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Facebookソーシャルプラグインまとめ=AISASは時代遅れに?【湯川】

 Facebookの新戦略が「ウェブ全体のソーシャル化を進めるものだ」という説明だけでは具体的にどういうことか分からない・・・。Twitterなどでそんな反応を見かけたので、ユーザーにとって一番分かりやすい部分であるソーシャルプラグインを詳しく解説することにした。

 プラグインとは、ブログパーツやウィジェットと呼ばれるようなコンテンツと同様に、コードを自分のサイトのHTMLに埋め込むだけで、簡単にいろいろな機能を自分のサイトやブログに取り込めるというもの。プラグイン内のデータはすべてFacebookから提供される。自分のサイトという「デパート」の中にFacebookが「出店」するようなものだ。

 今回Facebookが発表したソーシャルプラグインは、その名の通りFacebookのソーシャルな機能を取り込めるプラグイン。これまで米国では、大手ブランドなどがFacebook内にファンページを設け消費者との対話を試みているが、Facebook内にファンページを設けなくても、自社ホームページにFacebookのソーシャルプラグインを埋め込めば、Facebook内と同様に消費者との対話が可能になる。

 プラグインの中のデータはFacebook側から送信されるので、ユーザーがFacebook上で一度ログインしログイン状態を維持しておけば、これらのプラグインを埋め込んでいるサイト上でユーザーのFacebookページから集められたデータが表示される。例えば僕がFacebook上でログインした状態で、アクセスしたサイトがFacebookのレコメンデーションのプラグインを設置していれば、そのサイトで僕の友人たちの間で最もブックマークされたページのリストが表示されるようになっている。

 これまでは「共有(share)」という機能で、自分の関心のあるページを登録できていたが、今後は「Like」というはっきりとした好意を表現できるようになった。またページだけではなく、音楽や動画、場所などにも「Like」ボタンを設置できる。プロフットボールのNFLのサイトでは各選手の写真の横に「Like」ボタンを設置してあるし、音楽サイト「pandora」上では楽曲1つ1つに「Like」ボタンが設置された。「like」ボタンをクリックすると、その情報はFacebookのサーバーに集計される。「Like」したものを公開する設定にしておけば、自分の「Like」したものをすべての人が見ることができるし、非公開に設定しておけば自分の仲のいい友人だけが見ることができるようになる。

 Facebookにログインした状態でNFLのサイトにアクセスすれば、友人の中でだれがどのチームの、どの選手のファンであるかが分かる。フットボールに関しては意外な友達と気が合うことが分かって、話が弾むかもしれない。

 音楽サイトpandoraにアクセスすれば、友人の間でどの楽曲が今人気があるのかが分かるようになる。「彼がLikeをクリックした曲だから聞いてみよう」ということがきっかけとなり楽曲を購入することが増えるだろう。広告を見て購入するのでもなく、情報を検索してから購入するのでもない。よりソーシャルな、別の消費行動の形が増えてくるかもしれない。

 消費行動のプロセスに関する仮説の1つにAISASという理論がある。まず広告などで注意が喚起され(Attention)興味が生まれ(Interest)インターネットで検索し(Search)購買し(Action)ブログなどで情報を共有する(Share)というプロセスに沿って、インターネット時代に消費者は行動するという考え方だ。こうしたAISASのような検索時代の消費行動のパターンとは異なるパターンが、ソーシャルメディアの時代には主流になるのかもしれない。

 それでは1つ1つのプラグインを見ていこう。


・登録ボタン

 登録ボタンを簡単に設置できる。登録ボタンをクリックするだけでFacebookに登録してあるデータでそのまま登録できる。サイトごとにID、パスワードを設定したり、顔写真など自分の情報を入力したりする必要がない。
 しかも登録する前からクッキーでユーザーを認識しているので、登録ボタンの下にこのサイトに既に登録済みの友人の顔写真が表示される。「友人が登録しているのならわたしも」という気持ちがインセンティブとして働いて、サイトへの登録率を向上させる効果があるとみられる。

・コメント欄

 Facebookと連携するコメント欄を設置できる。写真データはFacebookのサーバーから自動的に送られてくるので、いちいちアップする必要がないし、ハンドル名の部分をクリックすればFacebookのプロフィールのページにジャンプするので、コメントした人がどんな人なのかが分かるようになっている。このプラグインを利用するサイトのコメント欄で投稿したコメントは、Facebook上の自分のプロフィールのWallにも同時に書き込まれることになる。

 また記事だけではなく、写真、音声、ビデオなど、あらゆるコンテンツにコメント欄を設置できる。

 チェックマークを外せば、Facebookのプロフィールを使わずに「通りすがり」としても投稿できるようだ。

・レコメンデーション

 サイト上のお勧めコンテンツのボックスを設置できる。設置作業は非常に簡単で、自分のサイトのドメインを入力するだけでこのボックスを設置するためのコードが生成され、それをサイトのHTML内に貼り付けるだけだ。

 お勧めコンテンツは、Facebookユーザーが「共有」「Like」しているサイト内コンテンツを、「共有」「Like」数が多い順に並べて表示してくれる。ユーザーがFacebook上でログインしていない場合は、Facebookの全ユーザーの間で最も「共有」されているコンテンツの上位リストを表示する。ログインしている場合は、そのユーザーの友達の間で最も「共有」されているコンテンツの上位リストを表示するようになっている。

 このTechWave上では、「はてなブックマーク」の人気コンテンツのボックスを右下に設置しているが、それと同じようなもの。ただFacebookのレコメンデーションのボックスでは、自分の友人の間での人気コンテンツを表示することができる。

・Likeボタン

  LIKEボタンも同様に設置可能。上記の例のように、スポーツ選手や楽曲にもLikeボタンを設置できる。このLikeボタンはいろいろな可能性を含んでおり、今回の発表で最も注目された機能の1つ。「ぐるなび」「食べログ」「30min.」のようなサイトがもしLikeボタンを設定すれば、現在地周辺で自分の友人たちの間で人気のあるレストランが「レコメンデーションボックス」の中に表示されるようになるだろう。

・Activityフィード

 データはすべてFacebookから送られてくるので、自分のサイト上でユーザーがログインしていない状態でも、そのユーザーがFacebook上のログインを維持した状態でアクセスしてくれば、そのユーザーの友人たちがこのサイト上で「共有」したり「Like」したり、コメントしたりしたアクティビティがすべて表示される。

 もしユーザーの友人たちのアクティビティの数が少なければ、Facebookの一般ユーザーのアクティビティが表示される。ボックスの上半分を友人のアクティビティ、下半分を一般ユーザーのアクティビティとすることも可能だ。

・Likeボックス

 ブログなどにTwitterの投稿を表示するブログパーツを埋め込んでいる人がいるが、FacebookのLikeボックスはそんな感じのプラグインだ。Twitterで言うところの「つぶやき」を時系列で表示してくれるようになっている。当然Likeボタンがついている。それをクリックしても友達になるわけではなく、単に好意の表現でしかない。「つぶやき」がおもしろいので評価されたということだ。

・Facepile

サイトに登録済みの友人のリスト。Facebookのプロフィールに使われている写真が表示される。何枚写真を表示するかは、サイト側で設定可能。

・Live Stream

ustreamなどの生の動画ストリーミングの窓をブログに貼り付けた際に、その横に貼り付けることのできるテキストのストリーミングのボックス。ustreamのサイト上で行われているようなライブの中継とTwitterのテキストによるストリーミングを、自分のサイトやブログに貼り付けることができるようになるわけだ。ニコニコ動画やustreamのコミュニティを自分のサイト上に持ってくることができるようなものだ。

 ビデオストリーミングを見ているユーザー全員の書き込みを見ることも、友達だけの書き込みを見ることも、タブの切り替え一つでできるようになっている。

 以上がFacebookのソーシャルプラグインだが、こうして見ると「はてなブックマーク」やTwitterのブログパーツのように既に存在しているサービスがほとんど。大きな違いは、一般公開情報と友人間のクローズドな情報を切り分けられるということと、世界中で4億人が利用するサービスである、ということだ。

 この絶対的な数の優位性から、Facebookが少なくとも米国でソーシャルメディア時代のウェブのインフラ企業になる可能性が高い。しかし問題は日本である。日本でもFacebookの日本法人が力をつけてくるのか。それとも先進ユーザーの間でかなり普及したTwitterがインフラになるのか。Mixi、Gree、モバゲータウン、amebaといった日本勢ががんばるのか。このことに関しては別の機会に記事にしてみたい。

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