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新規起業以外にシリコンバレーでの可能性はないのか?【本間毅】via @maskin


[読了時間:2分]

蛇足:僕はこう思ったッス @maskin
この夏、長期休暇の期間を利用してシリコンバレーに訪れる日本人が極端に増加したようだ。シリコンバレーはとても広大な場所、いろいろなチャンスがある場所だと思うのだけど、猫も杓子もITスタートアップ狙いなのだという。日本人起業家とシリコンバレーの関係構築におけるベストプラクティスはないのだろうか? そこで数年前から北米で勤務する傍ら、日本人スタートアップを支援する活動などをされている本間毅さんにご登場頂いた。彼は会社の立ち上げから大企業内プロジェクトまで多数のスタートアップに自ら関与されており。日本人のシリコンバレー進出について具体的かつ的確な指摘をしている。

本間毅
@thonma

 今月もたくさんの人が日本からシリコンバレーを訪れるようだ。その多くの人は、シリコンバレーでの起業を志しておられるようだが、私は必ずしもそればかりではないと考えている。その人の現在置かれている環境、持っているキャラクター、得意不得意などなど考えると、新規起業以外の可能性にも目を向ける価値があると思う。そうでなければ、既に起業している方や、自分でアイディアを持たない人にはチャンスが極端に少なくなってしまうので、面白くない。

 個人的な考察だが、日本の起業家とシリコンバレーを関係付けるビジネスのスタイルには、大まかに言って3つのパターンがあるように思う。

 残念ながらバリエーションは多くはないのだけど、何かの参考になればと思い、日本人起業家とシリコンバレーをつなぐ3つのパターンをまとめてみた。

1. アメリカで新規起業する (→ 一応、比較するうえでまとめてみた)

 日本で既に起業していて、ましてや日本の投資家から投資を受けていたりすると、色々な意味でアメリカに事業の軸足を移して、アメリカのスタートアップとしてやっていくことは難しいが、まだ何も起業していない状態であれば、実は直接アメリカに来て起業するのが一番シンプルだったりする。もちろん、資金調達の課題、ビザの問題など日本で起業するのに比べればはるかに面倒なことが多いが、思い切って来てしまうという選択肢は悪くない。

 但し、改めて言えば、アメリカ市場でビジネスをやる必然性がなければ、自己実現のためにだけアメリカで起業しようとするのはやめておいたほうがよい。それだと色々な人を説得したり、障壁を乗り越えるのが余りに大変だと思う。それでもどうしてもという人は、最低限、アメリカ市場でやっていけるアイディアをきちんと描いてから起業に踏み切ることをオススメする。(来てから考えるでも良いが、全く何もないのはよろしくないので)

この件は色々と書いたので、この辺で。

2. 日本のスタートアップのビジネスをアメリカで展開する

 日本にはGreeやmixi、DeNA、サイバーエージェントのような上場して資金力もあり、勢いのある成功済みのベンチャーもあり、彼らは自力でシリコンバレー進出を果たしている。既にM&Aを活用しアメリカ市場に基盤を築きつつあったり、日本のコアの経営陣が自らシリコンバレーに常駐してコミットしているところもある。

 一方、設立からしばらく経って、事業も順調に廻り始めているが、上場までには至らない素晴らしいベンチャー企業がたくさんあることも忘れてはならない。既に黒字化しているところはたくさんあるし、グローバルに通用するサービスやビジネスの可能性を秘めているところもあるだろう。

 但し、往々にして、既存株主や社員からは「まずは日本の足場を固めてから」とか「海外進出にはリスクが高すぎる」という意見が出てきて、結局は海外はもっと会社が大きくなってから、という話になってしまうらしい。しかし、本当に海外市場で通用するビジネスやサービスなのであれば、海外での競合が育ってくる前に早い段階で足がかりを作り、きちんと育てていかなければ、チャンスを逃すこともあり得る。

 そこで、日本市場で一定の完成度があり、アメリカで通用する市場性を持っている日本のスタートアップのビジネスを、独立した日本人起業家がアメリカで経営するというスタイルが考えられる。日本からなけなしの貴重な人材をアメリカに送り込むのではなく、事業意欲が旺盛でやる気もあるが、自らのアイディアにこだわらず、事業を成長させていきたいと考えている人と契約を結んで、ビジネスの展開権をライセンスするのである。

 一番難しいのは、必要な資金の手当と、経営できる人材のマッチングということになるが、日本市場依存を脱却したい日本のベンチャーキャピタルがいれば、彼らがサポートに回るのも面白いのではないかと思う。

 売上や利益の配分、将来の株式買取オプションなど事前に決めておくことはいくつかあるが、このパターンであれば、日本側の企業、アメリカで経営する起業家、アレンジするVC、すべてにメリットがあるはずだ。

3. アメリカのスタートアップを、日本の起業家が日本で展開する

 設立当初から日本市場を視野に入れているアメリカのスタートアップは極めて少ない。しかし、ある時、英語版しかないのに日本からのアクセスやユーザー登録が急激に増え、日本市場を初めて真剣に考え始めるアメリカのスタートアプは相当数に登るはずである。

 それでも彼らは、日本のユーザーのクレジットカード所有率の高さ、サポートコストの低さなどを知るまでもなく、「日本のことがわかる人がいないし、今はアメリカで十分」と放置してしまうケースも少なくないと聞く。これはあまりにもったいない。

 また仮に、本気で日本市場に取り組む気になったとして、最もオーソドックスな展開方法は、バイリンガルでMBAを持っている日本人サラリーマンをヘッドハントして、日本法人の代表に据えることである。これも悪くはないが、英語ができることと経営者として新規市場を開拓することは別なスキルだということが無視されがちだ。

 そこで日本の起業家予備軍あるいは起業家経験者が、アメリカで開発されたサービスやビジネスを日本で展開することを考えてはどうだろうか。限られた予算と様々な障壁にめげずバイタリティを持って事業展開していけるのは起業家の仕事そのものである。

 シリコンバレーで働くことにはならないが、アメリカの最新のサービスを自らのビジネスと同様に日本で育てることは、エキサイティングな経験になるに違いない。

 問題はどうやってその話を実現するかだが、これはやりたい方からコンタクトするほかないと思う。面白いと思うサービスがあれば、直接アプローチして、自分のアイディアを説明し、売上目標や会員目標などを掲げるのが王道だと思うが、そのスタートアップの投資家・株主サイドにアプローチして、同じ内容を説明するのも手だと思う。

 ということで、アメリカでの新規起業以外にも、シリコンバレーと関わりを持って事業を経営する面白いチャンスはあるのではないか、という提言でした。

【関連URL】
・イントレプレナーの視点 in California: 新規起業以外にシリコンバレーでの可能性はないのか?
http://takeshi.weblogs.jp/blog/2011/09/%E6%96%B0%E8%A6%8F%E8%B5%B7%E6%A5%AD%E4%BB%A5%E5%A4%96%E3%81%AB%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%90%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%81%A7%E3%81%AE%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%8B.html

本間毅 Takeshi Honma

1974年生まれ。中央大学在学中から起業し、1997年にWebインテグレーションを行うイエルネット設立。黎明期のビットバレーやピーアイエム株式会社(後にヤフージャパンに売却)の設立にも関わる。
2002年、イエルネットの全営業権を譲渡し、2003年入社。 ネット系事業戦略部門、リテール系新規事業開発等を経て、2005年よりグループ内のネットメディア開発に 携わる。社外ベンチャー企業との協業により、Web2.0やBlog/SNS系テクノロジの社内導入を推進する。2008年5月よりサンフランシスコ赴任、サンディエゴ在住を経て、現在はサンノゼに勤務。電子書籍の業務に携わる。

連絡先:thonma [at] gmail.com (atはアットマーク)

著者プロフィール:TechWave副編集長・イマジニア 増田(maskin)真樹
 コードも書けるジャーナリスト。イベントオーガナイザー・DJ・作詞家。8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。フリーで関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。“IT業界なら地方で成功すべき”という信念で宇都宮市から子育てしながら全国・世界で活動中。 / ソーシャルアプリ部主宰。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。
メール maskin(at)metamix.com | 書籍情報・詳しいプロフィールはこちら


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