サイトアイコン TechWave(テックウェーブ)

Facebookは日本でも普及するか【ループス斉藤徹】

株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役
斉藤 徹

最近、最もよくいただくのが「Facebookは日本にも普及するのだろうか?」との質問。一方、一部先進ユーザーの間で、日本でもFacebookが活性化しはじめたと話題になっている。

日本は世界でもまれなFacebook未浸透国(中国、韓国、ロシア、ブラジルとともに)だが、ほとんどの主要国ではすでにローカルSNSがFacebookに逆転され、縮小を余儀なくされている。

FacebookがローカルSNSを逆転する時 (8/2) 

日本ではどうなるのか。普及率で世界トップクラスのTwitter大国となっている日本だが、Facebookも同様に急加速するのだろうか?当記事では、Twitter普及のステップとも比較しながら、その可能性を検討してみたい。


1. Facebookのアクティプユーザー数および会員属性の把握

■ 調査機関からの月次アクティブユーザー数 (携帯訪問者含まず)
Facebookの月次アクティブユーザー数は、2010年7月ニールセン最新調査*1(家庭および職場のPCからのアクセス)では171.9万人。ただしこの数字には非会員の公開ページ(ファンページやプロフィールなど)訪問も含まれている。ちなみに2010年7月のmixiは993.0万人Twitterは949.6万人となっている。

*1 … Source: Nielsen Online : 家庭及び職場のPCからのアクセス 2010年7月度データ

■ Facebookが公開している広告対象会員数とその属性
Facebookはセルフ広告、Facebook Adsのために地域別の広告対象会員数を公開している。これを元に統計情報を集計しているFacebakes.comによると、現在の日本における広告対象会員数(月次ベースで1回以上訪問した会員数)は約135万人、 全人口に対する浸透率1.06%、ネットユーザーに対する浸透率1.41%となっており、これは各種発表値の中で最も保守的なものだ。参考まで、 Facebook発表の5億人とはこの広告対象会員数ベースであり、例えば米国では1.33億人(人口普及率43.68%、ネット人口普及率 58.32%)まで達している。


【Facebakers、日本の広告対象会員数推移 2010年8月31日】

参考まで、Facebakersでは性年令分布も発表されている。

【Facebakers、日本会員の性年齢属性 2010年8月31日】

日本におけるTwitterユーザーは比較的高 年齢層が多く、かつ男性が6割程度と優位なのに対して、Facebookユーザーは18-34才までが65%を占め、しかも女性が52%と優位になってい る点が興味深い。単純に性年齢で比較すると、国内Facebookユーザーはmixiユーザーに近い典型的なソーシャルネットワーキング分布となっている ことがわかる。ちなみにこの統計はFacebook発表値のため、推定ではなく実数値である。
 
 
2. Twitterの成長ステップとユーザー層の分析

今後の日本におけるFacebook普及曲線を検討するために、Twitterの浸透ステップを分析しておきたい。下記表は前述ニールセン2010年4月におけるユニークビジター月別推移だ。

筆者はTwitterの浸透は次のような3ステップであったと考えている。

a. イノベータ内での普及 ( – 2009年7月)
イ ノベータ(対ネット人口比3%程度、日本では180万人ライン)を中心とした先進ユーザーが、米国でのTwitter熱に感化され、活用をはじめる。特に Twitterはブログと相性が良いため、アルファブロガーが先導するカタチで独特のクラスターが形成された。国内普及の第一歩だ。

b. 著名人や書籍効果で、アーリーアダプターが活用開始 (2009年8月 – 2010年4月)
勝間和代氏がTwitterを開始したのは2009年7月中旬。その後、著名人が次々とツイッターをはじめ、アーリーアダプター(対ネット人口比16%程度、日本では1000万人ライン)への浸透がはじまった。さらに2009年10月発売の書籍「ツイッター140文字が世界を変える」が大ヒット、Twitter本ラッシュや週刊ダイヤモンド特集など、紙メディアによるリードがはじまった。そしてソフトバンク孫社長が2009年12月に開始、社内2万人導入やソフトバンク携帯をTwitter対応にするなど、その普及に大いなる貢献となった。

c. マジョリティへの浸透がはじまる (2010年5月 – )
生 活者への浸透と比例して、企業のツイッター活用が本格化してきた。当社調査では国内企業アカウントのうち今年5月以降開始されたものが約50%と、ここ 3ヶ月ほどで企業利用が急増している。Twitter認知率は8割を超え、一般ユーザーへの浸透もはじまった。ただし最新Nielsen調査によると Twitterユーザー数は949.6万人と4月から停滞しており、キャズム超え(マジョリティへの本格浸透)は容易でない様が見受けられる。

3. FacebookはTipping Pointを超え、アーリーアダプターの活用がはじまった

以上のTwitter普及ステップを踏まえた上で、Facebookの国内普及の可能性を検討してみたい。

現 在のFacebook利用者数は、ニールセン調査で比較するとちょうどTwitterでイノベータからアーリーアダプターに切り替わる直前、2009年7 月の数値とほほ同等だ。ただしTwitterの場合はアルファブロガーを中心とした純粋なイノベータ層が盛り上げたが、Facebookの場合やや状況を 異にしている。在日欧米人や留学帰国者、外資系社員など海外友人の多い層(以下、海外関係者と略)がまずベースにあり、その上にイノベータやその海外関係 者の友人がのるカタチになっているのだ。

そもそも国内においても2009年5月以前はTwitterよりFacebookユーザーが多 かった。これはFacebook固定ユーザーの存在をあらわしており、その多くが海外関係者だろう。数にすると約50万人程度ではないだろうか。そして Facebookユーザー数(広告対象会員数)は5月前後に100万人を超えている。その近辺でTipping Pointを超えている可能性が高い。

Tipping Pointに関しての参考情報 (TechWave記事)    
Facebook 創業者ザッカーバーグ氏によると、会員のデータを見ているとどの段階でTipping Pointを迎えるのかが分かるという。Tipping Pointというのは、天秤が傾くポイントということ。勝負の分かれ目ということだろう。そのポイントというのが、「ローカルと外国人」の友人関係の数を「ローカルとローカル」の友人関係の数が抜くとき。どの国でもまず、外国人の友人がいる人が Facebookを使い始め、やがて自国の友人も招待し始める。そして自国の友人関係の数が、外国人との友人関係の数を上回ると、あとはその国でFacebookが一気に広がるのだという。

参考まで、Facebook関係筋やメディア、ユーザー等からヒアリングでも、日本においても最近 Tipping Pointを迎えた可能性が高く、6月に入って友人申請の数が増加したという回答が多く寄せられた。当社社員アンケートでも、うち約半数は6月からの友人 申請急増を実感している。

また in the looopファンページにおけるアンケート(当ブログの読者層はイノベータ、アーリーアダプター層が圧倒的に多く、Twitterは当然のこと、Facebookも最近はじめたという方が多い)では、次のような回答を得た。

■ TwitterとFacebook、どちらに多くの時間を費やしていますか? (アンケートURL)
Twitter: 27票 (63%) Facebook 16票(37%)

■ TwitterとFacebook、3年後に日本でどちらが普及していると思いますか? (アンケートURL)
Twitter: 10票(37%) Facebook 17票(63%)

こ の結果を見ると、現在はTwitter主流だが、Facebookを利用するにつれ、その可能性に惹かれ、将来的には逆転するのではと感じている利用者が 多いということがわかる。そして私自身、最近は同様の感覚を持ちはじめた。Twitterのシンプル構造と対照的で、Facebookは実に奥深い。その アプリ数は無限に近く、一日数千個のアプリが新規登録されている。つまりそのスピードで機能追加され、日々進化しているプラットフォームであり、深く知る ほどチャーミングさが増してくる側面がある。

アーリーアダプターは、概してオピニオンリーダーであることが多く、その反応はその後のサー ビス普及に大きな影響を及ぼすことが知られている。実際にTwitterがこれほど普及したひとつの要因は、日本のアーリーアダプターがTwitterを ポジティブに受け止め、クチコミしたからだ。そして彼らのFacebookへの反応も同様にポジティブであり、Twitterレベルの加速をする可能性す ら秘めているように感じている。
 
 
■ Facebook、国内普及のキーは何か?

今後、Facebookが普及するか否かは、Twitterのようなポジティブ・スパイラルが発生するかどうかによるところが多いだろう。

・著名人の活用、書籍など紙メディアによるリードがあるか
日 本では、その潜在的パワーに反してFacebookの知名度か低く、Twitterと大きな差がついている。この点でリードするのは、やはり著名人活用と 紙メディアだろう。最近はFacebook系書籍が進行している話をちらほら耳にするが、Twitter同様に書籍ラッシュが起きるか、ビジネス雑誌が取 り上げるか、これらが大切なポイントと言えよう。

・多機能携帯での利用が広まるか
東南アジ ア、インドなどにおけるFacebook普及には携帯キャリアとの連携が大いにプラスとなっている。Facebook携帯ユーザーは5億人のうち1.5億 人(30%)。60カ国、200超キャリアが携帯からのFacebookアクセスに対応している。日本においても国内携帯キャリアがFacebook対応 をはじめれば、Facebook普及のはずみとなるだろう。

・ビジネスでの活用がすすむか
最 近、日本企業でもFacebook活用を検討したいとのお問い合わせ、案件が増え始めた。当社へのセミナー依頼を見ても、すでにTwitterは一段落し ており、Facebookに関するものが増加している。Twitterの場合は利用者主導の普及だったが、Facebookの場合は利用者、企業がシンク ロして増加する可能性を感じている。特にFacebookの場合、プロモーションだけでなくコマース連動の効果も高い点が注目される。

そして注目は来年1月に日本でも公開予定のFacebook映画「The Social Network」だ。それにあわせた形でのマスメディア・キャンペーン、Facebook書籍ラッシュなどが起きる可能性は高いのではないだろうか。

現 在の国内Facebook会員増加ペースは半年で1.5倍、年間2.25倍程度だ。仮にこのペースが続くと、広告対象会員数で2010年末に200万人、 2011年末に450万人程度となる。このペースだとmixiおよびTwitterの大きな脅威とはならないだろうが、上記3点がスムーズにすすむと Twitterのように一気に普及する可能性が出てくるだろう。

一方、国内SNSの雄、mixiは新プラットフォーム発表をまじかに控 え、オープングラフなどFacebook対抗を打ち出してくるはずだ。当社アンケート調査によると、Twitterアカウントを持っている企業のうち、と もに活用したいソーシャルメディアとして、mixiは21%、Facebookは15%と、普及率と比較して企業のmixiに対する目は冷ややかだ。この 課題、企業のマーケティング活用がすすめば、ビジネスパーソンへの普及にも貢献し、mixi再成長のきっかけになる可能性が出てくるだろう。

Facebook成長が映画などで急加速するか、mixiのオープングラフが一気に普及するか、タイムレースの様相を呈しているが、いずれにせよ、来年の初旬に大きなヤマがくるのではないだろうか。
 
 

記事裏話やイベント、講演スライドDL、バイラルムービー集など、Facebookファンページは こちら
 
 

【Facebook関連】
AmazonがFacebookと連動,ソーシャル・リコメンデシーションを開始 (7/28) 
Facebook最新統計。MAU5億人,オープングラフ連係100万サイト (7/24) 
米国でのFacebook浸透率はついに70%、全国民参加メディアへ驀進中 (7/14) 
FacebookのLikeボタンは毎日30億回プッシュされている! (7/8) 
世界のSNSマップ最新版。Facebookが131ヵ国中111ヶ国でトップ (6/15) 
Facebook2010年売上予測は1300億円,うちCredit効果は315億円か (6/3) 

【何だろうシリーズ】
「ソーシャルゲーム」はどうして儲かるんだろう? (7/20) 
「ソーシャルコマース」ってなんだろう? (7/12) 
「ソーシャルグラフ」ってなんだろう? (6/21) 


著者プロフィール:斉藤 徹 (さいとう とおる)
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役
2005年が創業。国内での企業向けSNS構築分野でトップシェアです。
(ミック経済研究所,アイティーアール社 2008年調査にて)
現在は,企業コミュニティを単体で捉えるのではなく,多様なソーシャルメディアと有機的に結びつけ「クチコミ動線」を設計・構築・運用するコンサルティング・ファームとしての色合いを強めています。

書籍・コラム・ブログは個人活動ですが,ビジョンとノウハウは,ループス社員一同で共有しています。創業テーマである Socialmedia Dynamics を見つめながら,ソーシャルメディアやクラウドソーシングの分野で高い専門性を磨き続けたいと日々励んでいます。(といっても全く堅い人間ではないです。 特に夜は柔らか過ぎと定評です)

Twitterアカウント toru_saito
斉藤Facebook,友人申請はお気軽にどうぞ。 http://facebook.com/toru.saito
Facebookファンページ In the looop はこちら http://facebook.com/inthelooop
ご意見やご質問その他,お気軽にコンタクトください。

蛇足:オレはこう思う

このテーマは興味があるので、TechWaveでもアンケートを取りたいと思います。ご協力お願いします。

モバイルバージョンを終了