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われわれは世界を目指すべきか、足元を固めるべきか

 もう二日前のエントリーになるんだけど、「退職のご挨拶」というエントリーに多くのアクセスをいただいた。多くのメッセージに元気をいただいたんだけど、それとは別にこの現象を客観的に見て興味深いポイントが幾つかあった。

1つ目。
 
 まず盛り上がりの場所がブログではなく、Twitterだったということ。ブログ検索してみても、僕の退職に関するエントリーを上げている人はほとんどいない。一方でだれかが「僕のTLが湯川さんの退職の話題で埋まっている」とつぶやいていたけど、一部なコアの人たちの間ではちょっとしたお祭りになっていた。昔はだれかが退職してお祭りになればブログで盛り上がったもんなんだけど。
 ウェブ周りでエッジの立った人たちのコミュニティの核がブログからTwitterに移ったのかもしれない。(もちろんわたくしめごときの話では、それほど盛り上がるかよ、という根本的な理由もあるのかもしれないけど)
 じゃあブログの役割はどう変わったんだろう。多分140文字では表現しきれない考えを発表する場になったり、もしくは少し前のいわゆる「ホームページ」と呼ばれていたサイトのように小規模のメディアという位置づけになったんじゃないかなと思う。アメリカではメディアサイトが、いわゆるホームページ制作ツールで作ったものから、TechCrunchのようにブログをベースにしたものが主流になってきているけど、ブログが小規模メディアとなり、Twitterが少し前のブログの役割を果たすようになっているんだと思う。

2つ目。

 「退職」エントリーのアクセスが、9000PVほどだった。

 つまり僕の退職に関心のある人はせいぜい数千人しかいないということ(そんなにもいるという見方もできるけど)。これはちょっと前に閉鎖されたYahoo!のSNSサイト、CUのユーザー数が数千人だったのと同じくらいの規模。多分の僕の知名度ってウェブ周りでエッジの立った人以外ではゼロだろうから、「ウェブ周りでエッジの立った人って数千人ぐらいしかいないのかもしれない」と漠然と思っていたことを裏付けてくれた(単にわたくしめごときでそれほど盛り上がるかよ、ということもあるんだけどさ)。ウェブ関連の書籍もだいたい数千部ぐらいしか売れない。たまにウェブ進化論やフリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
のように数万から10万冊以上売れる本も出るけど…。エッジの立った人は数千人で、そこまでエッジは立っていないんだけどウェブに興味のある人が数万人、というのが、エッジの立ったウェブサービス、関連書籍の市場規模なんじゃないんだろうか。
 市場規模としては全然大したことないじゃん、それって。そこを狙っていても大きなビジネスはできないんじゃないか。
 近江商人JINBLOGもiPhoneと小さな社会というエントリーで「社会が自分の見たこともない人たちで構成されていることへの理解がマーケティング思考のスタート地点です」と書いているんだけど、ビジネスを考える上で、エッジの立った人、その周辺の人よりも、もっと大きい市場を考えるってことが大事なんだと思う。
 アメーバなうとかグリーのひとことなんかのTwitter風サービスって、「独創性がない」ってエッジの立った人たちから批判されたりするけど、僕は十分やる価値はあると思うし、エッジの立った人たちの間でももっと評価されるべきだと思う。アメーバってすごいと思うよ。後発かもしんないし、デザインが女の子向けであるのかもしんないけど、でもここまでブログを一般に広めた功績は、単純に評価されるべきだと思う。
 その一方で、「単なるモノマネでしょ」と批判するエッジの立った人たちの気持ちも分かる。
 要は、最先端のサービス、技術で「世界」という大きいけれど不確実な市場を狙うのか、「国内のマス市場」というより確実でしかもそれなりの規模の市場を狙うのか、ということなんだろうと思う。国内のエッジの立った市場を狙っていいのは個人プレーヤーぐらいのもので、企業組織になれば「世界」か「国内のマス市場」か、どちらかの選択肢しかないのかもしれない。
 これはネット企業やエッジの立った人たちだけに言っているんじゃなくて、僕自身、独立後の歩み方、どの層をターゲットにすべきか、ということで考えていることなんだ。

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