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ブックファースト新宿店で行われた「ツイッターノミクス」の著者であるタラ・ハントさんと、「ツイッターノミクス」に解説文を寄稿した津田大介さんのトークイベントに行ってきました。会場はそんなに大きくありませんでしたが、Ustreamでは500人ほどの方が見ていたみたい。会場に設置されたスクリーンにも、忙しく流れるツイッターのTLが映し出されていました。
「ツイッターノミクス」は、タラさん個人のウッフィーがどのように増えていったか、また彼女が携わってきた多くの企業が、ソーシャルメディアを正しく活用することでいかに成功したかの事例が多く含まれています。当然、学ぶことの多い失敗例も紹介されています。今回のイベントでは、「ツイッターノミクス」の基本にあるコンセプト「ウッフィー」が主役でした。改めてウッフィーを理解するいいきっかけになったように思います。
そもそも「ウッフィー」ってなに?
ウッフィーという言葉は、著者のタラさんが創りだした言葉ではなく、彼女がすごく影響を受けたというコリイ・ドクトロウ著の「マジック・キングダム」というSF書で登場するソーシャル・キャピタルです。その物語に通貨は存在せず、人の評価を表すために「ウッフィー」が使われています。ウッフィーのスコアが高い人は信頼され、その結果としてネットワークを持っています。ウッフィーは、人が持つソーシャルパワーを表現する単位なんですね。「ツイッターノミクス」で簡潔でわかりやすい説明があるので引用します。
ウッフィーは、その人に対する評価の証と考えればいい。人に喜ばれるようなことをしたり、手助けをしたりすれば、あるいは大勢の人から尊敬され評価されれば、ウッフィーは増える。逆なら、減る。
個人であろうと企業であろうと、信頼・信用、つまり「ウッフィー」を増やすことで道が開かれます。企業にとってウッフィーを増やすことは、顧客といい関係を築いていることを意味し、その企業が話題になる機会が増えることを意味するんです。
まずは、津田さんからタラさんに投げかけた質問と、彼女の答えをQA形式でご紹介しましょう。
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信頼されるためには十分なコミュニケーションをとることが必要不可欠で、またソーシャルメディアも結局コミュニケーションをとることが重要ですよね。でも口下手なうまく自分を表現できない人はどうすればいいのか。
A. ウッフィーは、必ずしもネットワークや人脈の広さで表されません。ウッフィーはむしろ、自分のコミュニティに貢献することを意味するの。だからギークで無口なプログラマーのような人で、ツイッターやブログもあまりやらないし、自分の内面を見せない人でも、例えばオープンソースプロジェクトにコードをたくさん提供するとか、そういう場でディスカッションに参加するとか、そんな形での貢献の仕方があると思う。実在する例に、Readwritewebのリチャード・マクマラソン氏がいるわ。彼はすごくシャイだけど、本当に素晴らしい記事や情報を提供することでコミュニティに貢献しているの。
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Q.ウッフィーをいじって高いように偽造されることへの懸念はない?
人が評価される場に、eBayなどオークションの評価制度がありますが、評価が高いように細工してしまうことができる。意図的に、ウッフィーが高いように見せかけるといったことへの懸念はないのか。
A.ソーシャルキャピタルである「ウッフィー」の素晴らしいところは、その価値が同じ尺度ではかれないことよ。私にとっての価値とあなたにとっての価値は違う。共通の尺度がないから、コンピュータではかることもできないし、偽造もできない。
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Q.人からのマイナスな反応にどう対応するのか?
人に好かれたい、信頼されたいと思っても、中には批判的なことを言ってくる人などがいる。そんなとき、どう対応べきかが「ツイッターノミクス」にはわかりやすく書かれていた。
A.以前、自分の書いたブログポストにすごく否定的なコメントをしてきた人がいたの。私が犯した過ちは、それに対してすごく保守的に反応してしまったこと。守りに入ってしまったのね。運悪く、コメントの主は他のコミュニティですごく影響力の強い人だった。その後、荒らしのコメントが何百もきてしまったの。
私はもっと違うリアクションをとるべきだった。例えば、どこが良くなかったのか質問して、関心を示すような反応をする。もしくはユーモアや冗談で返すとかね。個人攻撃されたと思ってはダメ。ネットの世界だと忘れてしまいがちだけど、相手が感情のある生身の人間であるってことを心に留めておくべきだと思う。
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ここまでのお話は、かなり個人レベルでのウッフィーに関する内容が多かったのですが、ここで質疑応答の時間に会場から出た質問をご紹介します。
Q.「ツイッターノミクス」に、「これまでマス広告で取られてきた企業から顧客への一方的なコミュニケーションはなくなる」とありますが、このギフトエコノミー的にコミュニケーションをとる構造が、広告マーケティングやメディアをどう変化させるか?
A.いかなる産業も時間が経てば変わっていくもの。例えばレコードがカセットテープになり、それがCDになり、デジタルミュージックになったのと同じように。ジャーナリズムだって、どんどんオンラインの活用が増えている。さまざまな技術によって産業が変わってきていて、広告はその一つに過ぎないわ。でも、ここに関するグッドニュースは、とあるアメリカのアンケート結果で、商品やサービスを買うかの意思決定において、そのブランドとコミュニケーションをとってから決めたいというユーザが78%という結果が出ているの。
ソーシャルウェブが出てくるまで起こらなかった、消費者との対話が可能になっている。だって、ビルボードやテレビCMは会話ができないでしょ。ソーシャルウェブが生まれたことで、私たちとブランドの関係が強化されている。これは、顧客・会社、みんなにとっていいことだと思う。どんなにピカピカなマーケティングツールより素晴らしいし、革命的よ。これからのマーケティングの手法を大きく変えていくでしょう。
タラさんは、自分の利益や得を考えず、自ら「与えること」がウッフィーを増やす近道だと言っています。今回のイベントで、ウッフィーを増やした個人の体験談を共有してくださった女性の話がとても印象的だったので共有させてください。
その女性はご自身が癌治療の経験をお持ちで、ツイッターでパートナーが癌の宣告をされたCさんを見つけたそう。女性がCさんに役立つ情報などを教えてあげていると、他にもCさんのもとにお医者さんや多くの方から癌に関する情報が集まったそうです。感激したCさんは、「今、丸の内線の中で泣いているのは私です。」とツイートしました。それにすごく感動した女性。彼女はこの時、テレビ局のディレクターとしての仕事を続けるか迷っていたそうなんですが、背中を押され、前に進むことができたんだそうです。
少し涙ぐんだ彼女が話し終わると、会場から拍手が沸き起こりました。これこそソーシャルウェブの力なんじゃないかな、と強く感じた瞬間でした。ソーシャルウェブが、共有すること、それは単なる情報共有に限らず、「相手の感情に共感する」といったことへの敷居をすごく低くしてくれているんじゃないかと。
これまで、手伝いましょうか?なんて声をかけたい状況に出くわしても、恥ずかしくて声がかけられないとか、お節介だったらどうしよう、なんて思って手を引っ込めることがありました。でもソーシャルウェブの登場で、見ず知らずの人に対しても、自分のできることをしてあげることが習慣になってきた。そしてその習慣が、リアルの世界にも反映されていることを実感しています。情報や感情、色々なことを「共有すること」がすごく自然になってきている。それらの根底にある信頼や信用が、タラさんの「ウッフィー」という言葉に表されているのではないでしょうか。津田さんが素敵なことをおっしゃっていました。「ソーシャルウェブの世界って正直者がバカを見ないんじゃないか」と。その通りなのかもしれません。
最後に、津田さんからタラさんへの「なんとなくウッフィーについてわかったけれど、ウッフィーを増やすために今すぐできるアドバイスを教えてほしい」という投げかけに、タラさんはこう答えてくださいました。
これは決して簡単ではないけれど、みんなが頭を切り替えて、これからくる新しい未来に好奇心をもってワクワクすることじゃないかしら。それが始まりだし、そこから正しい道が開ける気がする。
誰にも同じだけのチャンスがあるソーシャルウェブを、個人そして企業がどう活用するのか、そのガイドラインとなるのが「ツイッターノミクス」です。ウッフィーについて、そしてウッフィーが飛び交うソーシャルメディアについて知りたい!という好奇心をお持ちの方は、ぜひ一度読んでみていただければと思います。
【お知らせ】
イベントへの参加とは別に、著者のタラさんにインタビューもしてきました。インタビュー記事は別途掲載しますのでお楽しみに。
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