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英紙Financial Timesは、GoogleがIntel、ソニーと共同開発中のテレビのプラットフォーム「スマートTV」を19日から米サンフランシスコで開催される開発者向けイベントで発表すると報じた。テレビとインターネットの融合は、大きな可能性を秘める領域。Googleの競合であるAppleもセット・トップ・ボックス「Apple TV」で挑戦し続けている。しかしテレビ局などの既得権者を説得するのは容易なことではなく、たとえGoogle、Intel、ソニーといった大手3社の協業であっても、テレビの領域で一朝一夕に変革を起こせないだろう。
3社がテレビの新しいプラットフォームを開発中であることは、3月にNew York Timesなどが報じている。今回のFT紙の報道で新しく分かったのは、発表が19日にも行われる可能性があること、プラットフォームの名称が「Google TV」ではなく「スマートTV」になるかもしれない、という2点だけ。
「スマートTV」がどのような機能を搭載するのかは明らかになっていないが、テレビのほかにネットにアクセスできる、各種アプリが搭載される、というような形になるのではないかとみられている。特に各種アプリを充実させたいという思いから、サードパーティーの開発者のためのイベントでGoogle I/Oで発表するのだろう。
各種アプリが搭載可能なプラットフォームとしては、iPhoneのコンセプトが既に消費者に受け入れられている。Googleが基本ソフトを開発したAndroidケータイも、消費者の受け入れが実証されたiPhoneのコンセプトを踏襲している。「スマートTV」もGoogleの基本ソフトAndroidを搭載することから、「スマートTV」はiPhoneの画面を大きくしたようなテレビ、というようなイメージになるのかもしれない。
テレビは長年、家庭内の情報ハブの役割を果たしてきたデバイス。パソコン、スマートフォン、iPadのようなタブレットなどのデジタルメディア消費デバイスの輪の中にテレビが入れば、家庭におけるデジタルライフスタイルが完結する。パソコンとスマートフォンの間でコンテンツを自由にやり取りしたり、連携プレーをしたり、という使い方の輪の中に、テレビも入るわけだ。ビジネス的にも大きな市場になることは間違いない。そこでAppleはこれまでApple TVでテレビ消費の形に変革を起こそうとしてきたのだが、Apple TV自体、まだそれほど普及していない。
その理由は簡単だ。ハードの技術革新をどれだけ進めても、そのハードの上でコンテンツを自由に扱えないのであれば「ハードはただの箱」になってしまうからである。そしてこのコンテンツが、AppleやGoogleといったIT企業の自由にならない。IT企業に主導権を握られないように、テレビ局などのコンテンツ保持者が、しっかりとコンテンツにしがみついているからだ。事実、Appleは昨年秋に、1月10ドルの定額でテレビ番組をネット上で好きなときに視聴できるというサービスを始めようとテレビ局を説得して回ったが、結局テレビ局の同意を得ることができなかったといわれている。
メディア業界の中で新しい時代に飛び込んだのは、音楽業界だけだ。音楽業界は「違法コピーの急速拡大」という火の手が背中にまで迫ったので、清水の舞台から飛び降りた。消費者は携帯電話やポータブル音楽プレーヤーで自由に音楽を楽しめるようになったが、一方でレコード店などの流通網は大打撃を受けた。
音楽業界で起こった急速な変化を目の当たりにした他のメディア業界は、コンテンツを人質にして、できるだけ自分たちが主導権を持ったまま自分たちのペースで時代の変革期を進もうとしている。それはテレビ業界もそうだし、新聞、出版業界もそうだ。(関連記事:Googleが電子書籍の最大の品ぞろえを確保できた理由、市場独占できない理由、日本が2年以内に電子書籍元年を迎えることはない)
そうした状況だからこそ、Googleの「スマートTV」も前途多難と思うわけである。