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アプリのApple、ブラウザのGoogle=それぞれのモバイル戦略

 IT業界の主戦場がパソコンからモバイル機器へと移行し、AppleとGoogleというIT業界の巨人同士がモバイル関連技術の中で激しく衝突し始めた。先行するのはiPhoneで大成功したApple。その後をGoogleがAndroidと呼ばれる基本ソフト搭載のモバイル機器で追う。

 勝負の分かれ目は、自社以外のプログラマーの支持をどちらが多く取り付けるか。iPhone用基本ソフト、Android基本ソフトのどちら向けに、世界中のプログラマーがより多くの追加機能プログラムを開発するか、になる。

 ただ両社の戦略は、実は微妙に異なる。AppleはiPhoneアプリと呼ばれるiPhone専用プログラムの品揃えを武器に戦う考え。一方でGoogleは、ほとんどすべての機能をアプリ上ではなくブラウザ上で実現する考えだ。


 ブラウザで見れないサイトがあるiPhone

 iPhoneのブラウザは、指を使った直感的な操作で大人気を博したが、ただ1つ欠点がある。Flashと呼ばれる動画の制作技術に対応していない点だ。市販されているパソコンでは問題なく表示できるのに、iPhoneのブラウザでは表示できないウェブページがあるのはこのためだ。

 3月末発売予定のAppleのタブレット型パソコンiPadもFlashに対応しないもよう。iPhoneの小さい画面でウェブページを完璧に表示することを期待する人がもともと少ないため、iPhoneのFlash未対応はそれほど問題視されなかったが、パソコン並みに大きな画面を持つiPadがFlash対応しないことはかなり問題になりそう。Flash技術の開発元であるAdobeの技術者は、自身のブログでiPadで表示できなくなるとみられるウェブサイトの一部をはめ込み写真を並べて羅列し、iPadのFlash未対応に抗議している。(関連記事:Flash未対応のiPadのウェブ体験は「最高」じゃない=Adobe社員がポルノサイトなどを例に批判

 Appleによると、iPhone、iPadをFlashに対応させないのは、モバイル機器のブラウザをFlashに対応させると不具合を起こす可能性が高くなるからだそうだ。一方であらゆるページを表示しなければならないブラウザとは異なり、1つの用途に限定したiPhoneアプリでは、Flashに対応することは可能。そこでiPhone上では、ブラウザではなくアプリでいろいろな機能を実現する状況になっていた。ちょうど一昔前のパソコンが、ワープロ、表計算などのいろいろなアプリケーションプログラムを搭載していたのと似たような状況だ。最近のパソコンは、インターネット接続が当たり前になり、各種機能はネット閲覧ソフトであるブラウザ上で実現できるようになってきた。一部ネットブックなどは、ワープロ、表計算といったアプリケーションさえブラウザ上で使えるようにして、一切アプリケーションプログラムを搭載しないものもある。

「ブラウザが進化すればアプリは不要」

 Googleはこうしたブラウザ中心の使い方を、Androidケータイなどのモバイル機器でも普及させたい考えだ。Googleがリリースする最近のサービスは、専用アプリではなくブラウザを使ったサービスとしてリリースされるケースが増えてきている。それはこうした考えによるものとみられる。

 Googleによると、ブラウザがFlashに未対応でも、ブラウザの技術が進化すればFlash並みの表現がブラウザ上で可能になるという。HTML5と呼ばれる新しいブラウザ技術ではそれが可能で、HTML5がいずれ広く普及すれば専用アプリはあまり必要ではなくなるという。(関連記事:数年でモバイルもアプリよりブラウザベースにiPhone対Android、勝つのはブラウザベースのサービス

 そうなれば既に1万400014万タイトル以上といわれるiPhoneアプリの品揃えを誇るAppleの優位性も、それほど意味を持たなくなる。

 Apple、Google、どちらの戦略が功を奏するのか。しばらくは目が離せない。

【更新履歴】iPhoneアプリのタイトル数を14万に修正しました。

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