでしょ」と鼻で笑う広告マンもいた。
 株式会社関心空間の前
田邦宏氏は「マスがまだ把握できていないニーズやウォンツを見つけ出せるのが、ヒットを出せる開発者、マーケッター、広告マンだろう。口コミとはまた別。
神の声が聞こえるクリエーターが存在する。口コミが広告のすべてになるとは思えない」と語る。消費者の声を集めたコミュニティーサイト「関心ドットコム」
の運営者がそう言うのだから、説得力がある。
 確かに、個々人のメッセージ力の競争になれば、前田氏の言う通りプロに軍配が上がるのかもしれない。アマチュアで、時代を動かすメッセージを作り上げるのは至難のわざなのだろう。
 
日本でも、記者発表会と並んでブロガー向け製品発表会を開く企業が大企業を中心に増えてきた。それでも、マスコミの記者と比較すると、ブロガーを通じた情
報伝播の力は非常に小さいという。大企業側も、ブロガーの記事で製品が爆発的に売れるようになるとは期待していないようで、消費者がネット検索したときに
マスコミ以外の記事がヒットするようにしたい、という程度の期待だけでブロガー発表会を開催しているらしい。
 アマチュアがブログという表現ツールを得たからといって、一人のマスコミ記者と一人のブロガーを比較した場合、マスコミという大きな情報パイプを持っているマスコミ記者のほうが情報を広める力を持っているのだ。
 といってもそれは、一人の記者、一人のブログの競争という個人戦の話。個人戦という種目に加えて団体戦という種目が情報の分野にも登場したことは、これまでに述べてきた通り。
 アマチュアでも周りの2、3人や影響力のあるメッセージを発信することは可能だ。このロングテールのメッセージをテクノロジーの力を集めて集結するという競争が始まっているのだ。
 その競争で最初に成功したのが、検索連動型広告だ。
 
検索エンジンで検索した際に結果ページの右に「スポンサーリンク」として表示される検索連動型広告の2行ほどのメッセージはどれもシンプルなもの。広告ク
リエーターが作ったような洒落た文言はない。時代を動かすようなメッセージではない。しかし無数の検索連動型広告を集合体としてみれば、確実に効果があ
る。効果があることが立証されたからこそ、検索連動型広告は大きな市場になったのだろう。
 広告の世界にも、人間の力が勝負
を決める個人戦に加え、テクノロジーの力が勝負を決める団体戦という新しい種目が登場したのである。この新しい種目の中で最初に先頭に踊り出した選手が、
検索連動型広告である。しかしレースは始まったばかり。検索連動型広告に追いつき追い越そうというテクノロジーが次々と登場してきている。そして今後は個
人戦より団体戦の重要度が増していく。
 ビジネスチャンスは、個人戦という古い競技種目の中よりも、団体戦という新しい競技種目の中により多く存在するのである。

序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4
ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5
アマチュア作品はプロに勝てるのか-ボツにした未完成原稿vol.6
オンデマンドで儲からないのは当たり前-ボツにした未完成原稿vol.7
表現者にとっていい時代になるのか悪い時代になるのか-ボツにした未完成原稿vol.8

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