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大量のプロの表現者が食べていける時代は、終わってもいいんじゃないか【湯川】

 いやもちろん僕自身、物書きとして生きていきたいと思っている。だから個人的には好きな表現の仕事をして生きていける時代が今後も続いてほしい。しかし社会の流れとしては、作家やミュージシャン、カメラマン、ジャーナリストなどといったプロの表現者の仕事は、今後もますます少なくなるように感じる。でもその一方でアマチュアの人たちの表現が爆発的に増える。社会の総和で見た場合、文化の多様性や知見の高まりはますます加速されるいい方向に進んでいるのではないかと思う。


 ustreamでの池田信夫さんのお話は非常に面白かった。表現者が食べていける新しい社会的な仕組みを作ることは大事だという意見には賛成だ。過渡期には可能だと思うし、ぜひそうした仕組みができてほしい。でも20世紀のように大量のプロ表現者が食べれる時代には、どんなことをしてももう戻れないんじゃないだろうか。

 それに大量のプロ表現者が食べれる時代は終わっても、セミプロの表現者たちが、好きな表現を続けながら自分自身で食べていく工夫を続けるのだと思う。

 僕自身も日々工夫を続けている。ブログ自体は非常に楽しいのだけど、なかなか黒字化しない。そこでブログ以外でもセミナーや講演、電子書籍プロジェクト、ustreamプロジェクト、英語プロジェクトなどといろいろ仕掛けている最中だ。自分の好きな表現活動を核にし、その周辺でお金をもらえるようなプロジェクトをいろいろ模索しているわけだ。

 それはオカッパ本田くんだって同じこと。彼はもともと前衛的なカメラマン。でも自動販売機の写真ばかり撮っていて生活できるわけもない(笑)。TechWaveでは各種事業開発を手がけてくれていて、最近ではスーツを着ることも多い。僕にとっても彼にとっても意外なことなんだけど、最近は考え方まですっかりビジネスマンになってきた。

 表現一本で生活していくことは諦めた。でも表現に関係する仕事をしていたい。そんなに儲からなくてもいい。生活できるレベルでいいから。ネットの周辺に表現のツールが増えたことで、そう思う人が増えているんじゃないでろうか。

 マスキン増田さんだってそうだ。先週の金曜日のustreamイベント「Change!」で朝から晩までぶっ通しで仕事をしたけれど一銭の得にもなっていない。「お仕事ください」というTシャツを着ながら、まったくお金にならないイベントをへとへとになりながらやり遂げた。それはユカリン三橋さんを含めTechWaveのスタッフ全員そうだし、参加してくれた人たちもそうだ。プレゼンバトルには多くのスタートアップが参加してくれたが、優勝しても賞品も賞状も出なかった。

 みんな表現が好きなんだ。表現のプロの時代が終わっても、ネット、ブログ、Twitter、ustreamを使って自分自身を表現しようとする人たちは後を絶たない。文化の多様性が損なわれるどころか、ますます多様になっているんだ。

 無料の情報は質が悪い、価値がない、とよく言われるが、そう思う人はustreamのアーカイブが残っているのでご覧いただきたい。池田信夫さんや林信行さんを始め、出演されたみなさんのお話は非常におもしろいし、詩の朗読や松浦俊夫さんのDJをぜひ聞いていただきたいと思う。

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