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先日のトークイベントでも興味深いお話を聞かせてくださったタラ・ハントさんに、単独インタビューをしてきました。「ツイッターノミクス」についてはもちろんのこと、常にチャレンジし続けるタラさんご自身についても色々と伺うことができました。インタビューは、前編・後編と2回に分けて掲載します。
今回のインタビュー記事をまとめるにあたって、再度「ツイッターノミクス」を読み返してみました。改めて、組織の規模やサービス内容に関わらず、ソーシャルメディアに携わろうとする方に必ず何かしらのヒントを与えてくれる1冊であることを確信しました。
前編では、ウッフィーをつくり増やすためにその活用が必要不可欠なソーシャルメディアについて話していただきました。
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Q.この本を書くのに至ったきっかけは?
A.人って、みんな何となく本を書いてみたいって思いを持っている気がする。私もずっとそういう思いは持っていたの。でも私はすごく運が良かったのだと思う。ブログを書いてコンファレンスなんかで話をしているうちに、ある日、何の前触れもなしに出版プロデューサーが連絡をしてきたの。「あなたのブログ、すごくいいと思う。オリジナルなコンテンツがあるし、素晴らしいアイディアもあるし、ファンも多い。本を出したらきっと人気が出ると思う」
これがすべての始まり。そこから半年かけて何について書くかを一生懸命考えたわ。自分がこれまでブログに書いてきた内容は、私にとってすごく自然なことだった。でも、エージェントに話をしていると、私にとっての「当たり前」が多くの人にとって当たり前じゃないってことに気づかされたの。ただ自然に感じることをやっているだけの状態から、これって結局どういうことなの?ってまとめて考えていくうちに、「ウッフィー」というコンセプトにたどり着いたわ。2006年末から2007年頭にかけてのことよ。
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Q.ソーシャルメディアとソーシャルネットワークという言葉をどう使い分けてる?
A.私の中で、ソーシャルメディアっていうのは道具のコレクションなの。ツイッターやFlickr、ひとつひとつが大きなバケツに入ったツール。対して、ソーシャルネットワークは、そのツールの中のツールでコミュニティだと思ってるわ。
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Q.「ツイッターノミクス」を読んだ読者に何を持ち帰ってほしい?
A.読者に何より理解してほしいのは、ソーシャルネットワークに参加するということは、個人の損得の話ではなくて、コミュニティの話だということ。コミュニティにいかに貢献し、それが結果として自分に返ってくるかという話であることよ。
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Q.「ツイッターノミクス」の中で好きなページやセクションは?
A.第10章の「社会貢献そのものを事業目的にする」はとっても気に入ってるわ。ギフトエコノミーについての話があったり、自ら与えることで自分のウッフィーが高まることについて書いたセクションなの。
第10章「社会貢献そのものを事業目的にする」冒頭文
高い目標を持つ企業は、製品やサービスの提供を通じても、それ以外の形でも、コミュニティに貢献する。この貢献を、私は「贈りもの」と呼んでいる。つまり、ギフト経済のギフトである。ギフト経済は市場経済と平行して機能し、市場経済でお金をやりとりするように、贈りものをやりとりする。贈りもののやりとりが増えれば増えるほど、ウッフィーが増えるのがギフト経済の原理だ。
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Q.数字を求めるクライアントに、ソーシャルウェブでの成功は数字がすべてではないことをどう説得する?
A.ここ何年も続いているバトルだと思うわ。数字だけを見ないようにクライアントを説得することって、アイスクリームしか食べたことのない人に魚ってこんな味がするのよって伝えようとするようなこと。でも伝えようがないの、だって比較の仕様がないでしょ。大企業を含むクライアントが定量的な指標からソーシャルネットワークについて話すとき、彼らはソーシャルネットワークの本質を読み違えてる。
そういう時は一歩下がって、そもそも測ろうとする前に、ソーシャルネットワークにまつわる物語やいろいろな事例を紹介するの。それぞれの事例にどんなメリットがあったのか、顧客とどんな関係が形成されたのか、長期的な成長について話をするの。それを伝えたうえで、どう効果測定できるかを話す。必ず、定量的な指標とストーリーなどを含む「質」の組み合わせで考えなきゃ。意味のある指標の背景には、いつもストーリーがあるものよ。本の中でも紹介している指標のひとつが「共有すること」。あなたの製品を購入したりサービスを利用したユーザ、またはあなたのコミュニティに参加したユーザのどれだけが友達にその情報を共有したか。そしてその裏にあるストーリーもね。
「ツイッターノミクス」の中にあげられている、コミュニティの達成度を測る指標の例。
・新規会員の増加率と脱会率。
・新米ユーザーが活発に参加するまでに要する平均時間。
・外部で話題になった回数。
・メンバーがやりとりするメッセージの平均件数、最高件数、最低件数、ほか。
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Q.ソーシャルネットワークをこれから活用したいという企業のマーケッターがまずやるべきことは?
A.当然企業によって異なる部分はあるけれど、本の中の「ウッフィーを増やす5つの原則」のいちばん最初に来ていること、「大声でわめくのはやめ、まずは聞くことから始める」ね。いちばん簡単だし、まずユーザの声に耳を傾けることで、ソーシャルネットワークとそれを活用することのメリットが理解できると思うから。だからまず一番にするべきは、「聞くこと」ね。
【ウッフィー・リッチになるための私なりの原則】
1.大声でわめくのはやめ、まずは聞くことから始める。
2.コミュニティの一員になり、顧客と信頼関係を築く。
3.わくわくするような体験を創造し、注目を集める。
4.無秩序もよしとし、計画や管理にこだわらない。
5.高い目標を見つける。
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Q.もしあなたがツイッターやFacebookなどの役員だったら、彼らのサービスの何を変える?
A.この点に関して、ツイッターはすごく上手くやっていると思うけど、「コンテンツやデータをオープンにすること」かな。Facebookはこれが十分にできていないと思う。コンテンツがオープンになっていなきゃ、私たちが共有したり好きに整理したりってことができない。これはソーシャルネットワークに限らず、ユニバーサルな共有メカニズムだと思うけど。ツイッターに関しても、過去のツイートを全部保存すべきだと思う。どこかには保存されているのだけれど、私たちの手の届かないところにある情報は「ないに等しい」のだから。
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Q.日本の読者、または女性の読者にメッセージはありますか?
A.初めてやってみたのだけれど、「プリクラ」って本当に最高ね。ベンチャーなんか立ち上げるのやめてプリクラブースでも開こうと思うくらい(笑)すごく楽しかったけど、女友達と一緒に手でハートとか作って撮れなかったのは寂しかった。みんな楽しそうにやってるのに。
日本のベンチャーが出資が集まらなくて苦戦していると聞いたけれど、ビジネスを変える最適の方法は新しいアイディアをサポートすることだと思う。アメリカでスタートアップと携わる仕事をして学んだことは、そしてこれは「ツイッターノミクス」の中でも重要なポイント、そして私の哲学でもあるけれど、それは「リスクをとること。リスクを恐れないこと」よ。本能で感じる、自分が強く信じることなら、リスクをとることは自己実現のいちばん手っ取り早い方法だもの。
日本はこれまで、本当に様々な分野で他国より先頭を走ってきたと思う。でも、もし仮にアメリカに競争優位性があるとすれば、それは「リスクをとることを恐れない」文化にあると思う。リスクをとることってアメリカ文化のコアな部分と言ってもいいくらいだもの。リスクをとることが前進することにつながるし、リスクをとる人が応援される文化。アメリカで「スタートアップをやる」って宣言したら、人はみんな拍手をして喜んでくれる。
私の出身地のカナダもリスクをとることを良しとしない文化があって、この点はヨーロッパや日本に近いところがあると思う。子どもの頃から、安定した仕事に就きなさないね、大企業に入って高いお給料もらいなさいねって。もし自分でビジネスを立ち上げるなんて言ったら心配されちゃう。でもスタートアップをやるってことは、自分の直感や強信念を持っているということだし、それはみんなに祝福され、支援されるべきだと思う。この文化がもっと広がることを願ってる。カナダも徐々にそうなってきていて、私がモントリオールに戻ったのも、色々な変化があって強力なテクノロジー企業が増えてきているからなの。
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タラ・ハントさんのお話にすごく説得力がある理由、それはゼロだったウッフィーを、彼女が自らの努力と言動で獲得し、今いる場所にいるという事実にあるんだと思います。カナダからシリコンバレーに移住したとき、彼女にアメリカでの実績は何一つなく、まさにゼロからのスタートだった。そんな彼女が詳しく明かしてくれるソーシャルウェブのパワー、それを理解し活用したことで、彼女の物語が「ツイッターノミクス」という素晴らしい書籍として世に残されることになったのでしょうね。
インタビュー後編では、地元カナダで彼女が始める新しい取り組み、また早くも出てきた2冊目出版のお話までをお伝えします。どうぞお楽しみに。
肩書きウェブディレクター。ディレクションの他、翻訳やライティングなど、フリーでお仕事してます。ツイッターIDは”yukari77“。
個人で運営している【TechDoll.jp】というサイトで、海外のテクノロジー、ソーシャルメディア、出版、マーケティングなどの情報を発信しています。目指せタイムリーな情報発信!
これまで雑誌のECで→UIデザインのコンサル→ウェブ制作会社などを渡り歩いてきました。そこで得たスキル、人、全部かけがえのない財産。幸せの方程式は、テクノロジー(UI, IA..)×マーケ×クロスカルチャー×書く・編集。いま一番夢に近いとこにいる。
詳しいプロフィールはこちら。
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