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「ソーシャルメディアって騒いでいる人がいるけど、リーチで見れば全然すごくないじゃないか」ー。マスメディア関係者やマス広告の関係者からよく耳にする話だ。視聴率1%といえばまったくさえない番組になるが、それでも100万人以上にはリーチできていることになる。一方で大人気と騒がれる企業のFacebookページであっても、ファンは数万人程度。マスメディア関係者にとっては、どうでもいいような数字だ。
「ソーシャルの本来の力を、瞬間風速的に測るべきではない。時間をかけてゆっくりと広がっていくというのがソーシャルメディアの力なんだから」と、ソーシャルメディアマーケティングに携わっている人たちは口を揃える。彼らは経験則としてそれが事実であることは分かっているのだろう。しかしそのメッセージが、マスメディア的な考え方に慣れた人たちにはなかなか理解してもらえないというのが現状ではないだろうか。
その「ソーシャルの本来の力」を示すようなグラフを見つけたので紹介したい。
ミクシィの直近の決算説明資料の中にあったのが以下のグラフだ。
カジュアルゲームとソーシャル性の強いアプリの課金トレンドを比較したものだ。カジュアルゲームとは基本的に一人でプレーして楽しめるように設計されたゲームだ。例えばシューティングゲームのようなもの。得点を上げるという明確な目標があり、友人と得点数を競い合うことも可能だが、一人でプレーしても十分楽しいものになっている。
一方でソーシャル性の高いゲームは、一人でプレーしていても何も楽しくないゲームが多い。農園ゲームなどはその典型例だろう。土地を耕して、タネをまき、収穫する。その繰り返し。一人でやっていてもまったく楽しくないのだが、実際の友人がタネや肥料をくれたりする。そうした言葉にならないコミュニケーションが心を暖かくしてくれる。コミュニケーションが楽しいゲームである。
こうした2種類のゲーム、アプリを比較した場合、カジュアルゲームは最初からいきなり課金収入が高いのだが、しばらくすると飽きられるのか、収入が低下する。一方でソーシャル性の強いアプリは、じわじわと売り上げを伸ばし、長期的に見るとカジュアルゲームよりも収益性が高いことが分かる。
決算資料なのでアイテム課金のグラフが使われているが、ミクシィ関係者によると、実際に継続してプレーされているかどうかというアクティブ率を比較しても、カジュアルゲームはサービス開始後6ヶ月のアクティブ率の平均が24%であるのに対し、ソーシャル性の高いアプリの6ヶ月後のアクティブ率は55%にも達しているという。半年たっても一度プレーした人の過半数がプレーを続けているわけだ。企業ブランドでソーシャル性の高いアプリを作れば、当初は一気にブレークしなくても長期的には愛着を持ってプレーされ続ける可能性が高い。ブランディングという意味において、マスメディア以上にソーシャルメディアは非常に有効なのではないだろうか。特にリアルな友人で構成されているソーシャルメディアは、今後大きな可能性を秘めているのではないかと思う。
ミクシィではこうしたデータの収集、分析を続けているようで、リアルなソーシャルグラフ(仲のいい友人のオンライン上のつながり)がどのようにマーケティングに役立つのか、影響力を測定する指標が作れないのか、などいろいろと実験しているようだ。先日紹介したコミュニケーション投稿数という指標などもその一例だが、もっと細かに工夫された指標の研究も行っているようだ。
それをマーケター向けの大規模イベントで発表する計画らしい。当初、同イベントを年明けにも開催するという話だったのだが、どうやら開催は5月ごろに延期されたようだ。より完璧な指標や事例を揃えてからの発表にしたいのだろう。
このイベントを機に日本でもリアルなソーシャルグラフを利用したマーケティングが一気に広がるのではないだろうか。そうなればネットのオールドタイマーから猛反発を受けた大学生、水谷翔さんの「リアルとバーチャルは区別すべき」という主張を理解する人が増えることになると思う。(関連記事:蔓延する誤った「ソーシャルメディア」の定義【水谷翔】 : TechWave)