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およそ2週間前にサンフランシスコで開催されたFacebookの開発者イベント「F8」。そのスピーカーのほとんどが来日し「F8 TOKYO」というクローンイベントが10月10日に開催された。冒頭挨拶した日本代表という位置付けであるCountry Growth Managerである児玉太郎氏によると、現在の月間アクティブユーザーは500万人とのこと。調査会社が「1000万人突破」と発表する一方で控え目な数値ではあったが、突如告知されたにも拘わらず当イベントの熱気は並大抵のものではなく、200名程度しか入れない会場に3倍の申し込みがあったというのも頷けた。
最大の注目点は、プロフィールページを拡張する「タイムライン」と新しいアプリ基盤である「オープングラフ」。基調講演を務めたAlexander Kleinberg (アジア太平洋/日本・プラットフォーム共同・主任)氏は「ウェブコミュニケーションは次のディケイド(10年)に来ている。ソーシャルメディアによってサーチからプッシュの時代になったが、そういった経験をウェブに持ち込むことがFacebookの役割」と話す。
では、どのようにウェブを “Facebook化” するのだろう。これまでの「いいね!/Like」ボタン設置などと何が違うのか、日本の企業の適合度はその将来像は? 今回、Alexaner氏と開発者リレーションを担当するDouglas Purdy (ディベロッパー・リレーション・ディレクター)氏に話を伺った。
F8 TOKYO開催の理由
TechWave: 今回、F8スピーカーや世界中の写真を大勢日本に連れてきて「F8 TOKYO」を開催していますね。最大の目的はどういった点になりますか?
Alexander Kleinberg氏(以下Alex): 日本の開発者コミュニティのより近くに来たいということが最も重要なことです。そこで2週間前にサンフランシスコで開催されたF8で発表された変更点を紹介する。今回、Facebookの社員を世界中から数十人集めてきていますが、参加して 頂き多くの社員と交流することで、新しいテクノロジーである「タイムライン」や「オープングラフ」をより深く理解する助けになると思ったのです。
オープングラフの“動詞”について、日本語対応は?
TechWave:北米でのF8の発表を受け、我々の周辺ではタイムラインおよびオープングラフの評価が非常に高い状況です。オープングラフは、これまでFacebookが「いいね/Like」で成長した部分を拡張するもので、「聴く」「作る」「食べる」「走る」などの動詞をプラットフォームに組み込むことで、利用者の周辺にある出来事をソーシャルグラフに取り込むことができるわけですが、日本語の場合、動詞に多様性があったり 「英語:日本語=1:多」の関係になることも考えられます。こういった多言語対応についてはどうお考えですか?
Douglas Purdy氏(以下Doug): 本日のセッションにもあった通り、これまでFacebookのシステムが採用してきたような多言語翻訳システムを用意し、開発者やユーザーの皆さんが英語の表記に対し他の言語に翻訳してもらうということはまず考えています。つまり英語の動詞に対し、1対1で他の言語訳を登録してもらう形です。各言語のチューニングについては、市場ごとの特性をつかんできてから拡張してきたいです。
今回日本にきたのは、そういった国毎の問題に対応するために、開発者の皆さんと協議しどうすれば今後オープングラフを上手く変更していけるということを見定めることも目的なのです。私達にとって非英語の言語、特に日本語をサポートすることはとても重要です。
TechWave: 動詞には何らかの制限があるのでしょうか?
Douglas Purdy氏(以下Doug): 可能な限り多くの動詞をサポートしたいと思う。けれども禁止用語だとか、地域毎の法律に準拠した制限も可能性としてはあります。
TechWave: 例えば「歩く」といった動詞について、ある企業が独占的な存在になるような可能性があるのでしょうか
Alex氏: それはありません。私たちはビルトインアクションという組み合わせを定義しています。例えば「Listen a Song」といったものです。開発者はその組み合わせにアプリを登録してもらうことも、自分で組み合わせを登録することも可能になっています。
開発者は自由に動詞と名刺の組み合わせを作成することができるために、ユーザーがある動詞を使用しようとした際、特定の開発者が作ったアプリが優先的に露出するということはないのです。つまり開発者は多くのアプリを開発可能で、ユーザーは多くの行動をアプリを経由してソーシャル化することが可能になるのです。これまで「いいね」をしていたように「聴く」「読む」「覩る」がソーシャル化促進の鍵になるということです。
日本のFacebookスタートアップは世界で活躍できるのか?
TechWave: 日本人ITスタートアップはやはり国内でFacebookアプリを開発したほうが成功しやすいのでしょうか。
Alex氏: まずはHOME市場(私達においては日本)を活性化して欲しいが、Facebookのユーザーは世界8億人いるわけで、海外でアプリやサービスなどを展開した場合、どれだけインスタントなコネクションによる可能性が広がるかをイメージして頂きたい。
本日もオープングラフのアプリをいくつか紹介したのだけど、そこで紹介したような代表的な「読む」「聞く」「見る」以外にも、どんな動詞も実行できるのがオープングラフ対応アプリの素晴らしい点。ですから、日本の特性を活かしたものを自由に発想して頂きたい。
Doug氏: 開発者を支援する側としては、どんなチャレンジをもサポートしたいしやる意義はあると思う。
TechWave: 日本は開発者が不足しているという意見もあります。優秀な人は大手に破格のフィーで採用されるなど、開発者の獲得競争が激化していると見られます。そんな中でFacebookはどのように関係を構築するのでしょうか。
Doug氏: まさに、私達は開発者リレーションを構築するチームで、大きな会社に所属している開発者でも個人の開発者でも最適なアプリを開発するサポートをしたいと考えています。私達の目的は、ある開発者がウェブページさえ作れればFacebookアプリが開発できる状況に持っていきたいと考えています。
TechWave: つまり、あらゆる企業にFacebookを使ってもらえるようにしていくという考えなのですね。さて、今回の刷新でより敷居が低くなった印象を受けています。そこにはどういった意図があるのでしょうか。
Doug氏: 常にイノベーティブな事柄は、小さなチームから生まれると思っています。Facebookが小さなスタートから成長したように。そういったところを助けるという意味でも、今回のようなより手軽でスケーラビティのある刷新が行われました。開発者コミュニティとしてdeveloper.facebook.comがありますが、まさに小さいチーム向けに編成されたサイトになっています。
もちろん大手にはソーシャルをもっと広げていってもらうという使命がありますし、小チームが成功すればもちろん大手も成功するということで幅広くサポートをしていきたい。サイト以外には今回のF8や開発者の会合イベントなどもやっていく考えで、より多くの人により多くのアプリを開発してもらいたい。
Facebookは最終的にどういう形になっていくのか?
TechWave: タイムライフが人の一生を記録し、オープングラフはあらゆる行動に対応したアプリの枠組みを提供する。Facebookは、人の人生に深くコミットしようとしているように見受けられます。今後、PCやモバイル以外に家電や自動車にも埋め込んでいき、人に近づくような考えを持っているのでしょうか。正直いってイメージできてない部分もあります。
Doug氏: 世界中の人達をつなげるというのが私達のミッションです。デバイスも技術も関係なく、あらゆる方法でそれを実現していきたい。多くの開発者がより多くのアプリを開発し、ユーザーのアクティビティをシェアしたり行動するような世界を見たい。
Alex氏: 「今後どうなるかわからない」ということは実は重要なことです。米国の有名なコンピュータサイエンスの学者アラン・ケイは、「未来を予測するのに最適な方法は、その将来は自分で作ることだ」と言いました。だから、私達はみなさんと一緒にその未来を作っていきたい。
私達の展開で「日本を変える」といったことを考えているわけではありません。むしろソーシャネットワークの力で、日本の独自の文化を世界に出せるような仕組みにしていきたい。今回刷新したFacebookは、すでにあるソーシャルなネットワークのあり方をよりスムースにするものと考えて頂ければ。
日本のSNS競合について
TechWave: 日本国内では競合となるソーシャルネットワークにmixiがシェアを獲得しています。今後の展開でどのような戦略でこの競争を乗り切る考えでしょうか。
Alex: 他の事業者のことを気にしているということはない。世界には沢山のSNSがあるし、私たちが注力しているのはユーザー、開発者、マーケターにとって素晴らしいサービスを開発することです。これはかなりチャレンジングですし、他の事業者がどうしているのかを気にする余地もないのが現状です。ただ、ソーシャルに注力している企業は、ウェブがソーシャルに向っていることを実証しているわけだからどこも歓迎したいし、増えることを望みたい。
TechWave: 最後にTechWaveの読者に向け一言お願いします。
Alex: ウェブはソーシャルエクスペリエンスに向っていると思います。ですから開発者、経営者あらゆる人がそれを前提に展開することでより良い結果が得られるようになるでしょう。Dougと開発チームがPRしたように、オープングラフは数分もあれば対応アプリを作ることも可能なので、是非初めて頂きたい。
【プロフィール】
・Alexander Kleinberg
アジア太平洋/日本・プラットフォーム共同・主任。
グローバル市場における、フェイスブックの利用およびエンゲージメントの向上のため、メディア、開
発企業、ナショナルクライアントとのパートナーシップ確立に責任を持つ。
ブラウン大学卒業後、UCLAとシンガポール国立大学にて経営管理学修士号取得。サンフランシスコ・ジ
ャイアンツのオンライン・マーケティング経営を経験。その後グーグルに入社、アジア太平洋の商業拡
大に大きく貢献し、シンガポールでAPAC本社を設立し、東南アジアにてビジネス開発の監修を務めた。
・Douglas Purdy
デベロッパー・リレーション・ディレクターとして、フェイスブックのプラットフォームに対する社
内、および拡大するデベロッパーコミュニティーからのニーズを反映させるための活動に従事してい
る。フェイスブックに入社する以前は、マイクロソフト社で11年間エンジニアリング・リーダーシップ
や開発啓蒙を担当した。
近年では、“オペレーション・デベロッパー・ラブ” (http://developers.facebook.com/blog/post/417)とい
うコミュニティを立ち上げた。これは、バグに対応する事はもちろん、開発者の意見を反映し、プラ
ットフォームの改良を行いながら開発者へのサポートを手厚くする事を目的としている。デベロッパ
ーのアドバイスをできるだけ取り入れながら、プラットフォームをよりシンプルで分かりやすいものに
していくという試みである。
【関連URL】
・Mobile – Facebook Developers
http://developers.facebook.com/docs/guides/mobile/
(お詫び)
Alexander Kleinberg氏の名前および肩書が間違っていました。大変失礼いたしました。
8才でプログラマ、12才で起業。18才でライター。日米のIT/ネットをあれこれ見つつ、生み伝えることを生業として今ここに。1990年代は週刊アスキーなど多数のIT関連媒体で雑誌ライターとして疾走後、シリコンバレーでベンチャー起業に参画。帰国後、ネットエイジで複数のスタートアップに関与。フリーで関心空間、富裕層SNSのnileport、@cosme、ニフティやソニーなどのブログ&SNS国内展開に広く関与。坂本龍一氏などが参加するプロジェクトのブログ立ち上げなどを主導。“IT業界なら地方で成功すべき”という信念で宇都宮市から子育てしながら全国・世界で活動中。emacs使い。イベントオーガナイザー・DJ・作詞家。 / ソーシャルアプリ部主宰。大手携帯キャリア公式ニュースポータルサイト編集デスク。