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WiFi位置情報系App一斉削除は「Appleの新地図サービス」のため? 【増田(maskin)真樹】

クウジットは6日、同社の位置取得技術「PlaceEngine」がアップルのApp Storeの再審査に引っかかり、そのあおりで搭載アプリ「セカイカメラ」や「Yahoo!地図」など6本のアプリが非公開となっている問題で、公式に対応を表明した。

非公開となったアプリケーションについては、一端 PlaceEngine を非搭載としたうえで再審査の手続きを進めるよう、関係者の方々と調整中です。

結局、クウジットおよびアプリ提供社側はなすすべも無いようで、PlaceEngineを外した形でアプリを組み立て直し、再審査を受けるという策を取らざるを得ない模様。

iPhoneにGPS機能(Geolocation API)がある以上、そちら経由で緯度軽度を取得すればいいという話もあるが、(ムラはあるものの)公衆のWiFiの電波を使った位置計測技術であるPlaceEngineの精度にはかなわない。Appleの審査却下の狙いは、そんなローカルエリアでの精度を脅威(またはビジネス上の不都合を)に感じたからではないだろうか。


あやしいことにクウジットのプレスリリース文の中には却下の理由が明確にされていない。セキュリティ上の問題である可能性も考えられるが、それなら逆に正しく伝えるべきだ。

今回、無線LAN電波情報の取得方法に関する App Store の審査により、過去リリースされた上記アプリケーションのダウンロードができなくなりました。

そもそも、以前からApp Storeの審査について「具体性に欠ける」という評判が広がっている。この発表についても何ら具体的なことが記載されていないことからも、クウジットはアップルから審査拒否の詳細をきちんと知らされていないのではないだろうか。しかも、湯川さんの記事では、WiFi電波にアクセスする同様のアプリは軒並み削除されていると伝えている。

はやり、気になるのは、度々噂になっているアップルの「位置情報&地図ビジネス」との関係だ。 もし、アップルが同種のビジネス展開のために、締め出しをしているのだとしたら、より大きな問題と発展する懸念もありそうだ。

そう思う理由がある。「Appleが地図のエンジニアを募集(していた)次期iPhoneの目玉は地図だと思う根拠」に登場する、Appleが買収した地図サービスの会社「PlaceBase」が提供する「PushPin」という地図サービスAPIの可能性が半端じゃないのだ。

詳細は別の記事でお伝えしたいと思うが、ウェブへの埋め込みはもちろん、アプリケーション等とのマッシュアップも自在(PushPinのマッシュアップ例)で、広告業界等が注目する「ローカル広告」「ローカル検索」との相性もいいとある。少なくともGPSではカバーしきれない精度をもってして始めて、その可能性を活かし切るタイプのサービスといってもいいだろう。

今回のPlaceEngine却下によって、セカイカメラが過去に実施した「ファッションショーのブース内WiFi電波と連動」といった企画は困難になる。そこに、AppleのiPhone/iPad対応 高精度新地図サービス登場となれば、一気に市場を独占する絵が描けないわけではない。

[クウジット PlaceEngineを利用したiPhoneアプリケーションの公開停止について ]
[PlaseBase PushPin]

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(増田(maskin)真樹)

 

著者プロフィール:増田(maskin)真樹

 1990年より執筆およびネットメディアクリエイターとして活動を開始。
 週刊アスキーを初め、日経BP、インプレス、毎日コミュニケーション、ソフトバンク、日経新聞など多数のIT関連雑誌で活躍。
 独立系R&D企業のマーケティング部責任者の後、シリコンバレーで証券情報サービスベンチャーの立ち上げに参画。
 ネットエイジでコンテンツディレクターとして複数のスタートアップに関与。ニフティやソニーなどブログ&SNS国内展開に広く関与。
 現在、複数のメディア系ベンチャー企業にアドバイザー・開発ディレクターとして関与。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。
 書き手として、また実業家として長年IT業界に関わる希有な存在。詳しいプロフィールはこちら

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