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電子書籍は、デジタル化された本ではなく書籍化されたアプリ

 子供向け書籍の出版で有名な英ペンギン・ブックスのCEO、John Makinson氏はこのほど、英ロンドンで開催されたFinancial Times主催のイベントで講演し、業界標準となりつつある電子書籍のデータフォーマットであるe-pubに対応した電子書籍よりも、iPhoneやiPad向けのアプリケーションとして書籍を発行する考えを明らかにした。

 電子書籍をデジタル化された本ととらえ、紙の書籍をデジタル機器上で忠実に再現しようという試みが多い中で、同氏は本の形の固定観念にとらわれずに自由な発想で新しいメディアを作り出そうとしているようだ。

 同出版社は、どのような電子書籍を作ろうとしているのか。その試作品の映像がYouTubeにアップされているので、見ていただきたい。


 見ていただくと分かるように、デジタル化された本というより、書籍化されたアプリというイメージだ。実際iPhoneのAppStoreで販売されている子供向けアプリの中には、お絵かきできるアプリや、トランプの神経衰弱のようなパネルマッチゲームのアプリが多く存在する。

 星座表の電子書籍も、AppStoreで販売されているStar Walkという名称のアプリに非常に似ている。わたし自身、Star Walkを購入しiPhoneに搭載しているが、非常によくできたアプリだ。本だと夜空の下では懐中電灯で照らさないと読めないが、iPhoneなら読める。それに何よりもiPhoneのGPSや電子コンパス、加速度センサーを使って、iPhoneがどの方角に向けられているのを把握し、その方角の先にある星座を画面に映し出してくれるのがすばらしい。夜空に浮かぶ星座の名前を知りたければ、iPhoneをその方向にかざせば、その星座が映し出されるのだ。

 ペンギン・ブックスのMakinson氏は、読者がデジタル書籍に、音声や映像、各種機能を追加することを望んでいるのか、望んでいるとするならどの程度の追加が望まれているのか、などはだれにも分からないと言う。ただ試行錯誤していくしかないと語っている。同氏の講演がYouTubeにアップされているので、下に貼り付けた。

 同氏によると、こうした機能満載の電子書籍を作るには、業界標準となりつつあるe-pubというデータ形式では不十分なので、当面はiPhone、iPad向けのアプリケーションとして開発する考えのようだ。

We will be embedding audio, video and streaming in to everything we do. The .epub format, which is the standard for ebooks at the present, is designed to support traditional narrative text, but not this cool stuff that we’re now talking about.

So for the time being at least we’ll be creating a lot of our content as applications, for sale on app stores and HTML, rather than in ebooks. The definition of the book itself is up for grabs

 Makinson氏の考え方でもう1つおもしろいのは、書籍をソーシャルなものとしてとらえている点だ。

the Vampire Academy “book” is “an online community for vampire lovers” with live chat between readers

 同社のベストセラーに吸血鬼の物語the Vampire Academyというのがあるのだが、同氏はこの本のことを、吸血鬼に興味を持つ人たちの集まるコミュニティととらえている。事実、既にウェブ上にこの本の愛読者のためのサイトができていて、TwitterやFacebookなどのアカウントも用意されている。

【ネタ元】PaidContentの記事
First Look: How Penguin Will Reinvent Books With iPad

 すべての書籍に、音声、映像、各種機能を盛り込む必要はないかもしれない。だが各種機能付きの電子書籍は新たな収入源になる可能性は高い。出版社は、アプリのデベロッパーに転身できるのだろうか。

 われわれTechWaveも、電子出版を基幹業務の1つと位置づけ開発を進めている。われわれもMakinson氏同様に、電子書籍を書籍化されたアプリとしてとらえ、各種機能を搭載するつもりだ。早ければ1、2カ月以内にリリースできると思う。乞うご期待。

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