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もちろんこれはアメリカでの話。引き続きTechCrunchのインターネット広告の未来: メディアはもはやメッセージではない,人がメッセージなのだ の解説。
Goldstein氏は、広告代理店、メディア企業、広告主が、それぞれ抱えている課題を指摘している。
まずは広告代理店の課題。
- 広告代理店たちは企業の便利屋としてこき使われることにうんざりしている。彼らは、メディアにデータを提供し て需要側プラットホーム(demand side platform, DSP)*になることによって、利益率を大きくしたいと望んでいる。たとえばIPGのCadreon部門やVivakiの”audience on demand network”はどちらも、クッキー交換やリターゲティング(re-targeting)データベースなどからの独自データの提供をねらっている。そう いう新しいデータを利用して既存のクリエイティブ資産のターゲティングを改善するだけでなく、代理店たちは毎回そのときだけで終わる“なにかすごいキャン ペーンアイデアはないかね“タイプのビジネスから卒業したいと願っている。消費者たちは、従来のオンラインマーケティングの、帯域を大食らいし、ホーム ページを乗っ取る「お邪魔虫」たちをますます無視するようになっている。ソーシャルメディアの平均的ユーザは、今では本物の人間からの本物のメッセージし か相手にしない。広告代理店は、多様なソーシャルグループによっていろんなやり方で共有され配布され、しかもブランドの基本的な価値を維持できるような、 低帯域の広告コンテンツの作り方を学ぶ必要がある。〔*: DSP, 精度の高いターゲット消費者/購買者像==需要者データを提供するプラットホーム。〕
広告代理店は、ソーシャルメディア、コミュニティの中で、バケツリレー方式でうまく情報を流通させる方法を、なんとか編み出したいと考えている、というわけだ。
次にメディア企業の課題。
パブリッシャー*は自分の上質なオーディエンスを自分のサイトの外部に安売りしたくない〔*: publisher, コンテンツや広告の掲載者、ページのオーナー〕。代理店は彼らの貴重な…営業コストのかかっている…オーディエンスを、クッキーデータのばらまきなどに よって、大量の広告在庫を抱える広告ネットワークにはした金で売り飛ばそうとするが、それはパブリッシャーにとってまったく割に合わない。それに対し上位 100ぐらいの有力パブリッシャーは、クッキーの消去を要求する消費者保護団体と提携してユーザの匿名化を図るだろう。ESPNやWSJは、すべてのユー ザがクリック直後に匿名化されることを喜ぶはずだ。これは、Googleのインデクスから自分のコンテンツを外したいと考えるMurdochの意図に似ている。情報の配布者がユーザのアイデンティティを情報の消費のコンテキストから切り離せるようになったら、“無料”配布の価値も大きく損なわれるだろう。
これは、メディアサイトの運営者が広告枠の安売りにうんざりしているという話だ。広告主から直接広告出稿をもらえばそれなりの広告料金がもらえるのに、多くのメディアサイトは広告がつかないため仕方なしに広告ネットワークに広告枠を売っている。自分たちのコンテンツには自信があるのに、その自信あるコンテンツを広告ネットワークという仲介者が広告主に対して二束三文で売っている。確かにそう考えるメディアサイトは多いと思う。いまいましく思うものの、広告枠を空のままにしておくよりも、二束三文でもいいからいくらかの収入を得るほうを選択しているのが、多くのメディアサイトの現状ではないだろうか。
一方で、広告ネットワークってクッキーというユーザー認識データを使ってユーザーがどのサイトのどのページをみたかという記録を集めることでターゲティングしてるんだけど、これってプライバシー保護の観点からどうよ、という意見がある。特に消費者団体が最近、うるさく主張し始めている。メディアサイトは、もともと広告ネットワークをいまいましく思っているので、この際、消費者団体の意向に沿ってユーザーのクッキーを消そうか、という動きが広まるんじゃないか。Goldstein氏はそう考えるわけだ。
もちろん弱小メディアサイトは、自ら広告ネットワークの収入を諦めることはしないだろうが、大手サイトの間ではクッキーの使用を制限するという動きに発展するかもしれない。マードック氏のように、Googleに検索されないようにしたいという考えもあるくらいだから、クッキーを制限するという動きが出てきても不思議ではないかもしれない。
でもそうなるとメディアサイトにとっては収入減になる。たとえ二束三文だといっても、不景気のさなかだし、もらえるお金はすべてもらいたいと思っていることだろう。だから別の、より効率的なマネタイズの手法を求めてソーシャルメディアに注目する、というのがGoldstein氏の予測である。
そして最後に広告主が抱える課題。
広告主たちは自分自身のソーシャルグラフを作って維持する信認義務を認識する。これまでのソーシャルメディアはブラン ド(企業や製品)にとって、いろんなやり方をROIとは無関係に試せる遊び場(プレイグラウンド)だった。FacebookやiPhoneのアプリケー ションを作ったマーケターは、配布が無料ではないことを知る。そこで彼らはTwitterのアカウントやFacebookのブランドページを利用してス ケールアップをねらうが、しかしそのやり方をマーケティングのそのほかの部分に応用できない。一方消費者たちは、たえずブランド(企業や製品)のことをコ ミュニティでおしゃべりしているし、どの製品やサービスが好きだ嫌いだという声があちこちで飛び交っている。広告主たちが、このような対話に関する知識 を、それが生じているソーシャルネットワークの中だけに放置するとしたら、それはとても、もったいないことだ。むしろ必然的に今後の企業は、自分たちのブ ランドに関するすべての言及と、その発言者(とそのフレンド)たちのアイデンティティに関する情報を、自分自身のソーシャルグラフとして持つ必要に迫られ るだろう。
広告主はこれまでもソーシャルメディアの中で企業アカウントを持ったりしていろいろ実験してきた。そうした実験でこれまでに分かったことといえば、情報を流すのって結構お金がかかるのね、という当たり前のことだけ。もちろん中にはかなりのfollower数を獲得した企業アカウントもあるにはある。でもそうした企業でさえ、そうしたソーシャルメディア内の活動を通じて得た消費者とのつながりを、マーケティングにどう活かせばいいのかまだ全然分かっていないのが現状だ。
でも消費者はソーシャルメディアの中でいろいろな企業や製品の話をしているんだし、企業としても、もうそろそろソーシャルメディア内での活動を通じて得た消費者とのつながりを活かした、もっと有効なマーケティング施策に乗り出すんじゃないだろうか。Goldstein氏はそう考えている。
では具体的に広告代理店、メディア企業、広告主は何をすべきか。Goldstein氏はこう提案する。
メディア経済においてこの変化に対応するためには、企業はFacebook ConnectやTwitterのAPIなどを組み込んだアイデンティティフレームワークを確立する必要がある。
アイデンティティフレームワークというのは、オンラインのアイデンティティシステムという言葉と同じことを指していると思うのだけど、Twitterなんかでの「今なにをしている」という情報と、だれをフォローしていて、だれにフォローされているのかという情報のかたまりことをいうのだと思う。」
広告代理店のシステムも、メディアサイトも、広告主のサイトも、FacebookやTwitterのデータと連携することによって、「今なにしている」という情報に沿った的確な情報やマーケティングメッセージが、そのユーザーの友人関係を通じて広がっていくような仕組みを構築すべきだと言っているのだと思う。
そしてベンチャー企業は、この方向に時代が進んでいることを認識し、上に挙げた広告代理店、メディア、広告主の課題を解決するようなテクノロジーや仕組みの開発を目指すべきだ、ということだ。こうした課題を解決できたベンチャー企業は大きく成長することになるとしている。
まとめると、状況からして時代はソーシャルメディアのマネタイズを求めている。バナー広告、ソーシャルゲーム内でのデジタルグッズ課金、の次のマネタイズの手法を求めているということだ。次のマネタイズ手法は、どう考えてもアイデンティティシステムを活かしたものになるのは間違いない。
ベンチャー企業よ、ここを目指せ!
いでよ、究極のソーシャルメディアマネタイズ手法!
そういう主張のエントリーなのだと思う。