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グーグルはアンドロイドでモバイルOS市場を席巻したいとは思っていない-夏野剛氏

 1月9日に開催された有限責任中間法人ブロードバンド推進協議会のパネルディスカッション「モバイル・ブロードバンドビジネスの未来」での夏野剛氏の発言がおもしろかったので、自分用取材メモ(だれかの役に立てればそれもアリなんで公開)。

以下、夏野氏の発言:
「グーグルがやろうとしていることに対して、ほとんどの日本人は誤解していると思う。もしグーグルがアンドロイドでモバイルOSの市場を席巻したいと思っ
ているのなら、なぜ対抗するようなアップルのiPhoneにグーグルのgmailやグーグルマップといったサービスを載せているのか。
 グーグルの意図は簡単なんです。モバイルでもPC並みにインターネットが使えるようにしたいということだけ。

 日本以外の市場では、すばらしいシェアを持っているノキアの端末でも満足なインターネット利用ができないのが現状。みなさん、幻想を抱いていると思うんだけど、(ハイエンド端末に慣れた日本人にとってヨーロッパの端末は)めちゃめちゃ使いづらい。ノキアにとってネットの使い勝手って正直どうでもいいのではないか、はっきり言っちゃうと。(キャリアではなく端末メーカーだから)ぶっちゃけ言うと、端末を売ればそれでビジネスが終わっちゃう。本当に使ってもらうかどうかはあんまり関係ない。ヨーロッパのパケットの利用率は日本に比べて圧倒的に低いんです。ハイエンド端末だけ比べると日本とヨーロッパにあまり違いはないように思われるけど、圧倒的多数を占めるゾーンの機能とかを比較すると、未来ケータイといわれるほど日本のほうが進んでいる。なんでかと言うと、(日本のケータイ業界は)使ってもらうための仕掛けを一生懸命やってきたから。あるノキアの端末なんか、3行の白黒で「java搭載!」なんてやってますが、3行の白黒にjavaを搭載して、何ができるって言うんですか!
 皆さん誤解してるんです。グーグルがアンドロイドを開発した最大の意図は、フラストレーションなんですよ。IT業界から見たケータイ業界に対するフラストレーション。グーグルのエリック・シュミットさんは「日本のケータイで起こっている状況が世界中で起こってくれればいいんだけどな」というようなことを言ってました。どういうことかと言うと、ケータイからどんどんインターネットにアクセスする環境が整わないといけなくて、なんでその環境が整わないのかというのを見ていくと、問題は結局端末側にある。OSからなにから問題があるんだったら、だったら自分たちで開発してただで配っちゃお、ということになった。
 覇権を握るんだったら(OSを)有料にしますよ。
 なんでただで配っているのか。なんであんなにオープンにするのか。しかも別のフォーマットでも台数が出ているものに対してなんでただで配っているのか。それは環境を整えることが、広告というグーグルのビジネスモデルに役立つからなんです。
 というふうに考えると、ちょっと見方が変わるんじゃないでしょうか。これを真に受けてシンビアンなんかがただでOSを配るなんてことをやってますが、それはまたいいことじゃないですか。グーグルがアンドロイドを出すことによって、シンビアンなんかもインターネットにアクセスする環境をどんどん整えようとする動きになってきている。それはそれでグーグルの意図通りなんですよね。でもアンドロイドがどれだけ広まっても、アンドロイド自体がグーグルのビジネスモデルにはならない。

以上。
 パネル討論会自体は、オープン化の是非、みたいなものがテーマで、総務省の谷脇康彦氏は「すべてオープンにしろと言っているわけではないが、オープンである部分も必要ではないか」という主張。キャリア側は「日本のケータイがここまで進化したのは、キャリア主導だったから」というような主張かと。議論自体は興味深いが、次の本にとってはあまり関係ないテーマなので、深くは考えないことにする。「MVNOもハードル高いんじゃないの」とかいう議論も面白かったけど、ここでは省略
 夏野氏の主張は、Chromeに関しての僕のエントリーと似ているような。

 僕にとっての関心は、覇権争いの戦場がどのレイヤーにあるのか、ということ。最近、ソフトバンクvsグーグルという観点で物事を考えているんだけど、孫正義氏は、「インフラレイヤーを取ることが重要」と過去に語っているんだけど、グーグルはOSというインフラレイヤーを無料化し、広告という1つ上のレイヤーを戦場にしようとしている。さてソフトバンクはどうでるのだろうか。自分がソフトバンクの中の人ならどんな戦略を考えるのだろうか。んー。ちょっと考えてみたい。

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