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iPadというタブレット型メディアと、アプリになる広告

 iPad自体がどの程度普及するのかは分からない。分からないが、iPadがメディアの次の進化に向けた重要な一歩であることは間違いないと思う。

 力道山のプロレスの試合を映し出す街頭テレビに黒山の人だかりができた時代から、テレビがお茶の間に入ってきた時代になり、そしてテレビが家族一人一人の部屋に置かれる時代になった。そしてiPadようなタブレットは、メディア消費のカタチをもっと手元に引き寄せたものにしようとしている。

 Apple自体がiPadをネットブックの対抗機種と位置づけ、仕事のツールであるiWorkというアプリケーションを搭載してきているのだけれど、恐らくiPadをタブレット型PCととらえるべきではないのだろう。さらに言えばコンピューターとメディアの中間のデバイスとしてもとらえるべきではない。テレビ、ラジオ、雑誌、新聞などのメディアの次のカタチとしてとらえるべきなのだと思う。タブレット型PCではなく、タブレット型メディアなのだと思う。

 そういうとらえ方をすれば、マルチタスキング機能が搭載されているのかどうかFlashに対応しているのかどうか、というコンピューター的な議論はさほど重要ではなくなる。重要なのはタブレットというデバイスを通じて、ユーザーがテレビ、ラジオ、新聞、雑誌というメディアをどの程度自由自在に操れるようになってきているのかという観点だ。人間にとって自然なメディアの操作性がどれだけ増したかという観点が重要なのだと思う。

 キーボードやペン入力ではなく、指を使っての操作性が増したということは、重要な第一歩だろう。将来は音声入力や脳波によるメディア操作も可能になっていくのだと思う。能動的に操作しなくても「疲れたので、リラックスできる音楽と映像がほしいなあ」と思っただけで、望み通りのメディア体験を提供してくれる、そんなデバイスへと進化していくのだろう。

 さてメディアが指を使って操作可能なものに進化しようとする中で、広告はどう変化していくのだろうか。チャンネルを変えるぐらいの操作性しかユーザーに与えられていなかったこれまでのメディア環境の中では、広告はユーザーの注意を引く必要があった。コンテンツと広告は、ユーザーの視線、アテンションを奪い合う必要があった。広告はコンテンツと対立するものだった。

 しかし操作性の急速な進化がこれからの方向性である。不必要な広告は簡単な操作一つで次々と飛ばされたり、削除されたりするようになる。

 ではどうすればいいのか。広告はユーザーにとって便利なもの、使えるものに変化せざるを得ない。それが須田和博さんが書いた使ってもらえる広告の主張なのだと思う。

 では具体的にiPadのようなタブレット型メディア上での使ってもらえる広告とは何か。


 それはアプリだと思う。指を使ってあれこれ操作する中で、広告主の製品の価値を理解できるようなアプリというものがタブレット上で求められるようになるのだと思う。広告クリエイターのクリエイティビティはその方向に向かうべきなのだろう。

 iPadがどの程度普及するのかは分からないが、タブレット型メディアが今後のメディアの方向性であることは間違いない。その中で広告はアプリになり、ユーザーにとっての便利なサービスへと進化していくのだと思う。

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