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主張を180度転換したのでボツにした原稿です。何かの役に立てばと思いアップします。未完成原稿ですので、未確認情報が含まれます。ご注意ください。
▼IBMが描く近未来4つのシナリオ
さてIBMのレポート「The end of advertising as we know
it(われわれの知っている形の広告の終焉)」に話を戻そう。このIBMレポートは、広告をテーマにしたレポートだし、5年後を予測するものであるから、
マッケンナ氏が予測するような究極のマーケティングの形にまで踏み込んで議論していない。そこまで踏み込んだ議論にはなっていないものの、広告業界の5年
後の近未来を占う上でIBMのレポートは示唆に富んでいるといえる。
IBMレポートは、広告業界の5年後を予測する上で、不確定要素が2つある、と指摘する。
1つは広告マーケットプレースが広告業界にどの程度利用されるか、ということ。2つ目は、消費者へのパワーシフトはどの程度進行するのか、ということだ。
消費者へのパワーシフトとは、。CMスキップや、ポップアップ広告の表示拒否など、どの広告を見るかという選択権が、どの程度消費者に移行するのか、とい
う話だ。
この2つの不確定要素の組み合わせで、4通りの近未来のシナリオを描くことができる。
1つは、広告マーケットプレースの利用も、消費者へのパワーシフトも5年間でそれほど進行しない、というシナリオ。2つ目は、広告マーケットプレースの利
用は進むが、消費者へのパワーシフトは進まない、というシナリオ。3つ目は、広告マーケットプレースの利用は進まないが、消費者へのパワーシフトが進む、
というシナリオ。最後に4つ目は、広告マーケットプレースの利用も、消費者へのパワーシフトも進む、というシナリオだ。最終的には、4つ目の究極のシナリ
オへと移行していくのだが、今後5年以内という近未来予測では、この4つのシナリオのうち、どれになるのかは分からない、としている。
▼広告マーケットプレースも消費者へのパワーシフトも起こらない場合
とはいっても、デジタルビデオレコーダーの普及に伴ってCMスキップする視聴者が今後も増え続けるだろうし、テレビを見ずに「ニコニコ動画」のようなネットサイトを見るという若者は増えることはあっても減ることはないだろう。
広告予算が、テレビなどの従来型メディアからネットに移行するといっても、それは緩やかな移行であり、急激な変化ではない。広告主は、従来型メディアとそれ以外の新興デジタルメディアの双方に広告を出稿していくことになる。
IBM
レポートは、広告の効化測定技術、ターゲティング技術の向上により、ダイレクトマーケティング予算がブランド広告のチャンネルに移行するだろうと予測して
いる。ターゲティング広告がネット上やケーブルテレビ上で可能になるので、ダイレクトメールなどの予算がネット、テレビなどに移行されるようになる、とい
うことだ。
IBMレポートは、「広告代理店は引き続き、クロスプラットホームでシームレスに統合されたプランニング、バイイング、配信、効果測定サービスに対する広告主の要望に応えようとするだろう」と予測している。
日本の広告会社は、このシナリオが日本では最も現実的と考えているからだろうか、事実、テレビや雑誌、ネット広告のキャンペーンを一元的に計画、配信、効果測定できる統合エージェンシーへの動きを加速させているようだ。
▼広告マーケットプレースが普及するというシナリオ
IBMの予測シナリオの2つ目は、広告マーケットプレースが普及する一方で、消費者へのパワーシフトが進まなかった場合である。IBMレポートは、電話通信事業者や新興テクノロジー企業などけん引役となり業界を改変していくと予測する。
ネットサイトへの広告配信だけではない。テレビや新聞などの従来型メディアへの広告配信も広告マーケットプレース経由になっていく。米国では、この分野にもグーグルが参入している。
しかし日本の従来型メディアへの広告配信では、大手広告会社が有利なのかもしれない。電通傘下のオンライン広告会社のサイバー・コミュニケーションズの長澤氏は、「電通の強みが活かせる分野」と主張する。
一方で、ケータイ電話やデジタル・サイネージの分野では、IBMレポートが指摘するように通信事業者が有利になるかもしれない。今度のソフトバンクの動きが気になるところだ。
IBMレポートは、ほとんどの広告枠の売買が広告マーケットプレースで行われるようになり、これまでの仲介業者(広告会社のことだ)は中抜きされるだろう、と予測している。
小さな広告主でさえ、テレビのCMスポットを購入できるようになる、としている。
▼消費者へパワーシフトするというシナリオ
3つ目のシナリオは、どの広告を見るかという選択肢が消費者へ移行するというもの。パワーが消費者へシフトするため、広告主、広告会社は、より見られる広
告の製作に力を入れる必要が出てくる。消費者の求めている情報や、見ていて楽しい広告、双方向機能のついた広告などに力を入れなければならなくなるわけ
だ。
IBMレポートは、広告主や広告会社は、複数の広告パッケージを用意し、消費者が選択できるようになるかもしれない、
と指摘する。コンテンツを無料で見せる条件として、広告を見る、という形が普及する可能性もあるとしている。消費者が自ら宣言した属性タイプと、行動履歴
などの取得データの双方を掛け合わせて、消費者一人一人に合った広告が配信されるようになるだろう。ありとあらゆるデータを取得、分析し、消費者の属性を
正確に把握する技術へのニーズはますます高まるであろう、とIBMレポートは予測している。
▼広告マーケットプレースが普及し消費者へのパワーシフトが進行するシナリオ
最後のシナリオは、あらゆる広告の売買が広告マーケットプレース上で行われるようになり、消費者へのパワーシフトも同時に起こる、というものだ。
IBMレポートは、これが最も劇的な変化を呼ぶシナリオで、新興テクノロジー企業がいろいろな領域で台頭してくるだろうと予測している。
このシナリオが実現すれば、広告が消費者にとって関連のあるもので、興味深いものであれば、どういった規模の広告主であっても、的確な属性の消費者個人に対してリーチできるようになる、としている。
さて、では日本の広告業界はどのように変化していくのだろうか。結論から言うと、5年間でそれほど大きく変化はしないだろう、とわたしは考えている。IBMレポートで言うところの、「広告マーケットプレースも消費者へのパワーシフトも起こらない場合」というシナリオだ。
なぜそう思うのかというと、欧米とは異なり、広告業務における大手広告会社のプレゼンスが非常に大きいからだ。
序章 経済リワイヤリング-ボツにした未完成原稿vol.0
IBMが読む広告の未来-ボツにした未完成原稿からvol1
分断される消費者の関心-ボツにした未完成原稿vol.2
メディア消費の過渡期と3層並存論-ボツにした未完成原稿vol.3
テレビCM崩壊は日本でも起こるのだろうか-ボツにした未完成原稿vol.4
ニコニコ動画に見る日本のクリエイティビティの実力-ボツにした未完成原稿vol.5
アマチュア作品はプロに勝てるのか-ボツにした未完成原稿vol.6
オンデマンドで儲からないのは当たり前-ボツにした未完成原稿vol.7
表現者にとっていい時代になるのか悪い時代になるのか-ボツにした未完成原稿vol.8
セミプロ、アマチュアが作る広告-ボツにした未完成原稿vol.9
消費者が主導権握る広告-ボツにした未完成原稿vol.10
受動的消費者が能動的になるとき-ボツにした未完成原稿vol.11
セカンドライフ内の広告に期待-ボツにした未完成原稿vol.12
広告マーケットプレース-ボツにした未完成原稿vol.13
日本でヤフーがこれからも強い理由-ボツにした未完成原稿vol.14